振り返る今年の春節:電商法の影響は?
以前ご紹介した「電子商務法(通称:電商法)」が今年の1月1日から中国で施行されました。建前上は、無法地帯だった中国のEC市場の適正化と消費者保護のための法律とされていますが、実質的、ないし日本のインバウンド業界にとっては、「ソーシャルバイヤー」を規制する目的があると捉えられています。
その規制とインバウンド需要がもっとも盛り上がる時期の一つ「春節」がバッティングしたことにより、様々な影響がすでに報じられています。では、実際のところ中国人観光客の消費行動にどのような変化が生まれたのでしょうか。「購買興味データ」から「電商法」の影響を見ていきます。
※「購買興味データ」とはバーコードをかざすと多言語商品情報を表示するアプリ「Payke」を通じたスキャンに関するデータで、これによって購買直前の消費者の動きやプロセスを知ることができます。
やはり中国インバウンド消費が伸びる春節だが、今年は伸びが鈍化…?
まずは、中国人観光客の消費動向について大枠を見てみましょう。【図1】は、中国人に人気の観光地として定番となった北海道の店舗に設置された「Paykeタブレット」のスキャン数の推移を示したものです。
これを見ると、明らかに春節シーズンに中国人旅行者の消費行動が活発になる様子がわかります。気になるのが、2019年の春節は2018年ほどの伸びが見られなかったことです。電商法の影響か、コト消費傾向の現れなのか、昨年よりも伸びが鈍化しているようです。
他のシーズンでは、やはり7-8月の夏休み需要のタイミングに春節よりはこぶりなピークがあります。また、2018年は北海道地震の影響もあってか、10月の国慶節には消費行動が活発にならなかったようです。
ソーシャルバイヤーへの影響は数値上は見られず
では、電商法の影響をもっともうけると思われる、ソーシャルバイヤーの消費行動はどのような変化があったのでしょうか。
Paykeによれば、1ユーザーあたりの平均的なスキャン数は10回以下です。よって、それ以上の「異常なスキャン数」のユーザーはソーシャルバイヤーの可能性が高いため、「50回以上スキャン」「100回以上スキャン」をしたユーザーについて、全ユーザーに対する割合の推移を見たのが【図2】です。
こうしてみてみると、2018年春節と2019年春節とで比較してみると、100回以上のスキャンユーザーの割合は微減しており、50回以上スキャン数ユーザーの割合はむしろ増加している様子が見られます。
また【図1】でしめした中国人旅行者の消費行動推移と比べてみると、一般消費者とソーシャルバイヤーのピークシーズンが異なることがわかります。そのため、むしろ電商法の影響が色濃く出る可能性が高いのは夏休みシーズンであることが推測され、いままでソーシャルバイヤーによる「爆買い」をターゲットとしていた小売店は、今後一層の注意が必要です。
すでに各メディアにて「中国の消費減退で百貨店に大打撃」といった見出しで報じられていますが、さまざまな小売店の現場からの悲鳴が聞こえはじめています。実質的にソーシャルバイヤーが制限されたため、小売店においては、中国人旅行者の客単価は必然的に下がってくるでしょう。
そのため「ただ中国で人気のものを免税で売れば儲かる」という「爆買い頼みのインバウンド対策」の時代は終わりに近づいています。むしろ、小売店でさえ「コト消費」的な売る仕掛けが必要になってくると予測されます。
【プロフィール】
執筆:訪日ラボ( https://honichi.com/ )
「訪日ラボ」はインバウンド総合ニュースサイトとして、2015年にサービス開始しました。インバウンド担当者・訪日マーケティング担当者向けに、国内のインバウンド時事ニュースやインバウンド事例、インバウンドデータ分析、インバウンドソリューションについて日々情報発信をしております。
データ提供:Payke( https://payke.co.jp/ )
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