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有力小売から続々参加!生成AIに防犯、小売企業の垣根超え協調を実践する「チームK.O」とは

「物流2024年問題」に人手不足問題、あるいはセルフレジの浸透に伴う万引きロス増加問題、上がり続ける各種コスト…… このように小売業を取り巻く環境は厳しく、経営の根幹を揺さぶる問題は山積している。もはや、企業一社で対応するには大きすぎると言えるだろう。そうしたなか企業の垣根を超えた協調と協業を推進する、有志の団体「TEAM K.O」(チームK.O)が発足。有力食品小売業が多数参加し、生成AIの勉強会やセルフレジの防犯対策、さらには複数企業による有価物と産業廃棄物のルート回収の推進まで行っている。その斬新すぎる取り組みに迫った。

有力小売業が勉強会に参加 
「TEAM K.O(チームK.O)」とは何か?

 2024年2月8日、東京都品川区にある日本マイクロソフト本社内で、「生成系 AI について 0 からの勉強会」が開催された。

 今後20~30年が AIの時代になるといわれるなか、生成 AIが小売業のビジネスをどう変えるか、具体的にどう活用できるのかを実践を通じて学んでいくこの勉強会。大手小売業を中心に17社、26名が参加した。

 主催は「チームK.O」。

 チームK.Oとは「小売業を持続可能な業界にするための競争を超えた取り組みにより、 様々な課題をK.O(Knock Out)していく」ために立ち上がった有志によるチームだ。

 2023年3月に『イオン、セブン&アイも動く!小売業に必要な非競争領域の設定と協創!「チームK」の挑戦』の記事が当オンラインで掲載され話題となったが、この小売業に必要な非競争領域の設定と協創を実践し、業界内での連帯を推進した「チームK」が多くの賛同者を得て、発展したかたちだ。

 ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(U.S.M.H)経営戦略本部 経営企画部長の北村智宏氏を中心に、パナソニックコネクトのエグゼクティブインダストリースペシャリストの大島誠(マック大島)氏、そして日本マイクロソフト インダストリーテクノロジーストラテジスト岡田義史氏らが事務局メンバーとして名を連ねる。

 チームK.Oがめざす領域は大きく以下の4つ。

Technology:「デジタルの恩恵をすべての人に」を旗印に、商品データ標準化と産業横断レジストリー構想を掲げる

Ecology:「次の時代のためにより良く」を掲げ、有価物と産業廃棄物の共同回収モデルを進める

Anshin&Anzen:「地域とお客様と従業員を護る」ためにセルフレジの商品ロス対策に取り組む

Manpower:「若者が働きたくなる業界へ」転換するために、小売業界に根強く残る「昭和マインド」を破壊し、これからの小売業の働き方、学び方を教える

 この掲げる4つの課題の頭文字をとって「TEAM」、それら課題をノックアウト(K.O)するべく「TEAM K.O」と名づけた。

 「生成系 AI について 0 からの勉強会」ではこのうち、T(テクノロジー)の領域、ひいてはより働きやすく魅力的な業界となるためのM(マンパワー)の領域の課題も解決することを目的に開催された。

生成AIの勉強会を主催、大手小売17社が参加!

「生成系 AI について 0 からの勉強会(ワークショップ)」の一コマ

 「生成系 AI について 0 からの勉強会」では日本マイクロソフトの岡田義史氏が講師を務め、座学とプロンプトをつくっての実践、ディスカッションが行われた。

 当日は、AIを知る上でまずはAIの歴史をサマリーすることから始まり、ChatGPTとは何か、どんなことに使えるのかについてのレクチャーからスタート。次に具体的にプロンプトを書いて生成AIの基礎的な使い方や実践例を学び、最後にまとめとして「具体的に生成AIを社内業務にどう組み込んでいけそうか」について、グループ・ディスカッションが行われた。

 参加する多くの小売企業では、まだ業務としては本格的な生成AIの利用ははじまっていないものの、参加者は勉強会で学んだことをいかに社内に持ち帰り、その輪を広げていくかに主眼を置いた意欲的なものだった。

 勉強会の途中では、イオンが社内で運営する「イオンデジタルアカデミー」の事例が共有された。5年前から有志で集まる社内向けのイベント「イオンDXラボ」を企画、イオングループから4000~5000人規模が集まる大規模イベントへと成長している。これもチームK.Oの北村氏がはじめた取り組みの1つである。

 社内外のデジタル化に関する取り組みや考え方を共有し、「自分事化」する場としていかに有意義かが語られると同時に、「お膳立てされるのを待たずに、有志から始める」「小さく、スピーディに始める」ことの重要性が協調された。

マイクロソフト社員による「効果的な」使い方も伝授

 その後、勉強会は、生成AIを使って精度の高いアウトプットを得るために欠かせない指示書、命令書である「プロンプト」を、参加者がレクチャーを受けながら自分で作る実践編へ突入。作る上での注意点やノウハウが説明された。

 とくに、「プロンプトは一発でうまくいくことはない」「ChatGPTと対話しながら、制約条件を詰めていくことでよりよいプロンプトになる」「ChatGPTは、プロンプトの後半部分に出てきた言葉を優先する」といった、実践的なプロンプトエンジニアリングのコツも共有された。

 このほか勉強会では、日頃から業務でChatGPTを使いこなしている、日本マイクロソフト社員の効果的な使い方も伝授された。

 実践編では仕上げとして、画像生成を行った。これまでプロに都度依頼していたものを自分たちで作成できるようになり、たとえば資料作成にかかる時間は飛躍的に減る。その効率性の高さを参加者が再認識した瞬間だった。

 最後に行われたのが、グループごとに分かれてのディスカッションだ。自分たちの業務にどんなことが生かせそうか、どこに注意すべきか、誰もが生成AIを使う時代に人間はどんな業務をすべきなのかについて、活発な議論が展開された。

 その結果、

 「仕事はAIで楽になる。そのなかで、違和感を感じて、それに対処していくことが人間の仕事になる」

 「AIが業務の大半を担うようになるなか、人間がどんな仕事をしていくかが課題になる。人間はゼロから何かを作ることをしていなければならないのでは?」

 「現場に理解してもらえるAI活用が大事。AIと協働するための能力を突き詰めなければならない」

 といった意見、気づきが各チームから出され、各人の視点が共有される貴重な機会となった。

 最後にチームK.Oからは、以下のようなメッセージが出された。

 「仕事、業界がどう変わるかを会社の垣根を超えて話せる場がつくるため、今回勉強会を企画した。次回会うときは、活動がさらに広がっていると思っている。一切資金はもらっておらず、みな持ち出しでボランティア精神だけでこのチームK.Oは回っている。小売業の課題をなんとかみんなで解決するのがチームK.Oの目的だ」と言い、チームK.Oへの参加を呼びかけ、業界を変えるために自発的に動き出すことの重要性を強調した。

 2024年3月12日~15日まで開催するリテールテックジャパンでは、このチームK.Oがなんとブースを出展している。企業ではなく有志の集まりが出展するのはおそらくリテールテックジャパン史上初のことになるだろう。また、最終日の15日はチームK.O登壇によるセミナーも開催される。

 チームK.Oは小売業界を変革するために本気なのだ。その本気度が、企業の垣根を超えた、共感と連帯の動きへとつながっている。