激しく移り変わる世の中。いま、最も速いスピードで変革を求められている産業の一つがファッション・アパレル業界だ。アパレルを含めた流通小売業界は、国民の総人口の実に16%が従事する巨大産業だが、その生産性の低さは折り紙付きだからである。
本連載も3年目に突入し、書いた原稿の本数は100本を超えた。私は、いくつかの論点を整理しその時々で必要な話を書き綴ってきたつもりだったが、それらが断片的であったため、一部から「不整合を起こしているように見える」「全体感が見えにくい」というお叱りも受けた。本日の論考は、こうした疑問にお答えするべく、まずは大局を示すべく、「2030年のアパレルの世界」へと、みなさんをお連れしたいと思う。そこでは13の大きな変化が起こるのではと考えている。なお、
落ちる日本の国際地位と変わる産業界
まずは時代認識から始めたい。日本の人口は減り続け、国民の実質所得はOECD(経済協力開発機構加盟国)の中で最も低い。国民は衣料品にお金を使わない。AppleのiPhoneは中国語対応を優先し、日本語対応は常に後回しだ。日本が世界の檜舞台に出てこないことはあきらかであり、プレイヤーは既に入れ替わっている。変わっていないのは教科書だけだ。
若い人に「服をどこで買っているのですか」と聞くと、通販ならZOZO、お店ならパルコやルミネなどの駅ビル、ファッションビルで、ZARA、H&Mについでは中韓のファストファッションブランドが続く。最近では、韓国や中国のアパレルも日本市場で事業展開しており、スマホでなんの違和感なく韓国、中国のデザイン服を1000円以下で買う時代なのだ。
企業数が半減した2030年のアパレル業界
こうした中、2030年までに、売上世界一を達成するであろうファーストリテイリング(現在、売上は世界三位)と、世界でその世界観を高く評価されている無印良品、そして、わずかに残った数社のセレクトショップと大構造改革に成功した少数の企業以外は、新型コロナウイルスの打撃から立ち直れず、窮地に陥っているようだ。
結果、金融機関とファンド主導で、似たようなブランドは統合されてゆく。2030年までには事業所の数は統廃合の結果半分程度となり、
現在コロナ禍でもしっかり収益化しているユニクロ、g.u.、しまむらなどは、消費者にとって上代価格が安い。しかし、世界に目を向ければ、彼らの価格の方が世界基準に近い。日本で10兆円とも言われる市場規模を形成している消費者の多くが女性で、彼女たちの使えるお金も減ってゆき、企業は生き残りのために、色々な方法を考える。大きく数が減少したアパレルは、3つのビジネスモデルに分かれることになる。
①中古品市場拡大、新製品は受注生産で少数の富裕層むけに
まず、SDGsやサステイナブル経済への移行から、企業は商品を【作る】のでなく、消費者から【買い上げる】ようになり、それを世界一の補正技術で補修、再プレスして再販。多くの日本人は、ごく一部の富裕層を除き中古品を着るが、それらは新製品と全く遜色ない。アパレル企業は、今まで新商品を作ってはセールで見切り売りを繰り返し、赤字に陥ってきたがもう限界だろう。
また、SDGsの観点からも社会がそれを許さなくなり、ゴミとして破棄される繊維製品をブランドが責任をもって買い上げる制度を国が導入し、企業は衣料品の生産活動を大きく縮小。すばらしく綺麗な中古品の再販をする。これは、クルマの中古車市場をイメージすればよく分かる。綺麗に整備された中古車の中には、むしろプレミアムがつくものある。
また、稼働率を高めなければ、そもそも存在し得ない川上合繊メーカの方々は、非衣料分野に成長を見いだすことが可能だ。非衣料分野の繊維市場は世界的に伸びており、私は、先日、外国人向け衛星放送でドイツ経済学者と日本の繊維技術の将来について討議したときも非衣料繊維の可能性と、将来の「固物」=something hard は、ほぼすべて丈夫で軽い繊維に置き換わる可能性があるという点で一致した。
②サブスク型衣料品の拡大
