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コロナ禍で躍進する生協が本格稼働させたDXプロジェクトの中身

 新型コロナウイルス(コロナ)感染拡大の影響を受け、とりわけ業績を伸ばしている業態の1つが生協宅配だ。非接触ニーズが拡大しEC各社が急成長を遂げるなか、生鮮宅配の“王者”とも言える生協は、次にどのような施策に打ってでるのか―――。

コロナ禍での宅配ニーズの高まりを受けて生協宅配は大きく業績を伸ばしている

2020年度の宅配事業
供給高が14.9%増!

 日本生活協同組合連合会(東京都:以下、日本生協連)が発表した2020年度業績(見込み:期間=2020年4月~21年3月)では、全国の地域生協の総供給高(小売業の商品売上高に相当)は対前年度比11.8%増の3兆683億円と、初めて3兆円を突破した。成長を牽引したのは主力の宅配事業だ。供給高が同14.9%増の2兆1170億円と大きく伸長。その内訳では、客単価、利用者数ともに高止まりを続けている。

 近年、店舗間競争の激化によって業績が振るわなかった店舗事業についても、供給高は同4.3%増の9513億円。宅配・店舗事業ともに経常剰余(同経常利益に相当)も増加しているという(一部の地域生協を除く)。

新規利用者の6割超が
20~30代の若年層

コロナ禍で生協は若年層の獲得に成功している。写真は日本生協連が開発するプライベートブランド商品の離乳食・幼児食シリーズ「きらきらステップ」。子育て中の若い世代から高い支持を得ている

 主力の宅配事業に注目すると、特筆されるのが若年層の獲得に成功している点だ。

 宅配事業の利用者数は、感染拡大の“第一波”が収束した20年6月以降も対前年同期比105%前後で推移している。生協総合研究所が20年10~12月に実施したアンケート調査の結果によると、新規利用者のうち6割以上が20~30代の既婚者だという。そして新規利用者のうち約7割が「利用を継続したい」と回答している。

 生協は、長期的な成長をめざすうえで利用者の高齢化を課題としてきた。コロナ禍で生協宅配の利便性にあらためて注目が集まったことにより、長年の課題が一気に解消されつつある。

「即時配送に挑戦する
 優先度は高くない」

 絶好調の生協宅配だが、コロナ禍ではこの成長市場を奪取しようとアマゾンジャパン(東京都)をはじめ競合各社も生鮮ECの拡大に動いている。生協宅配は次にどのような成長施策に打ってでるのか。

 日本生協連常務執行役員の二村睦子氏は業績発表の会見の場で「他社の生鮮ECのような即時配送に挑戦する優先度は高くない。現在の週次配送モデルにさらに磨きをかけていくことが重要だ」と述べている。

 そうしたなか直近の取り組みで注目されるのが20年4月からスタートした「DXコーププロジェクト」だ。日本生協連主導のもと全国の地域生協のデジタル・トランスフォーメーション(DX)を推進するもので、宅配の効率化や利便性向上が期待される。

日本生協連は20年4月から「DXコーププロジェクト」をスタートした

AIを活用した実験が
続々スタート!

 21年度は同プロジェクトによる新たなサービスを複数開始する。すでにみやぎ生協(宮城県)では21年4月から、注文履歴をもとにレシピを提案し、必要な食材を一括注文できる「レシピ注文」サービスをスタートさせている。
 またコープあいち(愛知県)では今年5・6月ごろをめどに、AI(人工知能)を活用することで、宅配の配達コースを最適化するシステムの実証実験を行う計画だ。

 一部の先進的な地域生協を除いて、これまでデジタル活用が遅れていると言われてきた生協だが、いよいよ本腰を入れてDXを推進し、週次配送モデルをより進化しようとしている。