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イオンが「トップバリュ」の”価格年内凍結”を宣言した背景

イオン(千葉県)は9月13日、同社のプライベートブランド(PB)「トップバリュ」の食料品約3000品目について、12月31日まで価格を据え置くと発表した。コロナ禍での生活防衛意識の高まりを受けたもので、全国約1万店舗を対象に実施。年末商戦を3カ月後に控えるなか、価格訴求を一段と強めることで顧客の囲い込みにつなげたい考えだ。

食品PB約3000品目の「年内価格凍結宣言」を発表

イオンがPB「トップバリュ」の食料品約3000品目について”年内価格凍結”を宣言した

 世界的な異常気象や物流・人的コストの高止まりによって、食品価格は上昇基調にある。「これまでに経験したことのないようなレベルの原材料高騰が、食料品の値上げにつながっている」――。イオン執行役商品担当の西峠泰男氏もこう明かす。

 そうしたなか、イオンは9月13日に「いまこそ!年内価格凍結宣言!」と銘打った価格施策を発表。同社のPB「トップバリュ」「トップバリュベストプライス」「トップバリュセレクト」「トップバリュグリーンアイ」として展開している食料品約3800アイテムのうち約3000アイテムについて、9月13日時点での店頭表示価格を12月31日まで据え置きし、一切の値上げを行わないとした。対象となるアイテムは加工食品や飲料が主で、生鮮食品、米、総菜、酒類、ギフト用品、規格品などは含まれない。対象店舗は「イオン」「イオンスタイル」「マックスバリュ」「ダイエー」「まいばすけっと」など全国約1万店舗に及ぶ。

 コロナ禍で景況感が悪化する中、消費者の節約志向は以前に増して高まっている。イオンは物流効率化や一括仕入れなどの取り組みによってコストを最大限抑えることで”価格凍結”を実施し、年末商戦も見据えながら顧客の囲い込みにつなげたい考えだ。

 

対象商品の一例(イオンのプレスリリースより)

 また、今回の”価格凍結”の対象品には自然派PB「トップバリュグリーンアイ」を含む、健康志向に対応した商品も含まれる。価格凍結宣言と同時に「イオンスタイル幕張新都心」(千葉県千葉市)の食品売場では対象商品を集積したコーナーを設置していたが、ここでも「オートミール」「フルーツグラノーラ」といった商品がボリューム陳列され大々的にアピールされていた。コロナ禍で消費者の健康志向がより高まっているのは周知のとおりだが、イオンはそれに関連した商品についても価格を打ち出すことで集客を図る。

「早めの仕掛け」で年末商戦に備える 

イオン執行役商品担当の西峠泰男氏

 今回の”価格凍結宣言”は、3カ月後に迫った年末商戦を見据えた戦略とも捉えられる。コロナ禍に入って2回目となる年末年始は、ワクチン接種が進んではいるものの、昨年同様に「家で過ごす」というスタイルが主流となる可能性が高い。そうしたなかで食品小売店に対する需要は今年も期待できるものの、同業間の競争はより厳しくなりそうだ。そのなかで重要な差別化ツールとなり得るのはやはり「価格」ということになる。西峠氏は「(同業他社に先んじた)早い仕掛けが必要。年末商戦を迎えるまでに、お客さまに(価格面で)安心して買物していただけるようにしたい」と語る。

 一方で、原材料の高騰というトレンドは一過性のものではなく、中長期的な経営課題でもある。今回の価格凍結に際しては仕入れ先や調達ルートの大規模な変更は行っていないが、「中長期的には見直す必要も出てくるだろう」と西峠氏。”価格凍結”はコロナ禍の消費動向を踏まえた一イベントではなく、イオンの今後の中長期的な価格戦略の布石となるかもしれない。