いくら使えるお金が少なくても、女性が魅力的でありたいという気持ちは衰えないし、最近では、そこに男女比は少なくなっている。そして、ニーズがある限り、そこには工夫が生まれビジネスが発生する。貧しくなった日本の消費者達は、着回しがきいて長持ちする服はユニクロなどで購買しクローゼットに入れ、ハレの場の服はレンタルとなる
③共通機能の共有化、合併による巨大プラットフォームの出現
ユニクロが圧倒的コスパで、あれだけの高品質商品を低価格で作れるのは2兆円という巨大な売上があるからだ。日本ではユニクロ以外のブランドは、どれだけ大きくても200億円が天井で、1000億円の企業と言っても、10も20も小さいブランドの集合体であるのが実態だ。例えば、ユニクロでなくとも、g.u.は約2500億円程度。ブランド規模が違う。
しかし、10年後、若くて柔軟な発想ができる商社かアパレルが業態を変え、デジタル技術を正しく活用し、我田引水型戦略でなく、バリューチェーン全体を巻き込み、チェーン全体で話し合い、誰がどこに投資を行って、どのようにリスクとプロフィットシェアをするかを合意形成し、場合によってはリスクマネーも呼び込みながら、SoftBankやセブン&アイ・ホールディングスのように、巨大な資金を集め産業改革を行い、世界中の工場や素材メーカが同一素材や工場を同一マスターにまとめるようになる。いわゆる、デジタルSPAだ。
これまでアパレル企業は世界の企業と戦わず、日本だけで仕事をしてきた。世界に出て行き、何度失敗を繰り返しても世界化をなし遂げたのはファーストリテイリングと無印良品だけだった。経済は国境を越え、競争は世界戦になることは昔からわかっていたのに、常に将来を正しく予想し、チャレンジを繰り返してきた企業とそうでない企業の差が10年後にはハッキリでる。
「ユニクロネタ切れ」の噂がネット上を流れているが、あれだけの企業がネタをその場対応でつくっているはずがない。すでに、仕組み化されているのだ。アジアの混乱、そして、米中綿花の代理戦争が落ち着けば、成長を取り込める同社のポジションはますます強固になる。勝ち組を茶化す前に、まずは学ぶところを見定めるべきだと思う。
次に、企業はどうなるか、考察をしていきたい。
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企業の変化①すべての企業がネット通販になる
新型コロナウイルスによる「巣ごもり消費」もあり、企業売上はインターネット購買が増加。今ではどの企業も「EC化率50%を目指す」という。なぜ、企業はネット取引を増やそうとしているのか。それは、女性の社会進出により、平日、日中のお買い物客がほとんどいなくなったこと。そして、その結果、実際の購買は夜が中心になっているからだ。
ますます進む小売価格のデフレ化とアパレル不況により、リアル店舗では収益が出ない。百貨店の家賃見合いは30%相当、また、SC家賃は固定費ゆえ企業規模によって異なるが、20%程度が一般的だ。ここに、販売員などの人件費や在庫費用を加え、乱発されるクーポン値引きを加えればリアル店舗ではほとんど利益はでない。そんな店舗を山のように出店している企業に未来はない。完全に世の中の流れを読み違えている。
もちろん、ECも自社化にあたるシステム投資と顧客獲得(CPA)に、恐ろしいほどのコストがかかるが、ブランドがしっかりしていれば、LTV(生涯価値)により初期投資コストの回収は可能だ。加えて、ECであるメリットは、北海道でも九州でも、そして、海外でも企業側にとっての在庫や運営管理がシンプルになり生産性もあがる。
10年後、アパレル企業は、経営者が数人、そして、クリエーターと呼ばれる企画をする人、そして、AIなどハイテク技術をメンテするエンジニアがいれば、1000億のビジネスを今の半分以下の人員で回すことも可能だろう。企業というのは、足し算は得意でコストはどんどん増えてゆくが、一度増えたコストを削る引き算は苦手だ。むしろ、スタートアップがデジタル技術を使って頭角を現すだろう。
