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「SMの基礎力」を向上させ半径1kmのシェアアップに全力投球=ライフ 岩崎 高治 社長

食品スーパー(SM)大手のライフコーポレーション(大阪府:以下、ライフ)は、「3つの風土改革」と半径1㎞のシェア拡大を重点施策に掲げた第五次中期3カ年計画(第五次中計)の2年目を終えた。これまでの進捗状況と最終年度の方針、そして第六次中計の構想について、岩崎高治社長に聞いた。

2016年度はチャレンジングな1年

いわさき・たかはる●1966年生まれ。89年3月、慶應義塾大学経済学部卒業。同年、三菱商事入社。99年、ライフコーポレーション入社、営業総本部長補佐、取締役。2001年、首都圏事業本部長、専務取締役。06年、代表取締役社長兼COO(最高執行責任者)就任。

──2016年度をどう振り返りますか。

岩崎 16年度を総括すると、いろいろと新しい取り組みにチャレンジした1年だったと言えます。

 まず、16年6月にはナチュラル&オーガニック商品の品揃えを強化した新フォーマットの店舗「ビオラル靭店」を大阪府大阪市に開業しました。8月には自社オリジナル電子マネー「LaCuCa(ラクカ)」を全店舗で導入したほか、50億円を投じ、埼玉県内に鮮魚・農産のプロセスセンター(PC)を開設しました。

 また、「ララピー」というライフのマスコットキャラクターも誕生しました。多くのお客さまから人気を集めているだけでなく、従業員のロイヤルティ向上にもつながるなど、想像以上の効果があがっています。

──そうしたなかで、17年2月期の単体売上高は対前期比3.6%増の6527億円となりました。この業績についてはどう評価しますか。

16年6月に開業した「ビオラル靭店」。ナチュラル&オーガニックの品揃えを強化した新しいフォーマットの店舗だ
16年8月、自社発行の電子マネー機能付きポイントカードの「LaCuCa(ラクカ)」を導入した

岩崎 業績面では順風満帆というわけにはいきませんでした。とくに8月と9月については、天候不順や前年の地域振興券発行の反動などが影響して売上が大きく落ち込みました。その後、年末商戦は善戦したことで、なんとか最低限の結果は残せたかなと思っています。

 既存店売上高については、16年度は同0.8%増と微増にとどまりました。4期連続で前年実績を上回ったものの、14年度の同4.3%増、15年度の同4.5%増と比較すると、伸び率は大きく鈍化しています。

──とはいえここ数年、業績は大きく落ち込むことなく順調に推移しています。その要因は何でしょうか。

岩崎 既存店の改装も積極的に進めていますし、新しいMD(商品政策)もどんどん投入しています。それに加えて、販促の強化やPC・物流への投資も行っています。そうした取り組みの積み重ねが、結果として表れているのではないでしょうか。また、日本のSM業界全体を見ても、業績が大きく落ち込んでいる企業は少なく、外部環境もそれほど悪くないと考えています。

1㎞圏内のシェアを1%でも上げる!

──16年度は、第五次中期3カ年計画(以下、第五次中計)の2年目にあたる年でもありました。中計の進捗はいかがでしょうか。

岩崎 第五次中計では、「お客様の立場で考え行動する会社」「多様な人財を活かす会社」「規律とチームワークのある会社」をめざした「3つの風土改革」を進め、半径1㎞圏内のシェアを徹底的に上げていくことを最重要課題として進めています。

 現状、店舗から半径1㎞圏内における当社のシェアは10%ほどしかありません。つまり、100の需要があるとしたら、10の需要にしか対応できていないということです。その比率を1%でも上げることができれば、全体の売上は10%上がると考えています。

 それを実現するためにとくに重視しているのが、「3つの風土改革」のうちの「お客様の立場で考え行動する」ということです。

 小売業であれば、お客さまの立場で考えるのは当然のことでしょう。しかし、実際に行動が伴っているかというと、そうとは言い切れない部分があります。お客さまの需要が多様化しているなかで、無意識のうちにお客さまにとって不都合なことや、必要のないことをしていないか。それをあらためて見直すために、お客さまの声に耳を傾けることに力を注いでいます。

