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データで見る流通
男女別、年代別で逆転する日本人の食嗜好

文=小宮山 学

日本リサーチセンター
管理本部 コーポレート・リレーション部 エースの会事務局長(チームリーダー)
兼 営業企画本部:新価値創造プロジェクト チーフ
兼 広報室 室長

 

 日本人は「味は濃い方が好き」なのか、「うす味をこころがけている」のか。調査を行うと、日本人の食意識は、男女別、年代別の違いが大きく、全体平均のみを見るだけでは嗜好をとらえきれないことが示された。

 

 日本リサーチセンターは、2015年4月と5月の2回に分けて全国15~79歳男女2400人を対象に、「日本人の食の嗜好や食生活」に関する66項目について訪問留置法の調査を実施した。調査結果は、5段階で聞いた選択肢のうち「あてはまる」と「ややあてはまる」を合計した「YES合計」と、「あてはまらない」と「あまりあてはまらない」を合計した「NO合計」の2つの比率を中心に分析を行った。

 

 この分析によると、日本人全体では「味は濃い方が好き」は「YES合計」が39%で、「NO合計」の32%を上回った。一方で、「うす味をこころがけている」は「YES合計」が46%で、「NO合計」の23%を大きく上回った。これらの結果から、日本人全体の実態としては、味は濃い方が好きだがうす味をこころがけている人が多いことがわかる。

 

 ところがこれを、男女別、年代別に展開すると、異なる結果がみえてくる。「味は濃い方が好き」は、女性よりも男性で、年代では若年層で多い(図表1)。この男女別、年代別の傾向は、別の設問「脂っこい、こってりしたものが好き」でも同じである。一方で、「うす味をこころがけている」は、男性よりも女性で、年代では高齢になるほど多くなり(図表2)、「味は濃い方が好き」とちょうど反対の傾向となった。

 

 

 さらに「味は濃い方が好き」と「うす味をこころがけている」の「YES合計」の比率を並べて比較すると、男性では49%>36%と「味は濃い方が好き」が上回るが、女性では30%<56%と「うす味をこころがけている」が上回る。

 

 年代別でみると、40代は約40%で拮抗しているが、30代以下では「味は濃い方が好き」な人が、50代以上では「うす味をこころがけている」人が多いことが読み取れる。すなわち「味は濃い方が好き」と「うす味をこころがけている」とを比較すると、男女で嗜好が異なるほか、年代との相関が強く、40代を境に嗜好が逆転しているのがわかる。

 

 この調査結果は味の濃さに関するものであり、食嗜好の一例にすぎないが、食にまつわる嗜好の違いは男女、年代による差が大きいといわれている。商品開発や売場の商品構成を検討する際は、顧客の全体や平均を見るだけではとらえられないものがありそうだ。

 

 たとえば、市販の総菜や弁当については、万人向けの味をめざすのではなく、ターゲットとする顧客の性別や年代に合わせた味や嗜好を訴求することが求められる。店舗の立地によって、あるいは時間帯によって変化する顧客構成を反映させ、売れ筋商品を変えていくなども有効な施策となるかもしれない。

 

 

(「ダイヤモンド・チェーンストア」2016年7/1号)