企業の変化②リアル店舗は体験価値を提供
アパレル企業は、【体験場】、【決済場】、【受け取り場】に消費者起点で機能分類され、従来の商品軸やビジネスモデルの分類学は無意味となる。最近では、私はSPAとは何を指すのか、OMOとオムニチャネルにひび割れ程度の差しかないようなところをほじくりあげて語ることに意味を見いだせない。まさに、木を見て森をみない悪癖が襲っている。
【体験場】とはリアル店舗で、すでに、丸井やオンワードが表明しているよう「商品を売る場」から、「ブランドの世界観を体験する場」に変わってゆく。いわゆる「売らない店舗」が増えるし、これからのスタンダードになる。
「売らない店舗」は、広告塔の役割を果たし、各エリアの一等地にだけ存在する。また、すでに採算がとれないリアル店舗数は圧倒的に少なくなり、人口の少ないエリアにはVR(仮想現実)技術を使い、プレステ5では当たり前の仮想空間の中で、好きな場所、好きな時間に、AIによる仮想販売員が人間の代わりをしながら接客する。ネットではプッシュ型営業である接客がないという課題もこうして解決される。
決済はすべてスマホ経由となり、衣料品の中に仕込まれたRFIDというチップによって、自動的にクレジットカード決済される。クレジットカードを持てない人は、デビットカードから引き落とされ、完全キャッシュレス社会となる。
商品配送は、都内であれば遅くとも翌日に届き、地方でも最大3日もあれば十分。コンビニや郵便局が【受け取り場】となり、再配達と積載率の問題は解決される。緊急の場合は、雨の日はクルマの自動運転、晴れている日はドローンによる空輸配達も可能だ。このように、様々な技術を使って物流も無人化されてゆく。
企業の変化③進む受注生産による破棄ロスゼロ
今、アパレル産業は世界第2位の環境破壊産業と批判されているが、その原因となっているのが過剰在庫だ。過剰生産による過剰在庫を撲滅する最良の方法は、JIT (JUST IN TIME)による受注生産である。今、スーツやニットでは、徐々にこの技術が広まりつつあるが、カットソーもプリント技術の進化により受注生産はすでに可能であり、今年の始め、私はイメージマジックという工場に見学に行った。実は、LVMHグループなど、トップメゾンは、彼ら日本の技術を使っている。それらの技術はほとんど日本が持っているのだ。ユニクロがMade in Tokyoを静かに立ち上げたのは、SDGs対応によるトレーサビリティ(生産工程の見える化)もあるが、こうした背景は無視できない。
企業の変化④ 大企業は一部が残り、個人や小企業が台頭
大企業は機能不全に陥っている。企業内部では、組織が細分化され極端にリスクを嫌う風土ができあがってる。結果、大企業の中で個人プレイは厳しく取り締まられ、多くが合議制できめられる。合議制というのは大きなミスは起きないが、面白い企画は「事例、先例がない」といって切り捨てられてゆく。
こうした現状に、丸井や神戸の名門アパレルのワールドは、おもしろい企画をもった小集団にデジタル技術を駆使し、製造工場と企画をダイレクトにつなぎ、消費者にダイレクトにEC販売をさせる【D2C】というスタートアップへの投資事業に軸足を移している。
自らの限界値を見定めた、また、将来の見識を読んだ、極めて正しい判断だと思う。自分たちがイノベーションを起こしにくいなら、起こせる個人や企業を支援しよう、ということだ。発想を考えれば、マネタイズポイントは無限に存在する。結果、日本のアパレル企業は、工場直販、いわゆるD2Cスタートアップが増える。彼ら、彼女らは、Netflixで度肝を抜いた「全裸監督」のような、エリートには絶対にできない企画をどんどんつくるだろう。私は、未来のイノベーションが楽しみだ。
このように、企業の中から人が少なくなり、バリューチェーンは短縮化され、多くをロボットやAIがこなす。もはや人件費の安い国でアパレル商品を作る必要はない。こうして、人権問題も解決されるわけだ。こうした技術的背景をもっと世界にアピールしてゆけば、日本の衣料品の未来は明るい。
