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「オンラインバー、女性が9割」が示す、おうち時間が生んだ新たなニーズとは

コロナ禍で、店舗での接客がままならない中、“オンライン”で活路を見出した人物がいる。国際カクテル大会で優勝経験を持つバーテンダー、Three Grams代表の奥西敏宏氏(京都市中京区)だ。20212月から、「ストアカ」というプラットフォームで少人数制の「オンラインBARツアー」講座を始めた。アフターコロナに向けて、“飲みに行かなくても憧れのバー体験ができる”少人数制の本音トークが炸裂するオンライン講座だ。そんな新しい試みを始めたオンラインBARに筆者も体験取材した。

本音トークが参加者からの信頼を得る

日曜日の21時から始まった「オンラインBARツアー」は、筆者を含めて参加者は5名、筆者以外はすべて女性だった。講座は、「ストアカ」という、教えたい人と学びたい人をつなぐプラットフォームから申し込みを受け付けていて、受講料は1000円とリーズナブルだ。

 1時間半にわたったオンラインBARツアーは、京都駅前にある奥西代表が運営するバー「minibar」から生中継され、バー初心者が身につけるべきマナーや店のカウンターの中など、来店するだけでは知ることができないバーの裏側も紹介された。

お酒の注文の仕方から、ウイスキーの飲み方、種類など、バーに関する基本的な情報も満載だ。興味深かったのは、「客のバーでの立ち振る舞い方」だ。エピソードを交えながら、知ったかぶりをしない、絶対に酔いつぶれない、「私をイメージしたカクテルをください」という注文をしない、などバーテンダー目線から見た良い客、悪い客のイメージを伝えたところ、参加者からは笑い声が漏れた。

「ぶっちゃけた話をすると、本音を話した方が受講者からの受けが良い。信頼もしてもらえると感じています」(奥西氏)

『日本のバー文化の正しい姿を伝えたい』という想いが、講座を続けているモチベーションの一つだ。日本のバーシーンは、映画やTVなどで伝わるイメージと実際にはギャップがあり、「バーでは、ドライマティーニなどを格好良くオーダーするイメージがありますが、アルコール度数が高いお酒もあります。無理をせず、自分の好きなカシスオレンジやビールを注文してもいいんですよ」という。

参加者からは、「もっと色んなバーに行ってみようと思った」「お酒の頼み方を知ることができて、バーの敷居が良い意味で下がった」など、ポジティブな感想が寄せられていた。

おうち時間で生まれた「ライフスタイルを充実させたい」というニーズ

コロナ禍において、バー業界は大きなダメージを負った。奥西氏が経営するminibarでも、過去20ヶ月は、お店をフルにオープンすることもできず、また、お酒そのものを出せない時期もあった。何か新しい施策を打たなければ、と考えていたところ、オンラインBARという発想に結びつく。「日本では誰もやっていない今がチャンス」と感じたという。

 始めてみると、予想以上に集客があり、驚いたという。緊急事態宣言の発令もあり「おうち時間」を充実させるための、カクテル作りやドリンクの作り方を知りたいというニーズがあったのである。

「私のオンライン講座の受講者の9割以上が女性です。彼女たちはライフスタイルの充実を求めていて、おいしいジントニックや、ティーソーダの作り方を学びたいのです。例えば、富裕層の主婦はホームパーティーをたくさんやっています。おもてなしをしたい。友達に喜んでもらいたいんですね。だから、講座を開いて家庭で用意できるものでつくれるカクテルなどを教えています」(奥西氏)

リアル店舗への誘導効果だけでなく
サブスクビジネスのきっかけにも

2019年にシンガポールで開かれた国際大会で優勝後、奥西氏のもとには有名ホテルでのゲストバーテンダーなど様々な仕事依頼が舞い込んでいた。だが、コロナ禍でそれも延期や、中止の憂き目にあった。「タイトル(肩書き)にしがみついていてもキャリアは開けない」と思い、オンラインレッスンを始めたのだ。

「今では、始めて本当に良かったなと思っています。オンラインでの仕事は、10年後のビジネスのタネになると感じています。講座を受けてくださった方の中には、実際に私のバーに足を運んでいただいたお客さまもいて、リアル店舗への誘導にもなっています。今後、第6波が来て、再びお店を閉めなければいけない状況がきても、オンライン上での蓄積が新たなチャンスをもたらしてくれると確信しています」(奥西氏)

事実、参加者の中には、奥西氏の講座をリピート受講する人もいる。そこで、新たにサブスク型で「プロの味が誰でも作れる!ドリンク専門教室」をストアカ講座で始めた。講座中は、頻繁に質問コーナーを設けているので、専門用語などを知らないときでも受講者が置いてけぼりになることもない。奥西氏は、「オンライン講座は双方向のコミュニケーションを可能にしている点が優れている」という。

「飲食店や販売、接客の仕事をしている人たちにもオンライン講師をすることをおすすめしたいです。普段の仕事に、少しのアイデアとネットの技術的な知識があれば、新たなお客さまに出会うことができるのではないでしょうか」(奥西氏)

コロナ禍において、新たに生まれたチャンスを掴む金言である。勇気を持ってチャンスの前髪を掴んだものには道が開かれるのかもしれない。