
エイチ・ツー・オー リテイリング(大阪府/荒木直也社長)傘下で食品スーパー(SM)事業を展開する関西フードマーケット(大阪府)では現在、「阪急オアシス」「イズミヤ」「関西スーパー」の3ブランドを一体運営し、組織再編と店舗フォーマットの改革を同時に進行中だ。とくに2025年度は、店舗フォーマットを再定義する実証フェーズと位置づけ、高付加価値型と価格訴求型の二軸で新たな店舗フォーマットの確立をめざす。各ブランドの信頼とスケールを生かしながら、リアル店舗の価値をいかに再構築するのか。関西フードマーケット社長で、エイチ・ツー・オーリテイリング副社長も兼任する林克弘氏に聞いた。
生活防衛が常態化価格訴求に再注力
──消費者の購買動向をどのようにとらえていますか。
林 食への消費支出は、依然としてウォレットサイズ(可処分所得)の制約を強く受けています。賃金は上昇傾向にあるものの、ウォレットサイズは拡大していないのが現状です。さらに物価高騰が拍車をかけるかたちで、消費者の生活防衛意識はいっそう強まっています。とくに関西圏では、人口減少と高齢化に加え、所得水準が比較的低い少人数世帯の増加が顕著です。
私たちとしては、こうした消費環境を踏まえながら、“お買い得であること”の価値をあらためて見つめ直し、価格と価値のバランスを重視した商品政策の強化に取り組んでいく考えです。
●1982年、阪急百貨店入社、2002年広報室長。09年エイチ・ツー・オー(H2O)リテイリング取締役執行役員。14年H2Oリテイリング取締役常務執行役員、15年同社代表取締役専務執行役員。17年同社代表取締役副社長(現任)。19年エイチ・ツー・オー食品グループ代表取締役社長(現任)。21年関西スーパーマーケット社長。22年関西フードマーケット代表取締役社長(現任)。23年イズミヤ・阪急オアシス代表取締役社長(現任)。
──エリア外の企業が関西小売市場に進出して競争環境が変わるなか、どう立ち向かおうとしていますか。
林 「選ばれる店」をつくることが最も重要だと考えています。そのためには、生活圏に根差したリアル店舗のフォーマットを、どう磨き上げていくかがカギになります。
当社は「阪急オアシス」「イズミヤ」「関西スーパー」という3つのSMブランドを擁しています。現在はこれらブランドの運営一体化と再構築を進めているところです。
それぞれが持つブランド力を生かしつつ、組織や戦略を一本化することで、より効率的かつ効果的に顧客との接点を増やしていく。それが、外部環境に対応しながら企業体としての競争力を高める基盤になると考えています。
価値と価格の二軸で店舗再構築を推進
──一体運営を推進するにあたって、店舗フォーマットの再構築にも着手しています。
林 現在、店舗フォーマットを、大きく「高付加価値型(Aタイプ)」と「価格訴求型(Cタイプ)」の2つに分類しているところです。
当初は「標準型(Bタイプ)」、いわゆる中間的なモデルも検討しましたが、現在はAとCの2つのタイプを基準に展開する方向性を固めています。ただし、AとCを基軸にしながらも、面積や立地、商圏の特性に応じて、中間寄りの「Aダッシュ」や「Cダッシュ」といった“変形モデル”も構想しています。
これに加え、限定的ではありますが、都市部出店の戦略的柱のひとつとして小型フォーマットの開発・展開も進めています。300坪未満の狭小店舗を想定しており、商品構成は即食・簡便性の高いアイテムに特化します。
総菜やベーカリーの店内製造は最小限にとどめ、セントラルキッチンやアウトパック商品の活用によって、省力化と収益性の両立を図る計画です。将来的には都市部での出店や高齢化社会への対応策として、重要な役割を果たしていくでしょう。
──「Aタイプ」と「Cタイプ」のコンセプトについて、詳しく教えてください。
林 Aタイプは品質や売場体験、接客などのレベルを総合的に高め、
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