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家電にクスリ、家具にコンタクトレンズ… フードデリバリー各社がこぞって日用品配送に参入するワケ

コロナ禍で急激に拡大しつつあるフードデリバリーサービス。アフターコロナにおいてもデリバリー需要は続くとの見方が多い中、各社が今凌ぎを削っているのが、コンビニエンスストア(CVS)や食品スーパー(SM)からの配達や、日用品や家電など食品以外のデリバリーだ。従来の「飲食店メニューを届ける」という概念を打ち破る、フードデリバリー各社の新たな取り組みについてレポートする。

OTC医薬品、家電の配達も!ウーバーイーツ

 2016年に日本に上陸して以降、加盟店数9万5000店舗(21年4月時点)という規模まで一気に成長、今ではフードデリバリーの代名詞ともいえる立ち位置を獲得した「ウーバーイーツ(Uber Eats)」。そんなウーバーイーツも、飲食店メニュー以外の配達に積極的に乗り出している。

 19年8月、ローソン(東京都/竹増貞信社長)店舗で扱う商品の配達を開始、その後食品スーパー(SM)からのグロサリー(一般食品・日用雑貨)配送にも参入した。現在は、西友(東京都/大久保恒夫社長)や成城石井(神奈川県/原昭彦社長)など、全国各地で多数のSMと提携し、飲食店メニュー同様、約30分以内でのスピード配送を武器に好調な業績を挙げているという。

 さらに21年2月には、ローソン店舗からのOTC医薬品のデリバリーも開始。20年に実施した、「どういうものを届けて欲しいか」というユーザーアンケートの結果で上位だった薬の配達が実現に至った形だ。風邪薬や胃腸薬など、第2類・第3類医薬品の49アイテムが対象で、ウーバーイーツアプリ上で薬に関する説明事項を表示、店舗では登録販売者が注意事項を記載した説明書を商品に添付する。現在は都内3店舗のみでの実施だが、今後拡大していく。

 21年3月には、家電量販店「EDION(エディオン)」からのデリバリーを東京・大阪の3店舗で開始した。マウスやイヤホンなどのPC周辺機器や、電池・電球などの日用品、キッチン家電など200点以上が配送対象だ。スピード感ある配送が強みのウーバーイーツ。これからも生活に必要なものをジャンルに関わらず、スピーディーに届けるサービスとして事業を拡大していく方針だ。

新たな配達システムで日用品に対応する出前館

 日本におけるフードデリバリーの草分けともいえる出前館(東京都/藤井英雄社長)。出前館は2000年にサービスを開始して以降順調に事業を拡大、21年1月末時点で会員数約750万人、加盟店舗数約5万5000人にまで成長した。

 出前館は、ウーバーイーツなどの外資系フードデリバリーサービスが日本に上陸するはるか以前から、花や酒類の配達、クリーニングや水周りの修理などの申し込みに対応してきた。これは、出前館がもともと配達だけを代行するサービスではなく、自身で配達リソースを持つ地元の店舗とお客のマッチングに特化したサービスであったためだという。

 しかし、17年から同社が導入した「シェアリングデリバリー」によって状況が変化しつつある。シェアリングデリバリーとは、地域ごとに設置した拠点に配達スタッフを配置、そのスタッフが店舗に変わって配達を行うものだ。つまり、自身で配達リソースを持たない店舗でも、出前館を通じてのデリバリーが可能になったのだ。

 この仕組みを利用し、新たにデリバリーを開始したのがコンタクトレンズだ。16年からビジョナリーホールディングス(東京都/星﨑尚彦社長)傘下のメガネ専門店チェーン「メガネスーパー」(社名はVHリテールサービス)と提携し、コンタクトレンズの即日配達を東京都内で開始、18年からは地域を大阪、名古屋、仙台などに拡大し42店舗で配達を行っている。「ないと困る」日用品であるコンタクトレンズの即日配達は好評を得ているという。

 自社倉庫を立ち上げ予定のフードパンダ

 2020年9月に日本上陸を果たした、ドイツのフードデリバリー大手「デリバリーヒーロー(Delivery Hero)」が展開する「フードパンダ(foodpanda)」も、今注目を集めているサービスの一つだ。神戸や横浜など6都市でスタートし現在は全国20都市にまでエリアを拡大、21年4月には東京都内の一部地域でのサービスを開始し、同時に韓国の「ウーワブラザーズ(Woowa Brothers)」傘下のダブリュービージェー(東京都)が運営するフードデリバリーサービス「フードネコ(FOODNEKO)」の吸収統合も発表している。

 フードパンダは、飲食店メニューでは出前館やウーバーイーツなどと競合する部分も多いが、日用品の配送については独自の方針を打ち出している。「D Mart」という自社倉庫を拠点として配送を行う仕組みを21年下期中に立ち上げる予定で、これは高齢者やファミリー層の日用品ニーズに応えることを目的としたサービスだという。自社で商品を用意することで、よりユーザーニーズに応えるラインアップを可能にし、他社との違いを明確にしたい考えだ。

本国では家具の配達も!フィンランド発のウォルト

 20年3月に広島からサービスを開始した、フィンランド発の「ウォルト(Wolt)」も、飲食店メニュー以外のデリバリーに意欲的だ。21年5月から、ツルハホールディングス(北海道/鶴羽順社長)と提携し、まずは道内7店舗でツルハドラッグが取り扱う日用品やスキンケア用品、食料品、ペットフードなどの配達を開始した。

 また、コンビニエンスストア(CVS)の配送にも注力。21年4月にはポプラ(広島県/目黒俊治社長)、ローソンと提携を発表し、それぞれ広島県のポプラ2店舗、東京都内のナチュラルローソン13店舗で配送をスタートしている。

 ウォルトは本国フィンランドでは雑貨や家具などの配達も行っている。今後日本でも幅広いラインアップを展開し、食品に限らず「欲しいものがすぐ届く」プラットフォームを作り上げていく方針だ。

 コロナ禍で強力な後押しを得たフードデリバリー各社。新規参入が続き乱戦の様相を呈しているが、最終的に生き残るのは3〜4社との見方が強い。他社との差別化を図る、新たな分野のデリバリーをどう拡充できるかが、生死を分けるカギになるのかもしれない。