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[特別レポート]韓国食材(K-FOOD)最前線レポート

韓流ブームをきっかけに日本でも広く愛されるようになった韓国食材。なかでも今、注目をあつめているのは「ゆず茶」「えごまの葉」「チャメ」「干し柿」。これらの食材はどのように生産・加工されているのか。原産地をたずね、環境に配慮した農法や製法を現地取材した。

▲「ゆず」の加工会社大手のコッセム食品

世界的にも愛され、毎年輸出が増加している京磯道抱川市の「ゆず茶」「ゆず」加工会社大手のコッセム食品を訪問

▲衛生管理も行き届いている

 「ゆず」の韓国最大の生産地として知られる高興郡。高興郡は平均気温、年間日照量、降雨量など気候変化に敏感な「ゆず」の栽培地として最も適した条件を備えている。

 その高興郡で育てられたゆずの加工会社がコッセム食品だ。1965年に設立され、今年で54年目を迎える。2018年度に売上約400億ウォンを達成、そのうち韓国国内の売上は約300億ウォン、国外の売上が約100億ウォン。「ゆず」関係の製品の割合が売上全体の90%を占める。また、輸出国は中国、日本、香港、台湾をはじめとする20か国以上におよぶ。

 韓国の「ゆず茶」は蜂蜜や砂糖で煮込んだ甘いジャムのようなもので、皮が細かくスライスされて入っているのが特徴だ。代表的な商品はビン詰だが、近年は携帯しやすいスティックタイプやポーションタイプの製品も開発。一般的なお茶の市場が鈍化している中、これらの新タイプの商品で市場の拡大を図っている。

 2018年にはコストコ ジャパンに「ゆず茶」製品を納入。日本市場へ進出のスタートを切った。上記のように製品の規格およびスペックの多角化を通じ日本市場にも対応可能とのこと。「ゆず茶」はお湯や炭酸で割ったり、アイスクリームにかけたりとさまざまな使用シーンがある。日本においては、製品だけでなく、飲食シーンの提案も重要なポイントになるだろう。

 「ゆず」にはビタミンCがレモンの1.5倍含まれているといわれ、健康志向の高まる日本市場においても今後は注目を集めそうだ。

▲蜂蜜や砂糖で煮込んだ甘いジャムのような韓国の「ゆず茶」
▲持ち運びやすさから需要が高まっているポーションタイプ
▲蜂蜜や砂糖で煮込んだ甘いジャムのようなゆず茶のビン詰

 

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日本にも輸出され始めた「えごまの葉」

韓国産「えごまの葉」、2018年から日本輸出が本格的に開始

▲韓国国内でも革新的な取り組みを行うマニンサン農協
▲韓国では食材としてさまざまな料理に使われている「えごまの葉」

 「えごま」は大葉などと同じ一年草のシソ科植物で、大葉とよく似た葉をした植物だ。日本では、健康志向の高まりから、「えごま」の種子を絞った「えごま油」がα-リノレン酸を豊富に含む油として知られている。しかし、韓国では「えごまの葉」を食す文化がある。サムギョプサルのように肉を包んだり、サラダに入れる葉物野菜、チヂミの食材として扱われている。

 今回は「えごま」の産地、錦山郡にあるマニンサン農協を取材した。マニンサン農協は、農家の方々の平均所得1億ウォンという他農家の2倍の所得目標を掲げ、また「えごまの葉」の新たなパッケージ形態の開発まで手掛けるなどマーケティングにも力を入れる韓国でも革新的な農協だ。現在は「えごまの葉」を中心に242品目257種類の商品を販売している。

▲(左)さまざまな形態で出荷される「えごまの葉」生産者の顔が見える商品もある。(右)葉物野菜としても需要も高い「えごまの葉」
▲人の手で摘まれる「えごまの葉」

 現在は香港やシンガポール、アメリカにまで輸出を行っている。日本においては2018年に「えごまの葉」の日本輸出の道が本格的に開かれ、日本輸出拡大MOU締結を通じて、生鮮農産物の生産・流通・輸出、そして日本への輸入の段階別協業体系を構築。日本国内の焼き肉チェーン店約1万5000店、韓国料理店など大量需要先の発掘と輸出を通じ5年以内に500万ドルの輸出を目標にしている。

 現在、日本国内でも若干スーパーマーケットの店頭にも並ぶようになったが、大葉に比べるとその消費量はかなり少ない。しかし、日本でも韓国豚肉料理のサムギョプサルが普及したことから、韓国産「えごまの葉」も肉を包んで食べる葉物野菜としての需要の高まりから、日本での消費拡大も期待されている。

