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チラシと店頭販促で振り返る! ライフ、サミット、ダイエーの年末商戦

コロナ禍で迎えた2020年末、食品スーパー各社はクリスマス・年末商戦でどのようなプロモーションを展開していたのだろうか。本稿では、食品スーパー10社を「大手」「首都圏」「激戦区」に分け、クリスマスシーズンのチラシと店頭での販促をもとに、各チェーンがどのような商品政策をとっていたのかを見ていく。前回は、食品スーパー10社のクリスマスチラシのキャッチコピーを紹介した。今回は、大手3社(ライフコーポレーション、サミット、ダイエー)の店頭で行われていたプロモーションを見ていこう。

ライフコーポレーション

テーマは「家族で過ごすChristmas」

 まず見ていきたいのが、食品スーパー国内最大手のライフコーポレーション(大阪府:以下、ライフ)だ。

 「家族で過ごすChristmas」(コモレ四谷店のチラシより)を打ち出すライフのイチ押しは、「クリスマスの主役はやっぱりチキン」だ。総菜コーナーでは「ハーブ&スパイスの豊かな香り スパイスのフライドチキン」、「桜島どりローストレッグ(鹿児島産)」(1本598円)のほか、「オードブルセット」や「肉バルプレート」を展開。畜産コーナーでも、レギュラー商品と思われる「国内産若どり骨付きもも肉(解凍品)」とは別に、「九州産若どりローストレッグ」(1本480円)を提供していた。

 主役に花を添えるオードブルは、「彩りサラダオードブル」、「ごちそうオードブル」(ローストビーフ)、カットフルーツの「いちごたっぷりオードブル」、「ミートオードブル」、「ワインと楽しむオードブルセット」と多彩なラインアップを提供する。

 ワインは全品1割引で販売。チラシ上では、スペインを代表する「カヴァ(スペインのスパーリングワイン)」であるフレシネ(サントリー傘下)の「コルドンネグロ」(白、辛口)、「セミセコロゼ」に加え、同社オリジナルのシャンパーニュ産、ボルドー産のワインを訴求していた。

ライフコモレ四谷店(写真はオープン時のもの)

ワインと乾き物を関連販売!ビオラル商品も

 ワインの販促展開について、「コモレ四谷店」(東京都新宿区)では、壁面を使って1000円前後の手頃な価格のワインを、「チーかま」(チーズ入りかまぼこ)や、「チーたら」(鱈など)といった乾き物との関連で販売していた。ほかのチェーンではあまり見られない、思い切った売場といえるだろう。

 最近のライフは、首都圏の店舗において、自然の恵みを生かしたオーガニック食品や健康にこだわった商品を集めたプライベートブランド「BIO-RAL(ビオラル)」(約40品目)を発売している。コモレ四谷店でも、店内随所に「BIO-RAL」のPOPを掲げて商品を並べており、多くの来店客が足を止めていた。

 チラシの主役ではないが、コロナ対策と季節感を意識した「きのこ鍋」は、免疫機能向上に役立つといわれる「まいたけ」や「肉厚生シイタケ」をメーンに打ち出している。コモレ四谷店では、「鍋」をキャッチコピーにしたPOPをコーナーごとに掲げ、クリスマスへの関心が高くない層への訴求を図っていた。

見られた「東西の違い」は……

 同じライフの店舗でも、チラシのキャッチに「お手軽」を打ち出している南津守店(大阪府大阪市)になると、チキンの売場スペースが縮小されているようだ。細かな違いになるが、チラシにおける「コロナ対策」の扱いも異なっていた。

 南津守店では「お客さまへのお願い」として「マスク・消毒」、「一定の間隔」、「少人数」、「キャッシュレス決済」を明記しているのに対し、東京版では、チラシ裏面はゆったりとしたスペース取りとなっているにも関わらず、コロナ対策関連の注意喚起の表現は見られなかった。もちろん、コモレ四谷店の店内では、しっかりとコロナ対策については、掲示されているのだが、現在置かれている状況や、感染拡大に対する感じ方が東西で違っているということだろうか。

サミット

「おうちでパーティー」を意識した、本格的な手作りメニューを提案!

