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家庭内で出る食品ロスは流通の何と4倍強!削減に向けた小売業の関わり方とは? 

食品ロスの削減は、今や食品業界の共通課題です。19年は小売への納品期限、いわゆる3分の1ルールから2分の1ルールへの緩和が一般化しました。また、節分の恵方巻のように催事に合わせて商品を山積みにすることが問題視されるようにもなりました。欠品による機会ロスは防ぎたいけれど、廃棄ロスは社会的に許されない感じで、あとは発注精度を上げるしかないという雰囲気です。しかし、販売計画の精度をどれだけ上げたところで、日本の食品ロスは効果的に減るでしょうか? 食品業界は、なかでも一般消費者との接点を持つ小売業は、もっと踏み込むべきかもしれません。そこに顧客を囲い込む可能性があるとしたら?

フードロス削減を訴求するレンジアップおでん

商品戦略はロス抑制が前提に

 食品ロス対策は、小売の商品・販売戦略の基本項目として折り込まれるようになりつつあります。直近の例を挙げると、ファミリーマートは昨年、土用の丑のウナギに続いてクリスマスケーキを完全予約制にしました。結果は、廃棄の金額は半減、加盟店の利益は3割アップでした。ウナギのときは売上を2割落としましたが、ケーキではクリスマス当日に店頭で展開した小型のものも含め前年並みとのことです。

 ファミリーマートはカウンターで販売する「おでん」の廃棄ロス削減にも取り組みます。1月14日にレンジアップで提供する新商品の取り扱いを約6000店で開始、春頃まで効果を検証します。従来のように、そこにおでんができている情緒的な効果を犠牲にしてでも、廃棄ロス削減を優先したものです。もちろんオペレーション負荷の軽減というねらいもあり、来期のおでん戦略にどう活かされるか注目です。

 イオンリテールは、恵方巻のほぼ全品を予約の対象にしました。予約品の数は19年の2倍に拡大、売上に占める割合も2倍強の35%に高める方針です。予約の傾向を当日の作り込みにも活かし、廃棄ロスの抑制につなげるといいます。

 先にも触れたように加工食品には2分の1ルールを適用し、総菜はロングライフ化の工夫が続けられています。自動発注は、人手不足への対応だけでなく発注精度も高めると期待されています。製配販の各段階で情報を共有化する気運もあり、流通段階の食品ロスは縮小していくに違いありません。とはいえ、流通段階でいくら縮小しても食品ロス全体の削減は難しいようです。

ロスの半分は家庭で発生?

WRI analysis based on FAO 2011をもとに作成

 日本を含むアジア先進国では、食品ロスの46%は消費者の段階で発生しているというデータがあります。世界資源研究所(World Resources Institute)による2011年の調査です。これによると流通・店舗段階のロスは11%に過ぎません。

 消費者段階のロスが大きいのは先進国に共通しています。北米・オセアニアの61%、欧州の52%に比べればアジアのロス率は低いわけですが、世界で発生する食品ロスの量的な内訳を見ると、先進アジア地域が28%で最大、北米・オセアニアの2倍にもなります。

 先進アジア地域は日本だけではありませんし、調査自体が10年も前のものですし、調査結果は日本の問題ではないと、たかをくくれるでしょうか? たとえば皆さんは、自宅の冷蔵庫に何が入っているか、完璧に把握していますか? それらの食品の消費期限、把握できていますか?

冷蔵庫の見える化に、小売は踏み込めるか?

 年末に自宅をチェックしたところ、やはり期限切れの食品はあるものです。中には開けさえしないまま期限を超過した調味料もありました。

 なぜこんなことになるかといえば、冷蔵庫というものは、扉を閉めるとブラックボックスと化すからに違いありません。まずは整理・整頓して把握しやすい状態を作らねばなりません。これは一定のニーズがある問題のようで、ウェブや書籍でも冷蔵庫の整理術は数多く紹介されています。

 次に情報の「見える化」です。ストックの消費期限をリスト化し、一覧できるようにすべきでしょう。これも専用アプリが多くリリースされていますが、私は期限を知るだけで十分なので、リマインダーアプリを応用することにしました。

 消費期限をリスト化するアプリを物色していて思ったのですが、このような機能を小売のアプリが実装したらどうでしょう?

 購入履歴のリストに、本当は自動で消費期限も入ればベストですが、手入力でも手間は今と変わりません。とにかく購買履歴を消費期限の時系列でリスト化できれば十分です。使い終わってそのリストを消去する際に、その商品の現在の店頭価格をチェックできたり、そのままネットスーパーで購入できたりすれば、消費者には便利だし、店は顧客の囲い込みにつながるのではないでしょうか。

 しかし現時点ではすべて夢物語です。現状では、購入履歴さえ確認できないアプリがほとんどです。食品系の小売アプリに押しなべていえることですが、アプリ機能が販促情報に終始しており、消費者の生活視点で使える機能が極めて乏しいと思います。購入した商品が家庭内で消費されるまでをフォローする、消費期限の管理機能。いかがでしょう?