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業態の栄枯盛衰がくっきり 日本の小売業トップ20社ランキング・2020年版

新型コロナウイルス感染症の影響拡大で激動の1年となった2020年。決算発表では明暗が鮮明になったが、今回は3月期決算以降の企業を除けば、その影響を受ける前の業績を反映した2020年版の日本の小売業トップ20社ランキングを公開する(本ランキング掲載の65%の企業が2月期決算企業)。上位に大きな変動はなかったが、業態別の盛衰がにじみ出る、現在の勢力図を反映した結果となっている。

コンビニ3社がトップ3独占 百貨店は衰退が鮮明に

 2020年の小売業上位20社のランキングはここ数年と大きく変わることはなかった。1位はセブン-イレブン・ジャパン、2位ファミリーマート、3位ローソンでコンビニエンスストア(CVS)大手3社がトップ3を独占。小売キングとしての強さを示した。

 CVSの強みは小さな店舗を網の目のように張り巡らせ、地域に密着し、多様な商品・サービスを提供。不便を解消することにある。最新テクノロジーの活用にも積極的で、盤石の態勢を固めつつある。この真逆といえる百貨店業態の凋落が止まらないことが、小売業の明暗を逆説的に証明している。

 かつてはランキングトップ10が常連だったその百貨店は、ついに本ランキングでは上位10社に1社も名を連ねなかった。高島屋の11位が最上位で、大丸松坂屋百貨店18位、そごう・西武が20位に食い込むのがやっとだ。しかも3社とも対前年比マイナス(それぞれ-1%、-3.6%、-2.5)で、衰退に歯止めがかからない。

 2021年に入り、高島屋がコワーキングスペース、大丸松坂屋は診療所や図書館の誘致に乗り出し、脱百貨店を進めている。さらに大丸松坂屋は衣料のサブスクリプションをスタートし、オンラインも強化。いわゆる百貨店らしさに固執しない取り組みでこの流れになんとか抗おうとしている。

ドラッグストアは勢い衰えず

 一方、CVSに並んで元気なのがドラッグストアだ。トップ108位ウエルシアHD9位にツルハHDがランクインし、17位にもコスモス薬品が入っている。3社の前年同期比の平均は、103%でトップ20の中で最も高く、昨今のドラッグストアの勢いがそのまま反映されている。

 ドラッグストアは、薬品を扱うことを強みに、昨今は幅広い商品を扱うことで、コンビニと競う業態へと変貌しつつある。加えて、合併により仕入れや物流コストの効率化も進め、小売業としての力を蓄えてスーパーマーケットから需要を奪う展開をみせている。

小売業売上高20社ランキング(単位:100万円、%)

順位 社名 売上高 対前期比 決算期 業態 本社 系列
1  セブン-イレブン・ジャパン  5,010,273 2.3 20/2 CVS 東京 セブン&アイ
2  ファミリーマート 2,965,052 -0.6 20/2 CVS 東京 伊藤忠商事
3  ローソン  2,296,156 2.7 20/2 CVS 東京 三菱商事
4  イオンリテール  2,192,511 0.3 20/2 GMS 千葉 イオン
5  ファーストリテイリング(連結) 2,008,846 -12.3 20/8 AP 山口  
6  ヤマダ電機  1,405,451 0.6 20/3 CE  群馬  
7  イトーヨーカ堂  1,185,147 -4.1 20/2 GMS 東京 セブン&アイ
8  ウエルシアHD(連結) 868,280 11.4 20/2 DgS 東京 イオン
9  ツルハHD(連結) 841,036 7.5 20/5 DgS 北海道  
10  エディオン(連結)  733,575 2.1 20/3 CE  大阪  
11 高島屋 722,236 -1 20/2 DP 大阪  
12 ライフコーポレーション 713,879 2.3 20/2 SM 大阪 三菱商事
13 ヨドバシカメラ 704,600 1.7 20/3 CE  東京  
14 ドン・キホーテ 704,047 -0.1 20/6 DS 東京 PPIH
15 イズミ 700,142 1.9 20/2 GMS 広島  
16 U.S.M.H(連結) 691,660 -0.4 20/2 SM 東京 イオン
17 コスモス薬品 684,402 12 20/5 DgS 福岡  
18 大丸松坂屋百貨店 656,152 -3.6 20/2 DP 東京 J.フロントリテイリング
19 ニトリHD(連結) 642,273 5.6 20/2 SP 北海道  
20 そごう・西武 600,148 -2.5 20/2 DP 東京 セブン&アイ

 そうした流れを象徴するように、スーパーマーケット、総合スーパー(GMS)は低調だ。イオンリテールは4位を死守したが、売上は対前期比で0.3%でかろうじて現状を維持した。7位のイトーヨーカ堂は、前年同期比4.1%減となりマイナス成長となった。U.S.M.Hも前年同期比0.4%減。そうした中で、ライフコーポレーションは前同期比で2.3%と堅調だった。

 百貨店が自ら脱百貨店を掲げ、変革に必死なようにスーパー業態も大きな岐路を迎えつつある。U.S.M.Hはデジタル・トランスフォーメーションを加速させ、オンラインとオフラインを問わずに買い物体験の向上を進めている。ライフもECの巨人・アマゾンとタッグを組み、ネットスーパーを展開。ランキング15位のイズミは3月に大幅な組織変更に着手しており、変革を見据えた体制を整えている。

2021年は大激変が必至

 ここでみるだけでも水面下で大きなうねりが起こりはじめている小売業。今回のランキングは、決算期が202月期の企業がメーンで、2020年の経済を揺るがした新型コロナウイルスの影響がほとんど反映されていない。その意味では、まさにトレンドの大きな変わり目のランキングといえ、2021年度版では様変わりしている可能性もある。

 少子高齢化やテック化の影響が、「10年前倒しでやってきた」と表する経営者がいるほど、激変した2020年の消費市場。緊急事態宣言下で必要とされたものは特需となって売上を伸ばしたが、そんなことに一喜一憂していられないほどの強大な変化の波が襲ってきたことをあらゆる業種業態の経営者が感じ取った。

 三密回避の策として、小売が宅配に本格参入。併せて、ネット展開も加速させた。何が起こるか分からない状況を少しでも見通すために、AIによる売上予測を導入するスーパーも出てきている。決済のキャッシュレス化はもちろん、CVSの無人化もいよいよ加速するだろう。

 新型コロナが終息すれば、以前のように戻る。そうした考えではもはや成長など望めない。別の新たな非常事態が起こったらどうすべきか。最悪の事態に先回りし、顧客に常に最善のサービスを提供する。そうした姿勢の企業だけが売上を伸長させ、成長する。来年のランキングでは、それが色濃く反映されることになりそうだ。