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激戦区を勝ち抜きめざすは瀬戸内商勢圏180店舗・3000億円=ハローズ 佐藤 利行 社長

中四国地方を中心に食品スーパー(SM)を展開するハローズ(岡山県/佐藤利行社長)。「瀬戸内商勢圏180店舗3000億円構想」を長期ビジョンに掲げ、熾烈な競争が繰り広げられる同エリアにおいて店舗網を拡大している。今後どのような成長戦略を描くのか。佐藤社長に聞いた。

買上点数向上ねらいポイント促進を強化

さとう・としゆき●1949年広島県生まれ。71年大東文化大学経済学部経営学科卒業。同年、ハローズに入社。91年より同社代表取締役社長を務める

──2017年度上期の累計売上高は598億円(対前年同期比5.5%増)、営業利益は21億円(同1.3%減)で増収減益となりました。どのように振り返りますか。

佐藤 営業減益の主な要因は経費の増加です。人件費、電気代、減価償却費といった経費が前年よりも拡大しました。

──一方で売上高は対前年同期比で5.5%増と好調でした。

佐藤 増収幅が5%台で推移するということは、順調と言えるでしょう。ただし外部の競争環境に目を向けると、手放しで喜んではいられません。既存店売上高を見ると、第1四半期は前年割れ、第2四半期はなんとかプラスに転じ、トータルではほぼ前年並みという状況です。われわれとしても、これまで以上にあらゆる施策を打ち出していかなければならない局面に入っていると感じています。

──たしかに、中四国エリアではイズミ(広島県/山西泰明社長)、マックスバリュ西日本(広島県/加栗章男社長)、エブリイ(広島県/岡﨑浩樹社長)などの有力チェーンがひしめき、熾烈な競争が繰り広げられています。ハローズとしてはどのような手を打っていきますか。

佐藤 近隣に競合するSMが出店することで、集客につなげるチャンスが広がると捉えることもできます。ハローズとしては買上点数の向上をねらい、多様な販売促進活動を展開しています。

 たとえば、ポイントカード「ハロカ」については、これまで月に1~2回、日曜日に「ポイント5倍デー」を実施してきましたが、現在は火曜日と金曜日にも「ポイント3倍デー」を追加しています。

 また、ハロカとは別に、満65歳以上のお客さま向けに「ハローズエバーグリーン・スタンプカード」を発行しています。これは購入金額税込1000円ごとに1つスタンプを押し、30個貯まると1000円分のお買い物券としてご利用いただけるものです。以前は毎週水曜日と国民年金受給日にスタンプを押印していましたが、現在は毎週土曜日も対象日としています。

 こうした取り組みを通じて、顧客満足度や来店頻度のアップを図り、買上点数向上をめざしています。すでに一定の効果は表れており、直近の9月の既存店売上高は対前年同月比0.9%増と前年をクリアしています。

 今後も多種多様な施策を打ちながら既存店の売上をキープし、売上高と粗利高の拡大を図っていきます。

──売場づくりの面ではどのような施策を行っていますか。

期間限定で価格を打ち出すロールバック売場は店内に最大40カ所設ける

佐藤 売場についても、買上点数を上げるための工夫を凝らしています。一例を挙げると、期間限定で単品大量陳列を行い価格も強く訴求する「ロールバック売場」を各店舗で展開しています。加工食品とチルド商品を中心に、1店舗あたり最大で40カ所は設けています。また、生鮮食品についても棚割りをつねに工夫しながら買上点数アップにつなげています。

 いずれにしても、「買いやすい売場」をつくるということをいちばんに心がけています。お客さまが求める商品をわかりやすい場所に置いて価格も打ち出し、ショートタイム・ショッピングができる売場をつくる。その結果として、買い上げ点数が増えるというのがわれわれのめざすところです。

「東広島店」を開業し新たな商圏に進出!

