文=高木史朗
ニールセン デジタル シニアアナリスト
近年、EC(電子商取引)市場の成長が著しい。ニールセンデジタル(東京都/宮本淳社長)は、スマートフォン(スマホ)視聴率情報「Nielsen Mobile NetView」およびパソコン(PC)版インターネット視聴率情報「Nielsen NetView」のデータをもとに、日本におけるECサービスの男女別の利用状況を調査した。
その結果、男女ともにスマホ経由の利用がPCを大きく上回った。ECサービスの利用は、PCからスマホにシフトしていると言える。
しかし、男性と女性で比較をすると利用状況は異なっている。
利用時間では、女性はスマホからの利用時間が長いのに対して、男性はPCからの利用時間がスマホよりも長いという違いがあった(図表1)。男性はスマホだけの利用では完結せずに、PCでも詳細に商品情報を確認していると考えられる。男性をターゲットにした商品を販売する際には、スマホだけでなくPC上でのコミュニケーションも疎かにはできないと言えるだろう。
利用者数では、デバイスに関係なく男女ともによく利用されている上位3つのECサービスは「楽天市場」「Amazon.co.jp」「Yahoo! ショッピング」だった。
しかしスマホ経由のECアプリの利用状況に注目すると、利用者数の多いアプリは1 位「Amazon.co.jp」、2位「楽天市場」、3位「メルカリ」となっている。男女別で見ると、女性は「楽天市場」、男性は「Amazon.co.jp」の利用が最も多い。不用品や中古品などを個人間取引する「フリマアプリ」の「メルカリ」は、女性の利用者数が男性の約2倍に当たる735万人となっている(図表2)。
次に、上位3つのECアプリの重複利用状況を見ると、特定のアプリしか利用していない女性は全体の59%(1006万人)で、「楽天市場」のみを利用している人が24%と最も多い。一方で、特定のECサービスしか利用していない男性は64%(921万人)で女性より多く、「Amazon.co.jp」のみの利用者が33%でいちばん多かった(図表3)。
今回の調査は男女の利用状況の比較のみだったが、年齢や職業などそのほかの属性によってもECサービスの利用方法は異なると考えられ、セグメントごとの利用状況を把握することが重要である。
また、PCとスマホ経由を合わせたECサービスの利用状況では、上位3つのサービスに大きな違いはなかったが、スマホ経由のECアプリの利用では男女で違いが見られた。とくに女性は、上位3つのうち特定のECアプリしか利用していない人がそれぞれのアプリで20%前後存在している。ECサービス運営企業は、優良顧客を増やしていくうえで、利用者の属性や、ECアプリが併用されにくい要因、特定のECアプリのみが支持されている理由などを把握することが重要だろう。
そのほかの企業も、消費者がどのようなサービスや購入方法を求めているのか理解するために、上位のECサービスが拮抗している状況が、今後どのように変化していくのか注視していく必要がある。
(「ダイヤモンド・チェーンストア」2017年6/1号)