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食品小売業29社の業績を20の指標、5か年経年で徹底分析!

インデックス2021大

2020年初頭から感染が拡大した新型コロナウイルスによる特需で、食品小売業、とくに食品スーパー(SM)の20年度は軒並み好決算だった。しかし、その反動から21年度では減収減益を見込む企業も少なくなく、一過性の特需に頼れる時期も終わりを迎えつつある。本特集では、SM、総合スーパー(GMS)、ディスカウントストア(DS)計29社の経営指標を5期分掲載。経年で各社の指標を読み解くことで、コロナ後も生き残る企業が見えてくる!

注:各社決算資料、アンケート調査、本誌2017~2021年7月1日号決算特集より作成。営業収益について、決算短信1ページ目に売上高が記載されている企業は、その他営業収入がある場合は売上高とその他営業収入の合計を、ない場合は売上高をそのまま営業収益として掲載した。2020年度では、一部企業は「収益認識に関する会計基準」等を適用している。そのため、前事業年度との業績比較を記載していないなどの場合があるが、原則として各社決算資料の表記に準じている。なお、同基準を適用している企業でも、一部指標は適用前の数値を開示している場合がある。各社の時価総額は2021年6月4日終値から算出。部門別売上高構成比の項目名、区分は基本的に各社に準ずる。各指標の増減は小数点第2位以下も含めて算出しているため、掲載数値とのズレが生じている場合がある。GMS編でのコングロマリット企業は基本的に単体事業会社を掲載したが、公表数値が十分ではないイオンリテールはイオンの数値を掲載した

コロナ禍でSM各社好調の1年

 コロナ禍はSMに大きなプラスの影響を与えた。政府からの外出制限の要請や在宅勤務の奨励などにより、まとめ買い需要や巣ごもり需要が増大し、食品や日用品などの生活必需品を取り扱うSMへの需要が急激に拡大。自宅で過ごす時間が増え、調理ニーズが高まり生鮮食品の売上が伸長したほか、外食が制限されるなかで「家飲み」用の酒類やプチ贅沢のニーズを満たす高単価の商品などの需要も伸長した。

 スーパーマーケット3団体の販売統計調査(図表❶)によると、2020年の年間既存店売上高は対前年比105.0%で、部門別でみても生鮮食品を中心に大きく伸長しており、「その他」を除くすべての部門が前年実績をクリアした。日持ちがしないことからまとめ買いに適しておらず、衛生上の懸念からも上期は売上が落ち込んでいた「惣菜」も、下期には売上が徐々に回復傾向となり、年間では前年並みの実績に落ち着いた。

図表❶2020年スーパーマーケット部門別売上高対前年比(既存店ベース)

出所:スーパーマーケット3団体
「スーパーマーケット販売統計調査2020年年間実績(パネル270)確報版」

 このような状況下、20年度のSM企業の業績は概ね好調に推移した。本特集掲載のSM16社すべてが増収増益を果たしており、コロナ禍によるSMへの需要増の効果の大きさが窺える。折り込みチラシの自粛などにより販管費が抑制されたことで営業利益の増加幅も大きく、なかにはユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(東京都/藤田元宏社長)やマックスバリュ西日本(広島県/平尾健一社長)など、3ケタの伸長を記録する企業もあった。既存店売上高もすべての企業が伸長しており(図表❷)、各社絶好調の1年だったといえるだろう。

図表❷本特集掲載SM企業16社 20年度既存店売上高対前期比ランキング

単体ベース *:連結
※いなげやは「スーパーマーケット事業」(いなげや・三浦屋)の数値

 DSとGMSはどうか?DSもコロナ禍で業績を伸ばしている業態の1つだ。今回掲載したDS企業のなかには、決算期の関係上コロナ禍の影響がフルで表れていない企業も含まれるため一概には言えないが、今後の景気の不透明感から消費者の価格志向はますます高まることが予想され、低価格を武器とするDSの存在感はよりいっそう高まることが見込まれる。

 食品だけでなく、住居関連品や日用品なども取り扱うGMSでは、SMと同じく食品の売上は伸びたが、衣料品やテナントについてはマイナスの影響を受けている。また、ひとくちにGMS企業といっても、GMSだけでなくSMも展開する企業、旅行業や飲食店など小売以外の事業も展開する企業など、企業によってその実態は異なり、20年度ではイオン北海道(北海道/青栁英樹社長)やイオン九州(福岡県/柴田祐司社長)のようにグループ企業を吸収合併したGMS企業もある。SMの売上比率が比較的高い企業はコロナ禍のマイナス幅は小さく、20年度の業績は企業によってバラつきがあった。本特集掲載のGMS9社の中で増収だったのは5社、営業増益だったのも5社だった。

コロナ後も生き残るのはどの企業か?

 今後食品小売各社は成長を続けることができるだろうか。少なくとも、コロナ禍のイレギュラーな状態が継続することはないだろう。ワクチン接種が進みコロナ禍の収束が現実味を帯びてくるなか、SMの特需は終わりが見えており、21年度では減収や減益を予想している企業も少なくない。スーパーマーケット3団体の統計調査によると、21年5月の既存店売上高実績(速報版)では、「惣菜」以外のすべての部門が前年を割り込んでいる。これからは一過性の特需に頼らずとも成長できる体制を整える必要がある。

 コロナ禍ではECの利用率が高まっており、フードデリバリーのニーズも拡大しているなどライフスタイルの変化がみられる。こういった新たな消費行動を注視しつつ、コロナ前から指摘されている人口減や人手不足、オーバーストア、業態の垣根を越えた競争などさまざまな課題にも対応しなければならない。顧客に選ばれ続けるためには、さらなる価格対応や商品開発、需要を的確に反映させた売場づくり、ネットスーパー強化などの取り組みが必要不可欠で、来年度以降はこれらに対応できる企業とそうではない企業で格差がさらに広がる可能性もあるだろう。

 こうしたなか、アフターコロナでも成長を維持できるのはどの企業なのか──。本特集では、SM、GMS、DSの営業収益上位企業のうち、一定以上のデータが収集可能な29社の経営指標を5期分掲載している。コロナ禍の影響で実力以上の数値が出た20年度だけでなく、5期分を経年で見ることで、その企業の本当の力を見極めることができるだろう。営業収益や営業利益などの主要指標のほか、企業の安定性や収益性、効率のよさなどを推し量るうえで重要な指標もピックアップした。加えて、部門別売上高構成比も2期分掲載している。

 たとえば、総資産を効率よく売上に結び付けているかどうかを示す総資産回転率をみると、今回の掲載企業のうち最新年度で最も高い数値を示したのはサミット(東京都/服部哲也社長)で3.09回だった。同社は3期連続で総資産回転率が向上しており、売上を効率よく稼いでいることがわかる。

 企業が資産をいかに活用して利益を上げているのかを示す指標である総資産経常利益率(ROA)でも、今回の掲載企業で最新年度に最も高い数値を記録したのは、サミットで13.7%だった。また、アクシアル リテイリング(新潟県/原和彦社長)も11.5%と、20年度はとくに高い数値を示したが、ここ数年も9%台を維持しており、継続して効率的に利益を確保していることが窺える。

 競合他社の経営指標を読み解き自社との違いを比較するなど、今後の経営戦略を練るうえで本特集をぜひ参考にしてほしい。

本特集で使用した主な指標について

 

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