──具体的には、どのようなプロセスで顧客の声や意見を抽出し、分析しているのですか。

岩崎 約2年前に、マーケティングのプロジェクトを立ち上げました。そのなかで、座談会を開いて日頃当社をご利用いただいているお客さまの意見を直接伺ったり、インターネット上で約5万人を対象にしたアンケートを行ったりしています。

 また、三菱商事(東京都/垣内威彦社長)や三菱食品(同/森山透社長)などと連携しながら、ID-POSデータの分析も進めています。以前は売上が落ちたりすると、価格訴求の強化やポイント還元など、その場しのぎの施策に走ることも少なくありませんでした。しかし、ID-POSデータを社内で活用できるようになったことで、より精度の高い対策が講じられるようになりました。

第五次中計最終年度3つの戦略

──さて、17年度は第五次中計最後の年となります。どのようなことに取り組んでいきますか。

岩崎 最終年度ですので、今からまったく新しいことに取り組むつもりはありません。第五次中計で掲げたことをしっかりやり遂げるのみです。

 具体的な戦略としては3つあって、まず1つめはSMの基礎力を上げるということです。人手不足の問題もあって、朝の開店時や夕方のピーク時に商品がしっかりと並んでいなかったり、あるいはお客さまの需要にマッチした品揃えになっていなかったりするケースが依然としてあるのも事実です。基本に立ち返り、まずは魅力ある売場をしっかりと構築するということに取り組んでいきます。

 2つめはカード戦略の強化です。まず、18年3月末までに旧ポイントカードをすべて「ラクカ」に切り替える計画を掲げており、それを滞りなく進めていきます。また、自社発行のクレジットカード「LCカード」については利便性やメリットをお客さまに向けてさらにアピールしていき、会員数を30万人にまで広げたいと考えています。

 そして3つめは、「3つの風土改革」でも「多様な人財を活かす会社」を掲げているように、人材戦略をさらに強化します。女性やパート・アルバイト従業員を含め、全員が自分の能力を最大限に発揮し活躍できるようにしていきます。政府も「働き方改革」を推進していますし、われわれも制度変更などを進めて労働環境の整備にさらに力を入れていきます。

──3つめの労働環境の整備については、具体的にどのような取り組みを進めていきますか。

岩崎 まずは業務のムダをなくし、インプットとアウトプットの時間の比率を変えていくことが重要です。

 その一環として、本社で開かれる会議の見直しを進めているところです。たとえば、店舗や売場の向上につながらないムダな会議は行わないようにしています。また、会議に使う資料は事前に配布しておき、会議中の資料説明を最小限にすることで時間短縮を図っています。会議だけでなく、労働時間についても見直していて、早朝や夜9時以降の勤務は原則として認めていません。

 こうした取り組みはすでに17年1月からスタートしていますが、社員の反応も上々です。

──「多様な人財を活かす」うえで、女性の活躍推進についてはどう取り組んでいきますか。

岩崎 女性の活躍推進については、およそ5年前に外部のコンサルティング会社も交えてプロジェクトチームを立ち上げました。当初は女性社員のなかで管理職を増やしていくという方向性で取り組み、当時39人だった女性管理職を、今では100人近くにまで増やすことができました。女性が意思決定の場に加わることで、たとえば店のレイアウトや内装デザイン、品揃えなどにおいて、女性ならではの考えを反映した取り組みが見られるようになりました。

 現在は社員のみならず、女性が大半を占めるパート・アルバイト従業員の活躍推進についても積極的に取り組んでいます。今後、人事制度や勤務制度を適宜変更しながら、活躍の場を広げていきます。

300店舗体制にメド 小型店出店も進める

──今後の出店戦略について教えてください。

岩崎 第五次中計では、毎年10店舗の新規出店を目標として掲げました。欲を言えばもう少し出店したいところですが、出店用地の獲得をめぐる競争が激化しているほか、賃料や建築コストが高騰していますし、人手不足の問題もあります。そうした状況下では、毎年10店舗程度という出店スピードが現実的な巡航速度だと考えています。すでに再来年度あたりまでは出店する物件がほぼ決まっていて、首都圏と近畿圏で合計300店舗体制が見えてきました。