 「えごまの葉」の普及には、「えごま油」の認知度を生かしながら、今後は食材としてどのように食べるのかなどのレシピ紹介が必須となる。韓国農水産食品流通公社では、女性タレントや人気のインスタグラマーを起用したレシピサイトを設けるなど「えごまの葉」の認知拡大に努めている。

春先に日本の食卓をにぎわす
新たな果物として注目を集める「チャメ(別名マクワウリ)」

▲ロボットアーム自動積載システムを導入するなど最新鋭の設備を備えたウォラン農協流通センター
▲ロボットアーム自動積載システム

 「チャメ」は別名マクワウリと呼ばれ、韓国では昔から親しまれている一般的な夏の果物だ。チャメの原種は西洋系のメロンと東洋系チャメに分かれて発達した。

 「チャメ」の韓国最大の原産地は星州郡。ここで栽培される「チャメ」は糖度が15%以上。歯ざわりがよい食感で、舌先で溶けるような新鮮さもある。星州産「チャメ」の栽培と出荷を一手に担うウォラン農協流通センターを視察した。

▲シャキッとした食感と甘さを感じられる果物として販売される

 「チャメ」は主に3月から6月の生産量が多く、いちばんおいしい時期でもある。韓国では食後のデザートとして飲食店や一般家庭などでも多く食べられている。「チャメ」はナイフで皮を剥き、種も含めてそのまま食べられるなど食べ方も簡単でシャキッとした食感と甘さを感じられる果物だ。

▲韓国国民に親しまれている「チャメ」小売業には個包装にして販売される
▲大切に収穫される「チャメ」

 「チャメ」はビニールハウスで栽培され、人の手によってひとつひとつ、大切に収穫される。ウォラン農協では、高品質な商品を供給するために選別者の品質管理教育に力を入れている。また、近年は韓国国内だけではなく日本やシンガポール、香港などのアジア地域への輸出にも力を入れている。日本へも2018年は25トンの輸出を行うなど、シンガポールの58トンに次ぐ実績を上げている。現在、コストコ ジャパンや静岡のスーパーマーケットマキヤに導入されている。まだまだ認知度の低い果物ではあるが、春先に日本の食卓をにぎわす新たな果物として注目を集めそうだ。

▲選別場内部の低温システムの導入で鮮度を確保している

 

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おやつとしても人気「半生干し柿」

ビタミンA、Cおよびミネラルなど多くの栄養素があり、添加物がまったくない栄養おやつとしても人気が集まる「半生干し柿」

▲2018年から日本への販路を拡大しているネイチャーファーム

 山に囲まれている地域の特性で柿の種がなく渋味も少なく、甘味が強い清道の「清道柿」。清道は、慶尚北道の最南端にあり、昔から水、空気、人の品性この三つが青いという地域で三青と呼ばれる。この地方の柿は種がないため加工がしやすく、また糖分も高く、ビタミンも豊富だ。

▲徹底した衛生管理を行っている生産工場

 今回は2018年から干し柿製品を日本市場で販売を開始したネイチャーファームを取材した。徹底した衛生管理と体系化された乾燥設備を有し、清道の柿を使用して天然の無添加、乾燥柿製品を製造する会社だ。消費者ニーズに応え、主に干し柿、半生干し柿、アイス、柿シロップ、羊羹などさまざまな製品を開発、販売している。近年はFOODEXにも出展。各製品の紹介や会社の紹介などを通じ、日本での販路を拡大している。現在は日本の青果卸を通じ、大手スーパーマーケットやコンビニエンスストア、お弁当提供企業やコストコ ジャパンにも販路を持つ。今後も日本のニーズに対応し、特性である甘味と食感の「半生干し柿」の供給体制を強化していく。

▲日本で発売されているネイチャーファームの製品「おやつ熟柿」(販売元:ファーマインド)
▲販路拡大をめざし、FOODEXにも出展している
▲「おやつ熟柿」店頭訴求POP
▲半生干し柿はさまざまな食べ方で親しまれている

 今回の取材を通じ、韓国の農産・加工各社が日本を重要なマーケットとしてとらえ、製品管理や商品開発を積極的に推し進めていると感じた。しかし、こうした実情は日本ではまだまだ知られていない。日本の小売業がこれら韓国食材(K-FOOD)の持つ付加価値に注目し、それを消費者に伝えることができれば新たな需要拡大につながるだろう。

 

問合せ先
韓国農水産食品流通公社(aTセンター)〈東京支社〉
〒160-0004 東京都新宿区四谷4-4-10 KOREA CENTER 5F
TEL:03-5367-6656 / FAX:03-5367-6657