メニュー

新春トップインタビュー③サミット服部哲也社長が語る「新しいSMの創造」、その姿とは?

2022年度までの新・3カ年中期経営計画をスタートさせたサミット。その内容は、事業を通じて社会貢献も同時に果たし、地域で必要とされる「新しいSMの創造」をめざすというもの。20年12月に開催された合同記者会見で服部哲也社長がその内容を明らかにした。

「GO GREEN」掲げ事業を通じて社会に貢献

サミット服部哲也社長

 20年度は、コロナ禍を通じてやはりSMの本来の価値は「日常の食」や「ワンストップ・ショートタイムショッピング」の提供であるということを再確認した。SMが感染症拡大下で消費者に支持されたのはこの機能を重視してきた結果だ。逆に言えばこの機能をきちんと果たせない店は今後淘汰されていくだろう。

 コロナ禍で人々の生活様式や価値観は急速に変わりつつある。価値観においては、節約志向の高まりはもちろんだが、これまでの利益追求に偏重した社会への反省や、SDGs(持続可能な開発目標)への関心も広がっている。

 そうしたなかSMは、現在は“コロナ特需”によって業績好調だ。だが、ここで何の変革も起こしていかなければ、いつの間にか社会に取り残される業態になりかねないという危機感を私は持っている。

 サミットは20年度から、新・中計をスタートさせた。これは今後の当社の方向性について経営幹部で膝を突き合わせて策定したものだ。コロナ感染拡大以前に定めた計画だが、結果的にこれからの小売業界の流れに沿った内容になったと感じている。

 新・中計のテーマは「G O G R E E N2022~社会に必要とされる新しいSMの創造~」(以下、GG2022)だ。「GREEN」には、サミットのコーポレートカラーである緑色のほか、「環境」「健康」「成長」などの意味も込めた。新・中計は従来と異なり、業績数値は設定しない。数値達成よりも今までのSMにない、新たな挑戦を行うことに重きを置いている。

 大きなポイントは、ステークホルダーに「お客さま」「社員」「お取引先さま」だけでなく「社会」も加えている点だ。これからは、食材を提供するにとどまらず、事業を通じて高齢化や環境保護などの地域社会の課題にも貢献し、SMの枠を超えた存在になることをめざす。

 この方針のもと掲げた店づくりのビジョンが「生きる糧かてを分かち合うお店」だ。「糧」とは、「食糧」や「食物」以外に「精神や生活の活力の源泉」などの意味を持つ。地域住民の皆さんにとって心の支えやパワーの源にもなれるような店を追求していきたい。

 SDGsをはじめとした社会貢献は壮大なテーマとしてとらえられがちだが、われわれの事業でもできることは意外に多い。自身の業務のなかでは何ができるのか、従業員一人ひとりが自分事として考えて実務に落とし込み、会社全体で成果をあげていきたい。

都市部への侵攻をいっそう強化へ

サミットは今後も都市部へ侵攻を強める方針。写真は20年7月にオープンした都市型小型店「神田スクエア店」

 出店戦略について述べると、コロナ禍での人口動態の変化を受けて出店地を郊外にシフトする気はまったくない。リモートワークの普及などによって都市部の昼間人口は減っているが、居住者まで大きく減少するとは思わないからだ。サミットは都市部でも、人が働く場所ではなく、住む場所に出店してきた。20年7月、オフィスビル内に出店した都市型小型店「神田スクエア店」(東京都千代田区)も例に違わず、そのため上階のオフィスがまだ埋まっていない現在でも売上は計画どおり推移している。今後も都市部のドミナントをいっそう深耕していきたい。

 具体的な新規出店数では、20年度は計3店をオープンした。21年度は計4店の計画で、適した物件を獲得できれば、都市型小型店をさらに追加出店したい。また改装についても順次、積極的に進めていく。

 18年度から進めてきたデジタル化推進の全社プロジェクト「SDX(サミット・デジタル・トランスフォーメーション)」に関しては、キャッシュレスや電子棚札、セルフレジなどの導入を進めてきた。

 DXは、内容によって先行者利益と後発者利益を見極めて、取り組む時期を決める必要があると考える。そうしたなかネットスーパーについては、サミットは過去に1度、親会社の住友商事(東京都)とともに事業に参入し撤退した経緯を踏まえて、究極の“後出しジャンケン”をしたいと考えている。開始時期といった具体策は未定で、現在はサービスのための環境を整備するべく商品マスターの構築を進めている最中だ。(談・文責 編集部)