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緊急現地レポート  セブン-イレブン沖縄進出!ローソン、ファミマと真逆の商品政策の理由と勝算

コンビニ最大手のセブン-イレブン・ジャパン(東京都/永松文彦社長)が7月11日、ついに沖縄県に進出した。独特な食文化を有する沖縄で、王者・セブン-イレブンはどのような商品政策(MD)を導入しているのか。オープン直後の店舗を訪れると見えてきたのは、意外な方向性のMDだった。(本文内の価格はすべて税抜、2019年7月11日時点のもの) 

13品目の地区限定商品を発売

7月11日、セブン-イレブンは14店舗を同時オープンし、ついに沖縄県に進出した

 711日、セブンイレブンは沖縄県内に14店舗を同時オープンし、“47都道府県制覇”を果たした。そのなかで唯一の直営店であり、セブンイレブン・沖縄(久鍋研二社長)の本社下に店を構える「セブンイレブン那覇松山1丁目店」では、午前7時の開店直後から多くの周辺住民や通勤客などでにぎわい、注目度の高さをうかがわせた。

 さて、今回のセブンイレブン沖縄進出で何よりも注目すべきは、その商品政策(MD)だろう。ご存じのとおり、沖縄は本土(現地では「内地」と呼ばれる)と大きく異なる食文化を持っている。それに合わせて、先行して店舗を展開するファミリーマートやローソンでは、「沖縄そば」「ゴーヤーチャンプルー」「タコライス」といった、沖縄で慣れ親しまれているオリジナル商品が多く並んでいる。 

 セブンイレブンも同様に、沖縄での出店にあたって、沖縄ならではのメニューや、県産素材を使った地区限定商品を開発。711日時点で計13品目を投入している。代表的な商品をいくつか紹介しておこう。

地区限定商品の1つ「TACORICE」。ライスと野菜が別添えになっているのが特徴

 まず、沖縄では“鉄板メニュー”の「TACORICE(タコライス)」(460円)。タコミートがのったライスと野菜類は別添えになっており、食べる際に、タコミート+ライスを温めた後に野菜を後乗せするかたち。これによって、野菜のみずみずしさが損なわれることなく、専門店に近い食感や味わいを楽しめる。

「チキン好き」の沖縄県民に向け、フライドチキンを新たに3種類導入

 さらに、沖縄ではフライドチキンがよく食べられることから、おなじみの「ナナチキ」に加えて、「ガリチキ」(178円)、「ドラム」(250円)、「サイ」(250円)の3種類を販売する。「ガリチキ」はその名の通り、ガーリックの風味を効かせた歯ごたえのある衣が特徴で、「ドラム」は薄衣仕立てで揚げた食べやすい骨付きもも肉、そしてあまり聞き慣れない「サイ」はボリュームのある腰の部分の肉を使った、旨味の強い商品だ。”チキン好き”の沖縄県民にとって、この選択肢の豊富さは大きなポイントだろう。

宮古島の蕎麦を使った「もりそば」

 地元素材にこだわった商品として展開するのが、「もりそば」(400円)。日本で最も早く収穫期を迎えるとされる、宮古島産の「玄蕎麦」を使用した一品だ。一般に、沖縄で蕎麦が栽培されていることはあまり知られていないが、そうした隠れた素材を、「もりそば」という比較的オーソドックスな商品に使ってしまう点に、セブンイレブンの商品開発の巧妙さが垣間見える。

 このほか、沖縄県産のゴーヤーを使った「ゴーヤーチャンプルー丼」や、沖縄専用に開発したかつおだしを使った「じゅしーごはん」(沖縄の炊き込みご飯)など、素材にこだわった地域限定商品が揃っている。

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街頭調査でわかった沖縄県民のホンネ

沖縄県民は「内地の商品」を求めている? 

那覇市内にオープンしたセブン-イレブンの店内

 ただ、売場を見てみると、ファミリーマートやローソンに比べて“沖縄らしさ”が感じられるオリジナル商品はそれほど多くない印象だ。これには、れっきとした理由がある。

 セブンイレブンは沖縄への出店に先立って、内地と同様に綿密な市場調査を実施している。その一環として、約1万人に対して「街頭アンケート」を行い、セブンイレブンにどのような商品を期待しているのか、県民に直接聞き取り調査を実施した。

 大多数の人が「沖縄の味」を求めているのかと思いきや、結果は意外なものだった。「およそ6割の方から『内地のセブンイレブンで売っている商品が食べたい』という声が上がった」(広報)のだ。

 これまで店舗はなかったものの、セブンイレブンのブランドパワーは沖縄でも決して小さくない。オープン日の早朝から、多くの人が列をなしたことからもそれは明らかだろう。そして、沖縄の人々が求めるのは、“沖縄らしい商品”ではなく、テレビやSNSなどで話題となっているセブンイレブンの人気商品だったのだ。

ファミマ、ローソンと逆行するMDは成功するか 

 こうしたマーケティング調査の結果を踏まえ、セブンイレブンは内地の店舗でのMDをベースとしながら、総菜やホットスナックなどで地域限定商品を差し込む形をとった。この戦略は、“沖縄色”を強く打ち出すファミリーマートやローソンとは一線を画したものだ。ファミリーマートにいたっては、「中食商品の7割程度は地域限定商品もしくは沖縄向けに味つけを変えている」(沖縄ファミリーマート広報)ほどで、ほとんど逆行していると言ってもよいくらいだ。

沖縄ファミリーマートでは、中食商品の約7割が地区限定商品だ

 もっとも、どちらの戦略が正しいのかは現時点ではわからない。セブンイレブンのマーケティングや商品開発の精度の高さは言うまでもないが、ファミリーマートやローソンにも、これまで20年以上にわたり沖縄で培ってきたノウハウがある。最後発となったセブンイレブンが先行2社の牙城を崩すのか、はたまた戦略の転換を迫られることになるのか。セブンイレブンの手腕が問われる夏になりそうだ。