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ローソン 次世代コンビニDX AI活用による個店の最適化・「個店データドリブン経営」の未来

ローソン 次世代コンビニDX AI活用による個店の最適化・「個店データドリブン経営」の未来

株式会社ローソン
経営戦略本部 次世代CVS統括部 マネジャー
佐久間 大輔 氏

 

店舗にカメラ・マイクを設置し、データに基づいた顧客の行動分析に着手

 ローソンは国内店舗数14,656店、Ponta会員約1億622万名(2022年2月末)を有し、グループ理念である「私たちは“みんなと暮らすマチ”を幸せにします。」の実現に向けて取り組んでいる。

 ローソンでは1975年からデジタル活用を本格化。2015年に半自動AI発注システムを導入、2019年にセルフレジの運用開始、2020年にLawson Go(ウォークスルー決済店舗)の実証実験を開始するなど、デジタル変革の取り組みを推進。2022年6月より東京都および東北地区の一部店舗においてAIの値引き推奨機能の実証実験を行い、食品ロスの削減に取り組んでいる。CVS店舗が飽和状態にある中で勝負していくためには、地域に合ったお店づくり・個店最適化が重要であり、その解決のためにMicrosoftのDigital Feedback Loopを取り入れ、協業で個店最適化の取り組みを進めている。

AIを活用した値引き販売の推奨実験

 これまでの個店最適化では、POSの売上データや会員カードデータの分析、店舗従業員の経験やお客様の声をもとに施策を実施してきたが、実際の施策の成功および失敗の要因の数値化が曖昧で検証が十分にできなかった。そこで、新たに店舗にカメラとマイクを設置し、AIを活用して顧客のデータに基づいた行動分析から仮説を立案して、店舗の施策に生かせるプロセスの構築に着手している。

「店舗運営支援AI」が個店ごとの有効な施策を提案

 カメラは店舗レイアウトによって異なるが、天井から8~12台設置している。カメラはお客様の入店から会計、退店までを追跡し、どの棚で立ち止まり、どの商品に手を伸ばしたかをデータで取得し、商品棚の陳列状況も把握できるようにしている。マイクは店舗に2~3台設置し、レジ横のファストフードの声掛けが売上にどう影響するかを分析する。
 カメラ&マイクから顧客の店内動線やエリア別滞在時間、店内滞在時間、商品手伸ばし・商品返却、レジ待ち時間、店舗スタッフの店内声がけなど、店舗施策の改善に生かせるデータの取得が飛躍的に増えた。

店舗でのカメラ/マイクの活用

 個店最適化プロセスとしては、集めたデータを「店舗運営支援AI」で分析し、個店ごとの有効な施策を提案。その施策結果をAIが学習し、新しい施策を提案していく。この最適化サイクルを回していく。

 具体的には①入力されたデータをAIが学習し、有効な施策を提案 ②施策変更を実行 ③顧客行動変化を認知し各KPIを再検査 ④売上・利益・顧客満足度への寄与度を具体的な数値で確認する。③、④の結果をAIに学習させ、繰り返す。「店舗運営支援AI」はAIの施策だけではなくお店独自で考えた施策に対しても評価出来るため、より店舗に有用な施策を実施することができる。

個店毎のデータドリブン経営を目指していく

 「店舗運営支援AI」を活用した個店最適化の取り組み事例を紹介する。1つ目の事例では、A店におけるアイスの売上増へのアプローチを紹介する。天井のカメラから、アイスの売場を4ブロックに分けて、顧客の接触率のデータを取得。そのデータから人気の高いクリーム系アイスを最も手伸ばしが多い位置に配置し、顧客の通過が多いオープンケース側に高単価商品を配置する売場変更を行い、客単価増を実現した。

アイス売上増への施策立案

 2つ目の事例では、訴求力の高い1buy1施策商品(ソフトドリンク)を、B店の売場の どこに配置すれば、最も売上向上に貢献するかを検証。店舗の通過エリアに着目し、顧客の店内行動と客単価をベースに、ターゲット顧客の選定と配置場所候補の絞り込みを行った。
 ソフトドリンクエリアを通過していない顧客をターゲットに選定して、動線分析、時間帯別エリア通過の多少を鑑みて、最も目につく「まちかど厨房」の横のエリアを配置場所に決定した。ポイントは、配置場所は店舗毎に異なり、対象商品が変われば該当場所も変わる点である。
 一般的にCVSでは店舗を周回する顧客ほど客単価が高いとされていたが、特定エリアのみ通過している顧客と周回する顧客の客単価に大きな差がない事が判明。店舗を周遊しなくとも「ついで買い」を促す棚配置にし、客単価向上を促す施策を実行した。店舗に新しい気付きを与えられ、反響も大きかった。

 このように「店舗運営支援AI」によるPDCAサイクルは店舗売上向上に貢献できることから、全国への展開を目指している。今後は①売上寄与の金額化の精度を高め、確度の高い施策を高速で回し、②AIへの施策インプットを重ね、効果の高い施策を明確な理由をもって提案し、③活用店舗の拡大によるAIの学習を深化させることで横展開を加速していく。個店最適化による店舗経営だけでなく、「お客様にとって欲しい商品が見つかる」システムをさらに進化させ、次世代の新たなCVSづくりを目指していきたい。

※このレポートは2022年11月29日に配信した「DCSオンラインカンファレンス」の講演内容をダイヤモンド・リテイルメディア流通マーケティング局がまとめたものです。