──出店戦略について聞かせてください。下期に入ってすぐの9月30日、広島県東広島市に「東広島店」を出店されました。

佐藤 広島県は大きく、東部(備後)と西部(安芸)に分けられ、今回進出した東広島市は西部に属する地域です。われわれはこれまで県東部ではドミナントを構築してきましたが、西部への出店は初めてで、わが社にとってはまったく新しい商勢圏となります。

 開店後から業績は好調で、売上は対予算比で110%~120%くらいで推移しています。

──東広島店で新たに取り組んでいることはありますか。

「緑町モデル」を採用し、即食需要に対応するべく総菜の販売に力を入れている

佐藤 ハローズは現在、15年9月に開業した「緑町店」(広島県福山市)を標準とした「緑町モデル」での出店を基本方針にしています。これは、売場面積約600坪のハローズの店舗を中心に、ドラッグストアや100円ショップ、衣料品専門店などのテナントを集積した近隣購買型ショッピングセンター(NSC)をつくるというものです。

 東広島店についても「緑町モデル」を採用したNSCの核店舗という位置づけで、売場づくりの方針も基本的には緑町店と同様です。

 ただ、総菜売場については少し進化させました。店内調理の肉総菜や魚総菜のメニューを拡充し、即食需要に応える商品を増やしています。また、加工食品は健康志向に応える商品や、飲料を中心に機能性商品も多く揃えています。

 さらに、これまで出店してきた県東部とは食文化に多少の違いがあります。そのため、東広島店では地域特性に対応した品揃えも追求しています。

県西部初出店となる東広島店では、地域商品も売場の随所に差し込んでいる

──東広島市の隣には、中四国最大の都市広島市があります。長期ビジョン「瀬戸内商勢圏180店舗3000億円構想」を実現するうえで、今後広島県西部は重要なエリアとなっていきそうですね。

佐藤 間違いなく、これから出店を進めていくエリアです。「瀬戸内商勢圏180店舗3000億円構想」を実現するうえでは、東広島を中心とするエリアで今後10店舗程度を出店し、ドミナントを形成しなければならないと考えています。

──広島市を含むエリアにおいて、どれくらいの期間でドミナントを形成する考えですか。

佐藤 新たな商圏に進出したら、集中的に出店するべきだと考えています。そのほうがお客さまからの認知度も上がりますし、物流や運営の効率を考えても理想的です。

 広島県西部に関して言えば、何と言っても人口密度が高く中四国最大の市場である広島市があります。このエリアで成功すれば、売上は一気に拡大するでしょう。ただ、広島市周辺の地域は出店用地が限られているため、すぐにドミナントを形成できるかというと、正直に言って非常に難しい側面があるのも事実です。

──限られた用地で出店を進めるにあたって、都市型の小型店を出店する可能性はありますか。

佐藤 それは考えていません。あくまでも600坪の「緑町モデル」の出店が基本です。

 私たちの使命は、お客さまにとって必要な商品がいつでもあるという店をつくることにあります。「食生活に関わる商品はすべて揃っていますよ」と自信を持って言えるようにならなければいけません。日常の食生活以外にも、入学シーズンや運動会、誕生日や冠婚葬祭など、あらゆるイベントに対応できる品揃えを提供するためには、600坪というスペースが必要なのです。

──NSCで出店するというのも基本方針になっているのですか。

佐藤 基本的にはNSCをつくりたいと考えています。ただそれは敷地面積によって左右されます。狭ければフリースタンディングの店舗になりますし、広ければNSCを開発するということです。ただ、お客さまの買物利便性を考えると、ハローズの店舗にドラッグストアや100円ショップ、クリーニング店などが集積したNSCのほうがベターであることは確かでしょう。

──日頃とくに意識している競合店はありますか。

佐藤 マックスバリュ西日本さんが展開しているディスカウント業態「ザ・ビッグ」の集客力は強いと思います。とくに旧「メガマート」から転換した1000坪規模の大型店は、豊富な品揃えと価格が大きなアピールポイントとなっています。

 エブリイさんも成長著しい注目企業です。直近ではハローズの「緑町店」「津高店」「府中店」「六条店」などの近隣に出店されています。ただ、お客さまにとっては買い回りしやすい環境になっています。お互いが集客を図りながら、切磋琢磨していければよいと考えています。

全店24時間営業は誰にも真似できない!