最後に、私たち消費者は10年後、どう変わるのだろうか?3つの変化を解説したい。
消費者の変化①お財布は全てスマホに変わる
私たちが普段外出時に持ち歩くものはスマホだ。今、バスに乗っても電車に乗っても、乗車員は皆スマホを見ている。お財布は忘れてもスマホだけは絶対に忘れなければ、都内であれば一日生活することはなんら問題ない。
企業のプロパー消化率が下がったのは、マーケット・クラスタリングが、我々おじさん世代には理解できない切り方と数に細分化されたからだ。消費者は夜のサークル活動もスマホでやる。会社で孤立しても、ネットの世界では共通の趣味を持った人が集まるSNSで会話を楽しめる。もちろん問題もあるが、お互いが住所を交換し合ったり、実際に会うような約束をする会話が見つけたらAIが注意勧告し、自動的にあらかじめ登録した第三者に許可を得るように会話内容を自動転送する仕組みで防げるだろう。
いわゆるZ世代(1980年代から2000年代に生まれた世代。生まれた時からデジタル機器が生活に溶け込みパソコンよりもスマホを使いこなす)の10年後、ファッションの中心購買層は、彼ら、彼女たちだ。
Appleの有名なCM、「What’s PC ?」は、私が大好きなCMで、いまどき、デジタルだリアルだ、オムニチャネルだOMOだと、何をいっているのか専門家の私でさえ理解できない単語で煙に巻いている評論家ほど、グレイヘアばかりだ。私は、そうした会議に幾度も参加したが、横文字が多いのは、若い世代でなく高齢者世代である。デジタルは若い世代の生活の中に既に入り込みそこに境界線などない。
消費者の変化②お買い物は好きな時、好きな場所、好きな時間で
10年後、物理的なリアル店舗は、そのブランドを象徴する広告塔となり、人々が目につく街の一頭地のショールームとなる。
さて、広告塔であるリアル店舗に入ってみよう。1階は新作で、すべて5日以内に自動生産されるパーソナルオーダー・フロア、そして、2階は補修を行なった「訳あり商品」が並び、地下は綺麗に新品と違わぬほど綺麗に補修された型落ち品が展示されている「体験場」だ。この時代、もはや「値引きセール」という日本の風物詩はない。というより、必要ないのだ。新作は全て5日以内に私たちの自宅に運んでくれる唯一品の定価販売だからである。
2階や地下は、そのブランドが扱っている商品を、ブランド保証タグをつけ、定価の半額から70%程度で再販されている。安く良いものを買いたい人は、そこで「訳あり商品」を買う。「訳あり」でも、すでに補正と再プレスしているのだから新商品と何ら違わないことはいうまでもない。3階に行けば、そのブランドの買取りセンターがあり、巨大な箱に古くなった衣料品を放り込めば、その会社で買ったブランドかどうかAIが判断し、程度に応じて値付けをし、定価の30%程度で買取してくれる。自動販売機の逆バージョンだ。
結果、消費者は、リセールを気にし服を大事に着て、できるだけ高く買ってもらえるよう大事に着るだろう。こうして服のメンテナンスグッズも売れるようになる。
冠婚葬祭やパーティーなど、年に数度もない「ハレの日向け衣料品」は、ブランドからレンタルする。服を毎回取り替えたいファッショニスタ、あるいは、自分でファッションなど選ぶのが面倒な人は「サブスク」を利用し定額料金をブランドに払えば、次々と似合う服をAIがコーディネートし送ってくる。
もし一回だけ利用したい人も大丈夫だ。レンタルを利用すればよい。これらはすべてクルマ業界では当たり前。2030年ようやく日本でも衣料品に受注生産、二次流通市場、レンタルとサブスクを消費者が選び服を着る時代が来る。真の循環経済社会の到来だ。
さて、圧倒的に店が少なくなった日本社会で、地方の人達はどうするか。心配はご無用だ。
冒頭に述べたよう、彼ら、彼女たちはVR をセットし、全くリアル店舗と違わない体験ができるようになる。お買い物はすべてスマホによるウエブ決済となるため、好きなブランドに登録しておけば自分の趣味・嗜好をAIが学習し、例えば「来週、パーティーがあるのだけど、いくつかパーティー用のドレスを選んで」とスマホに話しかければ、ブランドサイトが過去の購買履歴を分析し。「暖かくなってきたので、こんなお洋服はいかがでしょうか?」といくつかのご提案をしてくれる。