 サミット(東京都)では、自社サイトを通じて、12月23日号チラシ特売で「おうちでハッピークリスマス!」と題した企画を118店舗で開催し、「食卓を豪華に飾る美味しいクリスマスメニューの商品を販売」することを公表。コロナ禍での手作り志向の高まりや、外食がしづらい環境を受け、本格的な手作りメニューのレシピ提案も行っている。

 そのためチラシは、総菜をメーンにした「ごちそうを揃えて今すぐパーティー!」と、食材購入を訴求する「おうちで簡単本格パーティーメニュー」の2本柱が目を引く紙面構成になっている。

 総菜売場の主役は“表面はカリッ、中はジューシー”のチキンだ。「国内産若鶏のローストチキン」(1本598円)は、「もも肉にサミット独自のスリット切れ目を入れ、食べやすく、見た目も豪華な商品に仕上げた」という。

 そのほか、「塩にんにくの若鶏もも竜田揚」、「骨無しフライドチキン」、「やさしい味わいのリングビスケット」を盛り込んだ「チキンバーレル(リングビスケット入)」(1パック698円)や、殻付きのエビや鮮魚部門で販売する新鮮なホタテやイカ、アサリを使用した「たっぷり魚介の地中海風パエリア」(1パック598円)など、パーティーを意識した商品が目を引いた。

「手作り志向」にもきめ細かく対応!

 「おうちで簡単本格パーティーメニュー」の商品としては、「フライパンで簡単ローストチキン」、「厚切りステーキバルサミコソースがけ」、「まぐろのオイル煮バケット添え」、「スペアリブとカラフル野菜のグリル」、「海の幸リースサラダ」、「失敗なしの簡単ドームケーキ」などが見られた。それぞれメニューリーフレットを配布しており、本格料理にチャレンジしやすい環境づくりを行っている。

 鮮魚コーナーでは、エビやイカ、ホタテなどの魚介類とパエリアのタレをセットした「魚介たっぷりのパエリアセット(2合用)」(880円)のように、総菜コーナーで提供する商品を家庭で手作りできる商品を販売する。「えびのアヒージョ(オリーブオイル入り)」(1パック580円)は、店内で販売するエビやシメジ、マッシュルームを使用。エビはガーリックオイルで味付け済みと簡便ニーズにも応える商品だ。

 サミットだけでなく、最近は生鮮部門で扱う食材を店内で総菜に加工する例が増えている。このような商品を食べてもらうことで、自店で扱う食材を味わってもらい、まだまだ長引きそうなコロナ禍における「手作り志向」にも応えていくというねらいもありそうだ。

ダイエー

おうち需要を想定し、チキンの売り込みに注力!

 ダイエー(東京都)は、首都圏の店舗において、「今夜はおウチでクリスマス ワイン食で楽しもう」というテーマでアプローチを仕掛けた。

 店頭では「チキンがあれば豪華ディナーに早変わり」と打ち出し、「ローストチキンレッグ(照り焼き)」(1本298円、原料原産地:タイ)、「国産若鶏ローストチキンレッグ(照り焼き)」(1本598円)、「生姜とにんにく香る若鶏もも ジューシー唐揚げ」(100g148円)を前面に押し出していた。

 また、「ワイン食」と掲げ、スペインを代表するカヴァのフレシネ「コルドンネグロ」(945円)、「セミセコロゼ」(998円)のほか、チリ産ワインの「エイティーン」(シャルドネ、カベルネソーヴィニヨン、メルローの3種、各398円)を販売。グループ会社のアルティフーズが扱う、初心者でも食べやすい白カビのチーズ「フランスブリー110g」(298円)との関連販売も実施していた。

 フレシネの「コルドンネグロ」「セミセコロゼ」は、食品スーパー各社が2020年のクリスマスの売り出しチラシにこぞって掲載していた商品でもある。掲載価格こそ、各社の戦略の違いが表れているといえなくもないが、フレシネ社はサントリー傘下の企業であり、コロナ禍でカヴァの輸入ルートが限られたために、(商品を確保しやすい)同社に集中したと思われる。

