トライアルの生鮮強化の取り組みにおいて大きな役割を担っているのが、総菜部門を運営するグループ傘下の明治屋(福岡県)だ。同社の大塚長務社長は自身の料理人としての経験も生かしながら、「職人品質のコモディティ化」をコンセプトに、品質と価格の双方を追求した総菜開発に邁進してきた。そして直近では生鮮3部門との連携を深め、部門の壁を越えた新機軸の商品開発にも挑む。総菜市場をどのように展望し、どのような方向性でトライアル流の新たな商品政策(MD)を構築していくのか。同じく食品小売企業で総菜の開発に長年携わった経験を持つ、KTMプラニングR代表取締役の海蔵寺りかこ氏が聞く。
商品開発拠点を地域ごとに設置へ
──今回初めて本部に伺いましたが、1階エントランス横のガラス張りのテストキッチンで、職人の方々が調理している様子に圧倒されました。
大塚 テストキッチンでは総菜商品の原型となるメニュー開発を日々行っています。和食、中華、フレンチ、パンなどそれぞれのジャンルのプロが切磋琢磨しながら、新規メニューや既存商品のブラッシュアップのために腕を振るっています。
拠点を本部の1階に、しかもガラス張りで設置したのは、商品開発をブラックボックス化したくないためです。トライアルグループの社員や取引先の皆さまが行き交う場所で開発の様子を見てもらいつつ、試作メニューは社員向けに販売してフィードバックを募るという仕組みも取り入れました。
──そうして出来上がったメニューを、どのようにプロセスセンター(PC)や各店舗で効率的に製造できるような設計に落とし込むのでしょうか。ある店舗で食べた弁当はPC製造にもかかわらず、具材のカツにサクサク感が残っていて驚きました。
大塚 社員からのフィードバックと開発部内での試食を経て販売を決定したら、量産できるように最適な原料の調達や調理方法の再設計などを行います。細かい内容についてはあまり詳しくは明かせませんが、それぞれに専門性を持った担当社員が関わっています。
PCで製造する場合でも、最新の技術や調理機器を活用しながら、経時劣化をいかに最低限にとどめるかを追求しています。食べていただいたカツも、衣の配合や肉の加水率など細かな要素の調整を重ねています。
──全国で店舗を展開するなかで、同じような開発拠点をほかのエリアに構えていく考えはありますか。
大塚 明治屋ではPCを
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