購買するのか、補修品を買うのか、レンタルするのか選び、もし急いでいれば、「今日中にもってきてくだい」とボタンをおすと、決められた時間に雨の日は無人自動車が、晴れている日はドローンが洋服を運んでくれるのも述べたとおりだ。いくつかの服を実際に自宅で着て、返却分はドローンに渡す。その中から「今回は買っちゃおう」と「購買ボタン」を押し、服を買うことも可能だ。もちろん、お昼にお仕事にいっている場合は、近くのコンビニ、あるいは、郵便局などに置いておき、デジタル証明書を見せて商品が受け取れる。
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消費者の変化③最新トレンドは個人が発信
2030年、消費者は企業側から発信される「これが流行ります」という宣伝文句に辟易し、iPhoneにも企業広告は載せられない機能がデフォルトとなる。それ以上に、消費者はSNS上の仮想空間で繋がり、同一価値観を持つグループで繋がり、趣味を語り、あれがいいね、これは似合わないよね、と自分たちの価値観に最も合う等身大のファッションリーダーをSNSで見つけ、企業が作り上げたアイドルは支持されなくなってくる。
瞬間的な映像や画像が好きな女子はインスタやTikTokを、理屈好きな男子はYouTubeを、そして、高齢者は自分たちの日記をFacebookにあげるなど、乱立するSNSも使い分けの時代が来るし、もっと斬新なSNSも生まれるだろう。我々年配組は「ついて行けない」と思うかもしれないが、若者は「もっとおもしろいアプリはないのか」と、逆に新しい技術を待っている。
企業側は消費者の多様な価値観をうまく吸い上げ、自分たちのブランドの味付けを加えることで、服の提案をし、新品であれば受注生産、標準的な体形であればブランドが品質保証した中古品を提案するなど、お財布事情にあう商品提案をする。
弱り切った日本市場にAmazonが本格投資を開始か
水面下でAmazonがファッション事業に激震を与えるだろう。無敵のデジタル企業、投資規模の桁が違い、米国で数々のアパレルを死に葬り去ったAmazonが、日本のアパレル市場で大した存在感を見せないまま消えてゆくはずがない。弱り切った経済とアパレル不況、そして、通販に吹いている追い風などを背景に、Amazonが世界第3位のファッション消費国である日本市場に一気に大量の資金投下をしてくることは想像に難くない。
ましてや、今は、あの無敵のファーストリテイリングでさえ、ウイグル問題による米国での販売禁止、柳井氏の後継者問題、そして、秘蔵っ子だった堂前宣夫氏の良品計画社長就任や、減速感のある販売実績など、変化の時を迎えている。ほとんどのアパレルの苦境は言うに及ばずだ。ここにAmazonが空中戦を本格化してきたら、そして、その戦略が正しければ日本のアパレル産業はひとたまりもないだろう。今、私がもっとも注目しているのはAmazon fashionである。
さて、私たちの大好きなファッションは、こうして、手軽に手に入れられるようになり、そして、ファッション業界は、日本の技術によって、もっとも環境に優しい優等生産業になり、日本は世界一おしゃれでお買い物上手なアジアのファッションリーダーとなる。最後に、今アパレル業界に求められているのは、こうした生活の提案力である。そして、技術というのは、こうした生活提案を実現化するための手段に過ぎない。部分的な技術を導入した、どのような素材を開発したなど、消費者にとって関係の無い話だ。
企業は、すべての活動を消費者へのライフスタイル提案に集中させること。ここから全てがはじまる。
プロフィール
河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)