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バローHD小池孝幸新社長が実践する「逆算経営」とSM強化のための6つのプロジェクトとは

岐阜県を本拠とし、スーパーマーケット(SM)やドラッグストア(DgS)、ホームセンター(HC)など幅広い業態を抱えるバローホールディングス(以下、バローHD)。現在はグループ売上1兆円体制に向け、SMを中心とする本業の強化に加え、データ活用やノンストア事業、行政連携などによる「バロー経済圏」の構築を進めている。直近の取り組みについて、2022年8月に取締役社長代行に就任した小池孝幸氏に聞いた。

自社の資源を最大限活用する

──まず、社長代行就任の率直な感想を教えてください。

小池孝幸(こいけ・たかゆき)
1972年9月20日生まれ。名古屋大学文学部卒業後、95年4月、バロー(現バローHD)入社。社長室長、物流部長などを経て、2018年4月、中部興産代表取締役社長(現任)。19年1月バローHD IT戦略室長兼情報システム部長、同年6月取締役(現任)。20年4月流通技術本部長兼システム部長(現任)、22年8月社長代行に就任(現任)。

小池 就任の打診は急なことだったので驚きましたが、「世代交代を進めたい」という田代正美会長兼CEOの想いもあり、それにはしっかりと応えていきたいと思っています。今までも当社で社長室長を務めたほか、システムや物流、M&A(合併・買収)案件など、グループ全体に関わるさまざまな業務に携わっていたため、社長としての任務には違和感がない状態で引き受けることができました。

──今の小売市場をどう見ていますか。

小池 非常に厳しいのは間違いないでしょう。値上げが続くなか、メーカーは小売企業と適正な価格で交渉できれば利益になりますが、小売としてはメーカーの事情に応じなければならない一方、値上げ分をすべて消費者に転嫁するわけにもいきません。こうしたなかでお客さまが納得できる値ごろ感を再形成するのも難しいですし、われわれも水道光熱費の上昇に苦心しています。これからも経費と利益率のバランスをとることはより困難になっていくでしょう。

──そうしたなかでバローHDとしてどう対応していくのでしょうか。

小池 改善は、現象の前工程と後工程も視野に入れることで、対策の選択肢が増えていきます。たとえば、われわれは物流機能を自前で持っています。そのため、流通過程で使用する鉄材のカーゴ台車をプラ材のドーリーへ切り替えるなど、生産性向上や経費削減の対策を打てます。こうした自社の資源は最大限活用したいです。

 また、マクロとミクロを混在させ過ぎてはならないと思っています。全体としては人口減少が進んでいるうえに、消費者は節約志向で買い控えもしていますが、そのなかで売上を伸ばし勝ち組といわれている企業もいます。当然、危機感を持つことは重要ですが、いたずらにネガティブになることはないと考えています。当社はグループ全体で川上から川下まで対応できるほか、広域エリアに店舗があり、複数の企業や業態で消費者が求める価値を判断できるのが強みです。

──広いエリアで多くの業態を持つことは大きなメリットですね。

小池 たとえば、都市部と地方で消費行動がどう違うのかをデータで見ることができます。もし「SMバロー」しか業態がなかったら、改装経費や必要なシステムなどは、バローの常識で判断しがちになってしまいます。しかし、グループの「タチヤ」や「たこ一」などを見ていると、冷ケースや駐車場が十分になくてもやりようによってはきちんと実績を上げられるというのがわかります。そういった点で、「何が本当に正しいのか」を検討するために、異なる指標や考え方をグループ内部に抱えていることは、大きなメリットです。

 また、コスト面での利点もあります。たとえばSMを閉店する際に物件をDgSに転用することで、閉店と開店の経費をうまく相殺し、成長を加速させることができます。また、乳製品用の家畜を育てるために必要な飼料を、本来なら廃棄していた青果プロセスセンター(PC)の残渣で賄うことで廃棄ロスの削減が可能です。こうした循環型のモデルを組み立てられるのもグループの強みです。

“創造”と“破壊”に同時に取り組む

──そうした強みも含め、今のグループ全体をどのようにとらえていますか。

小池 私が

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