ツルハホールディングス(以下、ツルハ)とクスリのアオキホールディングス(以下、クスリのアオキ)に対して、アクティビストとして知られる香港の投資ファンド「オアシス・マネジメント」(以下、オアシス)から株主提案が出されています。いずれも5月決算で、前者は8月10日、後者は8月17日に株主総会が予定されています。筆者はこの動きを大いに注目して見守っています。以下にポイントをまとめたうえ、株式市場からの見方、そして今後の争点について書いていきたいと思います。
「ツルハ」と「クスリのアオキ」の共通点
株主提案の内容に触れる前に、この2社の共通点を整理します。
- ともにドラッグストア業界の上場大手
- 収益性は大手ドラッグストアの中では遜色ない(特にクスリのアオキ)
- 株価バリュエーション(株価の割高度)も業界内で平均的
- 株主構成としておよび経営者として、創業家色が強い
- イオンが株主で(ツルハに対しては約13%、
クスリのアオキに対しては約10%)資本業務提携を結んでいる - ただしイオンにとって連結対象の上場子会社であるウエルシアホールディングスや持分法適用関連会社とは異なる位置付けにある
- ともに外国人持株比率が高い(ツルハにおいて約37%、クスリのアオキに対しては約24%)
以上、この7点に集約できます。
アクティビストはどんな提案を行っているのか?
次に、アクティビストからの株主提案内容を読み解いていきます。株主提案のポイントは、「経営陣における創業家色を希薄化する」
ツルハに対しては
- 取締役会長及び取締役副会長廃止
- 取締役会議長の社外取締役からの選出
- 監査等委員である取締役1名解任(社外)
- 監査等委員である取締役3名選任(社外から)
- 取締役(監査等委員である取締役を除く)2名選任(社外から)
などが提案されています。取締役会長は現状鶴羽樹氏、代表取締役社長は鶴羽順氏の体制ですので、この提案は取締役会の運営を独立社外取締役のもとに置き、意思決定の幅を広げさせよう、業界再編に対する関与を強めさせようという意図を感じます。
ちなみに、会社側の提案が株主総会で承認されると、取締役会は11名で構成され、従来と比べて独立社外取締役を2名増員する形になります。
クスリのアオキに対しては、
- 取締役1名選任(社外)
- 筆頭独立社外取締役の選任
- 指名報酬委員会の設置
などが提案されています。クスリのアオキは現在、取締役最高顧問が青木保外志氏、代表取締役社長が青木宏憲氏、副社長が青木孝憲氏という青木一族体制にあります。この提案は独立社外取締役に権限を持たせ取締役の指名に関して一定の牽制機能をもたせようという意図を感じます。
アクティビストの狙い
会社側とアクティビスト側の応酬がまだ続いている模様ですので決着の行方は判断しかねますが、大枠で言えば株主提案は「もっとも」な内容です。
ただし、
しかし、もともと外国人持株比率が高いため、株主提案が承認され
オアシスは、仮に株主提案が承認されれば、
他方、仮に今回株主提案が承認されなくても、
気になるイオンの対応は?
リリースでの表明をどう読めばよいか
そこで気になるのがイオンの対応です。
8月1日、イオンはツルハの事案について、会社側(ツルハのこと)提案を支持するリリースを行いました。これによれば(一部抜粋すると)
- ドラッグストア業界における再編の必要性、有効性は広く認知されており、特に大手同士の再編の重要性や、地方のドラッグストアの再編の重要性は、当社も認識している
- 「誰もがヘルス&ウエルネスのサービスを等しく受けられる社会の実現」を目指しており(途中略)ドラッグストア業界における各企業間の連携、協力が一層必要となってくると思料(編集部注:思いはかること)
- これまでのツルハと当社との資本業務提携に基づく良好な関係を維持・強化し、当社とツルハとで共に社会課題を解決していくことが重要であると考えており、今後これについて、ツルハと真摯に協議を行っていきたい
と述べられています。
とはいえ、
プロフィール
椎名則夫(しいな・のりお)
都市銀行で証券運用・融資に従事したのち、
米系証券会社のリスク管理部門(株式・クレジット等)を経て、