チェーン名 サミット ライフ
(コモレ四谷店)
ダイエー(首都圏)
キャッチコピー 「おうちでハッピークリスマス」 「家族で過ごすChristmas」 「今夜はおウチでクリスマス ワイン食で楽しもう」
チキン  国内産若鶏のローストチキン(1本598円) 桜島どりローストレッグ(鹿児島産)(1本598円)
畜産:九州産若どりローストレッグ(1本480円)
ローストチキンレッグ(照り焼き)(1本298円、原料原産地:タイ)
国産若鶏ローストチキンレッグ(照り焼き)(1本598円)
フライドチキン(1コ188円) 14種スパイスのフライドチキン(1パック2個390円) 生姜とにんにく香る若鶏ももジューシー唐揚げ(100g148円)
ステーキ肉 アメリカ産アンガス黒牛かたロースステーキ用(厚切り)(100g178円) オーストラリア産サーロインステーキ用(100g338円)
※関西では、自社オリジナル鹿児島県産「さつま姫牛ロースステーキ用」(100g880円)を販売
パエリア 鮮魚:魚介たっぷりのパエリアセット(2合用)(880円):エビ、イカ、ホタテとパエリアのタレをセット

総菜:殻付きのエビや鮮魚部門で販売しているホタテやイカ、アサリを使用した魚介の地中海風パエリア(598円)
総菜:海鮮パエリア(1パック590円) レシピ動画によるメニュー提案
コンソメとベジシーフードパエリア
食材を個々に用意
スパークリング  サントリーフレシネ コルドンネグロ(948円) サントリーフレシネ コルドンネグロ(1058円、期間中は1割引で952円) サントリーフレシネ コルドンネグロ(945円)
デリシオーソ カヴァ798円    
スペシャル商品  カナダ産ボイルオマールえび(アメリカンロブスター)解凍(1尾980円) オリジナルシャンパーニュ(1782円)
オリジナルボルドーワイン(1152円)
トップバリュの「ボイルアメリカンロブスター」※関西では「ロブスター テルミドール」(1980円)
ボイルずわいがに(加熱不要、生食用、400g)
アトランティックサーモン1kg大サイズ
モエ・エ・シャンドン社が「シャンパーニュ方式」で造ったスパークリングワイン「シャンドン ブリュット」(2080円)    

限られた紙面スペースで正月企画も掲出!

 ちなみに、ダイエーの折り込みチラシはB4サイズであり、ライフやサミット(いずれもB3サイズ)に比べて小さい。限られた紙面で「お屠蘇付きお正月セット」(蒲鉾、伊達巻、なると巻)、「栗いっぱい栗きんとん」などを打ち出し、正月準備を勧めているのも特徴のひとつだ。

 2015年のリニューアル時に、高質・こだわり商品や外国人客も便利に利用できるサービスの強化を図った「麻布十番店」(東京都港区)では、クリスマス用の販促と合わせて、オープン冷蔵ケースを使って、おせちに入れる食材のコーナーづくりを行っていた。また、同店では、「炒めるだけの、シーフードアヒージョ」、「トップバリュのボイルアメリカンロブスター」、「サーモン(1kg)」、「ボイルずわいがに(生食用、400g)」といった、ふだんは見かけることのない食材も店内随所に展開していた。

 ステーキ肉は、「焼くだけでテーブルの主役」として「オーストラリア産サーロインステーキ用」(100g338円)をチラシで訴求するだけだが、「おいしさ」と「安全・安心」にこだわったダイエーオリジナルの黒毛和牛「さつま姫牛」の売り込みにも力を入れているようだ。

 ダイエーは「イオン新型コロナウイルス防疫プロトコル」を制定しているイオングループの一員だけあって、折り込みチラシにも、「お客さまへのご協力のお願い」として、「入口での手指消毒」「店内でのマスク着用」「お客様間の距離の確保」「体調がすぐれないときは、来店遠慮」といった具合に、チラシの一角にしっかりとコロナ対策を記載していた。

 次回はヨーク、文化堂、東急ストア(いずれも東京都)と首都圏で店舗展開する3チェーンのプロモーションを見ていきたい。