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嫌われる大豆食品、乳製品代替商品に「ミルク」の表記は使えない!?覚えておきたい世界食トレンド2021 

25年以上にわたって、食品業界に特化したトレンドリサーチの世界的リーディングカンパニーであるINNOVA  MARKET  INSIGHTS(オランダ)。同社が発表する食のトレンドは、世界でいちばん精度が高いものとして定評がある。

「第24回ファベックス2021」の会場においても、同社による「TOP TEN TRENDS 2021」が展示されていた。前回のファベックス(2019年)でも2019年版のトレンドが提示されていたが、この3年で、世界的な食のトレンドにどのような変化が見られたのか、共通するものは何か、そして2021年のトレンドは何か、まとめた。

YelenaYemchuk/istock

2019年~21年までの食のトレンド

 この3年間のトップ10トレンドをまとめると以下のようになる。

食のトレンドトップ10 3年の推移

 2021年をベースに過去のトレンドを遡ってみると、21年のTOP3の内容(TransparencyPlant DiversityTailor Made)は、表現は違っていても、いずれも19年、20年のトップ10トレンドに含まれていたものだ。

 この点から、サステナブルやサプライチェーンにおけるクリーンさ、植物性由来食品や代替食品、自分流や自分にぴったり、といったことが、ここ数年の大きなトレンドになっているのがよくわかる。加えて、19年と比較して、それぞれの意味する内容が多様化していたり、他のトレンドを飲み込むかたちでより幅広い内容を含むようになっていたり、進化のあとがよくわかる。

「オーツ麦ミルク」の表記がNGの理由

 それでは21年の主だったトレンドについて、INNOVA日本カントリーマネージャーの田中良介氏のコメントをもとに見ていくことにしよう。

 トップ1の「Transparency triumphs(すべてにおいて透明性)」だが、産地情報やサステナブルの取り組みなど、すべてにおいて透明であることが、消費者からの信頼を獲得し、ブランド価値を高めることにつながるということだ。

 原産地や製法について、消費者にクリアに伝えることが求められるが、これらをデータとして単に消費者に伝えるだけでなく、意味のあるストーリーで語ることがポイントになる。また、地球、人、動物に対するエシカル面のウエートが大きくなってきているのもいまの時代の特徴だ。

 続いてトップ2の「Plant Diversity(プラント・ダイバーシティ)」は、プラントベース食品(植物由来原料から作られた食品)があらゆるカテゴリーや地域に広がり、多様なかたちで進化を続けているということだ。この先、スナック、ドリンク、ミールキット、チーズ、魚製品など、プラントベースの応用範囲が一段と拡大すると考えられる。細胞を培養して肉や乳製品を作る技術においては、食品革命にもつながるイノベーションだ。

 いま、このプラントベース食品について、海外で騒がしい話題になっていることがある。

 ひとつは、プラントベース食品を紹介するときの表記についてだ。乳製品業界とプラントベース推進派との間で論争が起こっているのだが、たとえば「この植物性ヨーグルトはクリーミーで濃厚なミルクのよう!」という表記がNGになるかもしれない情勢なのだ。

 ヨーロッパではすでに、プラントベース食品に「ミルク」や「ヨーグルト」といった文言を使うことは、すでに禁止されている。そのため、以前なら「オーツ麦ミルク」で通用していたものが、「オーツ麦ドリンク」といった表現に変更されている。

大豆が嫌われる?ソイフリーの動きとは?

 もうひとつが「Soy-Free(ソイフリー)」への動きだ。

 日本には、豆腐、納豆、みそなど、大豆を主原料とする、長い歴史に培われたプラントベース食品が数多く存在する。

 ところがいま欧米では、「アレルゲンになりうる」、「遺伝子組み換えが多い」、「サステナブルとは言えないケースがある」、「家畜飼料のイメージ」、「ホルモンバランスを乱す?みたいな噂」といった理由から、大豆が嫌われ始めているという。

 田中氏は「Soy-freeトレンドが大豆文化の日本に入ってくることはないが、海外で大豆を避ける人が増えれば、大豆に代わるプラントベース原料の開発が促進される。そしてそれが巡り巡って日本の食産業に影響を与えることになる」と、日本の食品企業に注意を喚起している。

 テクノロジーを使った食品はナチュラルなのか?

 トップ3は「Tailor-made(よりテイラーメイドへ)」だ。

 自分のライフスタイルにぴったりの食を求める傾向が高まっており、とくにプロテイン、ビタミン、プロバイオティクスなどパーソナライズド・ニュートリション(個々人に適した栄養素)に注目が集まっている。

 たとえばプロテイン1つ取ってみても、動物性タンパクのアミノ酸バランスを重要視する人、植物性タンパクのサステナブル観点に着目する人、または各原料のいいとこ取りハイブリッド型を好む人など、さまざまだ。食品企業には、こうした多様化したニーズを読み取り、細かく対応することが期待されている。

 トップ3以外で、気になったものをあげておくと、トップ6の「Nutrition Technology(栄養テクノロジー)」、トップ9の「Modern Nostalgia(モダン・ノスタルジア)」がある。

 Nutrition Technologyについては、「最先端テクノロジーを駆使して作られた食品は果たしてナチュラルと言えるのだろうか?」という疑念が消費者から生まれている。しかしながら、世界の半数以上の消費者が「自分に最適な栄養や食事を摂取するために、ナチュラルさを妥協しても致し方ない」と答えてもいる。今後、食品企業は最新テクノロジーを大いに活用する一方で、ナチュラルとの最適バランスを見いだす必要がある、ということだ。

 Modern Nostalgiaは、ノスタルジア(ローカルや伝統)を外部の視点をもって再発見・再構築し、モダンな価値を創出することがグローバル消費者を魅了する、ということだ。

この点については、米国のMoshihttps://www.drinkmoshi.com/)というブランドで発売されたユズジソジュースが参考になる。ユズもシソも日本発の原料だが、この会社は、さらにリンゴと掛け合わせたスパークリング仕立てにしている。しかも赤シソを「チャーミングなピンク色を醸し出す、赤色のハーブ」と紹介している。

「日本人からすると、赤シソの伝統的なイメージと異なるが、これこそがモダン・ノスタルジアの典型的な商品開発パターンだ」(田中氏)

 

 INNOVA MARKET INSIGHTSでは、随時、食のトレンドに関する情報を発信している。「TOP TEN TRENDS 2021」の詳細も、https://www.innovamarketinsights.com/などを通じて公開された。また、田中氏により、世界の食品トレンドをフォローアップしたメルマガも配信されている。https://55auto.biz/innovami-japan/registp.php?pid=1