──すべての店舗で24時間営業を行っていることもハローズの大きな特徴です。そもそも、どういった考えのもとに全店24時間営業という方針を打ち出したのですか。

佐藤 何よりも、お客さまがいつでも買物ができる店をつくりたかったからです。「買いたい時間に買える」という利便性を提供するために、全店24時間営業を実施しています。その結果として、少しでも売上を伸ばすことができればよいという考え方です。

 店舗という資産は24時間存在するわけで、その意味では稼働率をできるだけ上げたほうがよいでしょう。もちろん人件費などの運用コストは考えないといけませんが、全店24時間営業はわが社の根幹をなす営業方針です。計算したところで24時間営業は効率が悪いからやめようという考え方はしません。24時間営業を前提に、いかに運営効率を追求できるかということに努めています。

──全店で24時間営業を行っているSM企業はほとんどありません。競争優位のポイントになっていますか。

佐藤 SM業界では一時、24時間営業を始める企業が増えた時期がありました。しかしそのときほとんどの企業は、「競合店がやっているから」という競合対策上の理由で24時間営業に乗り出したのではないでしょうか。しかし実際にやってみた結果、売上は確かに上がるが、それ以上にコストがかかることがわかり、次々と撤退していったのです。

 24時間営業は、しっかりとした仕組みをつくらなければとてもできません。そして、競合対策ではなく、あくまでもお客さまに利便性を提供するという考えがなければなりません。もちろん、競合店が閉店している夜中にも店を開けているわけで、全店24時間営業というのは間違いなく競争優位のポイントになっていますが、それはあくまでも結果です。

──全店24時間営業の方針を維持しながら店舗網を拡大するうえでは、物流網の効率化も重要です。

佐藤 ハローズは11年に、早島物流センター(岡山県早島町)を稼働しました。同センターには現在、常温センターと低温センターのほか、生鮮食品のプロセスセンターも併設しています。青果と鮮魚の一部を除くすべての商品が早島物流センターを介して各店舗に配送されており、商圏の全域をカバーしています。

 もともと150店舗くらいまで対応できる能力を備えていますが、今後の店舗網拡大に備え、来年からセンター内の仕分けの仕組みを変更する予定です。具体的にはソーター(自動仕分けを行う機械)の稼働率を上げ、仕分けの能力を増強していきます。

──仕分けシステムを変えることで、店での作業に影響は出ないのでしょうか。

佐藤 それについても考えなければなりません。センターでの作業プロセスをどのように組み変えるかによって、店での対応も変わります。

 原則として店舗での品出しは深夜帯に集中して行っています。これを仕分けの時間が変わったからと言って昼間の時間帯にシフトしたら24時間の強みはなくなってしまいます。商品がどの時間に店に届いていればいいかというのを全店舗で見直し調整しています。

ワクワクする職場づくりが人材確保のカギ

──瀬戸内商勢圏180店舗3000億円構想の実現に邁進されるなかで、経営課題となっていることはありますか。

働きやすい労働環境の整備も進めていく

佐藤 やはり人材の確保は喫緊の課題になっています。正社員もパート・アルバイト従業員も、今年は何とか昨年の実績を超える数の採用はできました。しかし、今後も同じ数の採用ができるかはわかりません。店舗網を拡大していくなかで、将来的には200人採用しなければ継続的な出店ができないような時代も来るでしょう。

 そのためには、従業員がワクワクして働けるような職場環境をつくっていくことが重要だと考えています。われわれは以前から、「仕事は楽しく職場は明るく」という経営方針を打ち出してきました。今後も待遇改善を含めて、働きやすい労働環境の整備に今以上に力を入れていきます。