 また、首都圏においては物流網とPCの再構築にもここ数年力を入れてきました。17年6月には、神奈川県川崎市に倉庫面積約1万2000坪の「川崎総合物流センター」を開設します。国内でも最大規模の物流センターができることで、首都圏で200店舗までは対応できるようになります。

──昨今、小型店もいくつか出店しています。採算モデルは確立できているのでしょうか。

小型店の出店も進めていく(写真は東京都大田区の「鵜の木店」)

岩崎 「笹塚店」(東京都渋谷区)や「吉祥寺駅南店」(東京都武蔵野市)など、150坪程度の小型店はこれまでも出店しており、各店舗ともしっかりと収益を確保しています。

 そして、首都圏ではPCの再構築が完了したことにより、150坪以下の規模の小型店でも問題なく運営できる体制が整いました。物件さえ見つかれば、そうした小型店も出店していく考えです。

──「ビオラル」については、出店の拡大などは検討していますか。

岩崎 しばらくは既存の「ビオラル靭店」の運営に集中する考えです。靭店は開業後、業績が計画を下回るなどやや苦戦していましたが、売場や品揃えの面でテコ入れを図り、売上もある程度上向いてきました。1年目の売上高は6億円程度でしたが、2年目は7億円超の売上高が期待できます。

 ナチュラル&オーガニックの市場がマスの存在になることは今後もないでしょう。ただ、ビオラルの運営を通じてわかったのは、そうした商品の需要は確実に存在するということです。健康志向の強い人や、子供に安全なものを食べさせたいと考える人は着実に増えています。そうしたなかで、ビオラルの存在意義は小さくないと考えています。

──今後店舗を展開していくうえで、めざすSM像のようなものはありますか。

岩崎 やはり、「買物を楽しめる」という要素は必要不可欠だと思います。「モノ消費からコト消費への転換」などといわれていますが、モノだけであればインターネットで十分という時代です。そうしたなかでリアル店舗は、買物が楽しいと思ってもらえるような雰囲気や品揃えを追求することが大きなカギとなります。

第6次中計は「ライフらしさ」を追求

──来年度からは第六次中計がスタートします。現時点での構想があれば教えてください。

岩崎 第六次中計については、第五次中計から方針の大きな変更はありません。第五次中計はそれ以前の中計の内容を一度リセットしてゼロからつくり込んだもので、今でも基本的な方向性は間違っていないと思っています。

 ただ、EC(ネット通販)市場の拡大やAI(人工知能)技術の進歩など、社会環境の変化のスピードが速いのも事実です。これだけ変化が激しいと、3年に1回は立ち止まって、将来をしっかりと見つめ直す必要があります。環境の変化に対応しつつ、同時に「ライフらしさ」をどのように出していくかというのが第六次中計の肝になるでしょう。

 また、第六次中計では近畿圏における物流・PCの再構築を本格始動します。すでに1カ所の開設が決定しています。

──商品面では、首都圏と近畿圏で共同開発を進めています。こうした東西共同の取り組みは増えていきますか。

「ライフプレミアム」などのPB商品を中心に、東西共同の商品開発も進めている

岩崎 大量に仕入れたほうが安くなる輸入食品や、衣料品、生活用品などの非食品、「スマイルライフ」「ライフプレミアム」といったプライベートブランド(PB)商品については、今後さらに東西共同の取り組みを強化していきます。

 しかし、首都圏と近畿圏で一緒にやるべきこともあれば、別々で取り組んだほうがよいこともあります。たとえば部門ごとの強弱の付け方や、売価、チラシの打ち方などについては、東西で競合する企業も違いますし、無理に統一する必要はないと思っています。

──最後に、ライフの社長に就任してから12年目を迎えました。これまでのご自身の実績をどう評価しますか。

岩崎 就任してから売上・利益ともに順調に伸び続けていますし、そこはある程度満足はしています。ただ、利益面についてはもっと追求していかなければならないと考えています。

 とにかく優先すべきは「3つの風土改革」です。それについてはまだ合格点には到達していません。引き続き、全力で取り組んでいきます。