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新春トップインタビュー②ヤオコー川野澄人社長 連続増収増益を33に伸ばすための、2021年の戦略

巣ごもり需要により、業績が好調に推移するヤオコー。2020年3月期決算で達成した、31期連続の増収増益記録も「32」に伸びる見通しだ。ただ、足元の好調ぶりを踏まえると、来期(22年3月期)に記録を更新するハードルはこれまでにないほど高くなると見られ、難しい舵取りを迫られることになりそうだ。

アフターコロナの2021年二極化がより顕著に?

ヤオコー川野澄人社長

 当社は今期(21年3月期)、「創業130周年、ヤオコーの良いところをより強く」をテーマとし経営に取り組んできた。だが、巣ごもり需要の増加による売上増への対応をはじめとしたコロナ対策を最優先としたため、当初の計画は思ったように進んでいない。とくに、継続的に取り組んでいる商品開発、旗艦店づくりに向けた新しい商品政策(MD)への踏み込みは不十分だった。

 そうした中でも、プライベートブランドのカレーうどんがヒットとなったほか、ベーカリーにおいてデリカセンターで製造した生地を使ったピザを値ごろ感のある価格で販売したところ、品質への支持を集めながら売上増につながるなど、一部では進捗がみられた。

 来期(22年3月期)は「ウィズコロナ」から「アフターコロナ」への移行期になると見ている。感染予防を続けながら、新しい日常が構築されていく年になるだろう。五輪も現時点では実施予定とされており、内食需要にチャンスが訪れるという認識でいる。

 一方で、節約志向はさらに強まり、二極化がより顕著になるだろう。当社はここ数年、ヤングファミリー層の獲得をテーマに掲げているが、こうした世帯の節約志向の高まりにうまく対応していかなければならない。それと同時に、ミドルあるいはシニアの「ちょっといいものを食べたい」というニーズもある。メリハリを持った対応がいっそう求められると考えている。

2020年夏に発売したプライベートブランドのカレーうどんがヒット商品となっている

増収増益記録を継続できるか

 社内的な目標の話となるが、当社はこれまでも増収増益を続けてきた。今期上半期は大きな売上伸長があったこともあり、来期の増収増益の達成ハードルは高くなる。

 現在、来期の予算を編成しているところだが、新規出店は今期より増える予定だ。来期は9店舗の出店を計画しており、新規出店による売上高の押上効果は例年よりも大きくなるだろう。今期も大型店の改装を進めており、これも売上増に寄与するはずだ。

 残る課題は既存店の売上高をどう伸ばしていくかだが、ここで重要となるのは客層をどう広げていくか、という点だ。今後もお客さまのまとめ買い志向は続くと見られ、「客数が下がって買い上げ点数が上がる」という大きなトレンドは変わらないだろう。

 そうした中、当社では20年6月くらいからEDLP(エブリデイ・ロープライス)政策をはじめ、価格対応を進めている。とくに、アイスクリームや菓子などで価格対応を強めているところだ。これらの施策はお客さまにもじわじわと認知されはじめており、客数アップにつながってくるとみている。

 店の「経験値」を上げることにも力を入れていきたい。これまでも当社はさまざまな手立てを打ってきた。各店舗でさまざまな売り方を試し、成功事例を積み上げているところだ。来期に前期実績をクリアするのが難しくなることが見込まれる中で、各店が自信を持って商売できるように、成功事例や身につけたノウハウを生かしていきたいと考えている。

カギとなるのは「店長の力」

来期は「個店での販売強化」に集中する。カギとなるのは、「いかに店長の力を引き上げていけるか」であるという。

 当社はかねて、「チェーンとしての個店経営」を経営テーマに掲げ、チェーンの仕組みを生かしながら、個店を強くすることをめざしてきた。各店舗が自らの商圏にいるお客さまをしっかり見ながら商売をしていくのが、当社の特徴であり、強みでもある。

 こうした取り組みを進めるべく、当社ではこれまでもデリカセンターや物流センターといったチェーンのインフラづくりを進めてきた。とくに、物流は逼迫した状況が今後も中期的に続くだろう。ドライバー不足も当面続くとみられ、効率化を検討していきたいと考えている。たとえば、物流センターの運営会社と相談しながら、当社の専用センターバース(トラックの荷物の積み卸し場所)の予約システムを順次導入し、トラックの待ち時間が減るなどの効果が得られている。物流は、放っておくとコストがどんどん上がっていくので、当社としても積極的に関わっていきたい。

 さらに、省人化・省力化を推し進めながら、これまでは人手不足などもあって力を注ぎ切れなかった、個店の強さを磨いていくことに集中したいと考えている。来期は、個店が計画を立て、個店で販売するのをより強化していく年としたい。その中でカギとなるのは、「いかに店長の力を引き上げていけるか」という点だ。あらためて、店長教育に力を注いでいきたい。

(談・文責 編集部)