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オーケー、関西スーパー買収意向を正式表明  株主に求める5つの再検討項目とは?

エイチ・ツー・オーリテイリング(以下H2O、大阪府/荒木直也社長)と関西スーパーマーケット(以下、関西スーパー、兵庫県/福谷耕治社長)が経営統合を発表してから3日後。首都圏を地盤に食品スーパーを展開するオーケー(神奈川県/二宮涼太郎社長)が経営統合に対し、プレスリリースを発表。関西スーパーの第3位株主であるオーケーは、今回経営統合で反対票を投じること、またH2Oとの経営統合が撤回された場合、関西スーパーに対し、株式公開買い付け(TOB)による買収を行う意向があることを正式に発表した。

オーケーは3日、正式に関西スーパーのTOBによる買収を行う方針を発表した

 9月3日、オーケーは同社ホームページ上で「株式会社関西スーパーマーケットによる エイチ・ツー・オー リテイリンググループとの経営統合等に関するプレスリリース」と題した報道機関向け資料を公開した。

 この3日前に当たる8月31日、関西スーパーは資本業務提携関係にあるH2Oと経営統合すると発表しており、これに対してオーケーが待ったをかけたかたちだ。同社は関西スーパー株主の賛同を得ることを通じて、H2Oと関西スーパーの経営統合を阻止し、関西スーパーの買収を通じて関西エリアへの進出を図りたい考えだ。

オーケーは3日、ホームページ上で本経営統合に関する報道機関向け資料を公開した

 オーケーが公開した資料には、本件に関するオーケーの一連の行動と今後の意向が計9ページにわたって詳細に記されている。

 オーケーは、関西スーパー株式の7.69%を有する大株主だ。本買収に関してすでにさまざまな報道がされるなか、10月29日に実施される臨時株主総会を前に、オーケー側からも公式に情報を発信し、関西スーパーの株主の判断を仰ぐ。

 本資料によるとオーケーは、H2Oと関西スーパーが経営統合を発表する以前の21年6月から、関西スーパーに対して、同社の上場来最高値(1992 年2月 10 日)と同値である1株当たり2250 円で上限なしという条件で、TOBを実施する提案を行ってきたという。

 しかし、関西スーパーから実質的な協議の場は設けられず、「株主利益の最大化」という観点から公正な比較検討がきちんとなされたのか、オーケーが疑問を呈している。

関西スーパーが求める
関西圏での規模のメリット

 あらためてH2Oと関西スーパーが発表した経営統合案を見ると、関西スーパーは、H2Oとの株式交換、吸収分割を通じ、すでにH2O傘下にある阪急オアシス(大阪府/永田靖人社長)、イズミヤ(大阪府/梅本友之社長)とともにH2Oの100%子会社となる。
 
 関西スーパーの21年3月期の営業収益は1309億円で、64店舗を展開。H2O傘下の2社を合わせると、店舗数243店、4000億円(前期決算売上高の合算)以上の規模となり、食品スーパー業界の雄であるライフコーポレーションの近畿圏(店舗数158店、売上高3758億円)を超える。

経営統合を発表するH2O荒木社長と関西スーパー福谷社長

 統合後の経営体制については、基本的に関西スーパーの役員がこれまでと同様の地位に就く方針だ。店舗運営は、H2O傘下の3社それぞれのブランドや特色を残したかたちで行う一方、物流や商品の調達・開発などでは連携を進める。

 小売業界に詳しいアナリストによると「『コスモス薬品』をはじめ食品強化型のドラッグストアの侵攻も激しく、関西エリアでは低価格競争が熾烈を極めている。そうしたなか今回の経営統合により、規模のメリットを享受したいのが関西スーパーの大きなねらいの1つ」と話す。

オーケーは株主視点での
経営統合の再検討を要求

 一方のオーケー側の提案では、TOBが実現されれば、関西スーパーを完全子会社化する。経営方針についてはオーケーが掲げる「高品質・Everyday Low Price」を導入していく考えだ。

 オーケーは冒頭の公開資料内で、関西スーパーとH2Oの株式交換取引と、オーケーによるTOBの提案について、あらためて比較検討を求める以下の5つの項目をあげている。

1.  オーケーの提案により、関西スーパー全株主に交付される現金対価と、本株式交換取引による関西スーパーの理論株式価値により少数株主が享受できる価値との比較が具体的にどうなされたのか
2. 本株式交換取引では、シナジーの実現リスクを関西スーパーの少数株主が負うこと
3.  関西スーパーの理論株式価値にいわゆるコントロールプレミアムが含まれているか否か
4.  本株式交換取引による大規模な希薄化がもたらす少数株主への影響
5. その他本株式交換取引による少数株主への潜在的な影響
 
 たとえば、4について解説すると、本経営統合はH2O傘下の イズミヤ、阪急オアシスとの株式交換方式によるもので、関西スーパーが新株または自己株式を割り当てるものとしている。しかしそれによって議決権比率の大規模希薄化が生じ、関西スーパーの少数株主の株式所有割合が低下してしまうことなどをオーケーは指摘している。

 前出のアナリストは「関西スーパーとH2Oの経営統合案は、あくまで経営陣のメリットの側面が多く、株主にとっては今回のオーケー側の提案が魅力的に映る可能性もある」と話す。

 今後オーケーは、10月29日開催予定の関西スーパーの臨時株主総会において、反対票を投じる予定。そしてH2Oと関西スーパーの経営統合が否決されれば、TOBを提案する意向があるとしている。ただし関西スーパーに対し敵対的なTOBを行うつもりはないとしている。

 関西スーパーの福谷社長は31日の会見で、「大株主にはオーケーさんなどがあって、賛同を集める勝算はどれだけあるのか教えて欲しい」という記者からの質問に対し、「今回の経営統合により、関西スーパー、イズミヤ、阪急オアシス、あわせて4000億円の企業規模になる。これは株主さまにとって最大のメリットになると思っている。今回の統合によって、株主さまから確実にご理解いただけると考えている」と答えている。

 臨時株主総会の場で、H2Oと関西スーパーは、オーケーからの「1株当たり2250円」を上回るリターンを提供できる成長ストーリーを提示し、株主を説得することができるか、業界中の視線が注がれている。