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トップの言葉で占う!ライフ ・ ヤオコー ・ サミット有力SM3社の2021年の展望

東京オリンピック・パラリンピックに世界中が熱狂し、国内消費も盛り上がりを見せると思われていた2020年。しかし振り返れば、新型コロナウイルス(コロナ)の世界的な感染拡大という有事に見舞われ、人々のライフスタイルは一変。小売市場も大きな変化の波に翻弄されることとなったが、食品という生活必需品を扱う食品スーパー(SM)は総じて好業績に沸いた1年だった。しかし、コロナの威力は年を跨いでも衰えていない。先行き不透明な21年をいかに乗り切り、将来の成長につなげていくのか。ライフコーポレーション(大阪府/岩崎高治社長:以下、ライフ)、ヤオコー(埼玉県/川野澄人社長)、サミット(東京都/服部哲也社長)の有力SM3社の展望をまとめた。

注目スーパー3社のトップは、2021年をどう占うか?

“コロナ特需”に沸くSM業界 

 兎にも角にも、激動の1年だった。

 中国・武漢からコロナは瞬く間に世界中に広がり、日本でも20年1月頃から徐々に感染者数が増加。同年4月には政府から緊急事態宣言が発出され、外出自粛、教育機関の休校、商業施設や飲食店への休業あるいは営業時間の短縮などが要請された。

 小売市場では、百貨店やアパレルなどが深刻な影響を受けた一方、食品や日用品をメーンに扱うSMは、外出自粛下のいわゆる“巣籠り消費”を追い風に売上を大きく伸ばした。3社の業績推移を見ると、緊急事態宣言下の4月の月次売上高(既存店ベース)は、ライフが対前年同月比15.0%増、ヤオコーは同18.8%増、サミットは同20.4%増を記録。ほかのSM企業も総じて好調で、まさにSM業界全体が“コロナ特需”に沸いたといえるだろう。

 ただ、4~5月をピークとして伸び率は漸減傾向にある。その背景には、コロナ禍が長引くなかで、「まとめ買い」が落ち着いたほか、景況感の悪化から節約志向が以前に増して高まっているといった事情がある。SM各社は特需に甘んじている場合ではなく、社会環境や消費者の変化をとらえ、今後の経営戦略について早急に見直すタイミングにあるともいえるだろう。

ネットスーパー全盛時代!
サミットも参入を示唆

 さて、こうした状況下で3社の経営トップはどのような展望を持っているのだろうか。

「ライフネットスーパー」近畿圏の32店舗、首都圏の28店舗で展開している。

 まず、3社でほぼ共通するのが、コロナ禍で需要が拡大しているネットスーパーに対する積極的な姿勢だ。3社のうちライフは首都圏と近畿圏で提供エリアの拡大を続ける方針。埼玉県内の7店舗でネットスーパーを展開するヤオコーの川野社長も、「店舗単体では黒字化できているが、システムの管理費用などを含めると黒字には至っていない」と課題を明らかにしつつ、「まずは(ネットスーパー対応の)店を増やしていくことが重要」と説明した。そして現在はネットスーパーを展開していないサミットも、将来的にネットスーパー事業に参入する考えを示している。

 ただ、ライフの岩崎社長は「(ネットスーパーは)すごく儲かるビジネスにはなかなかならない。業界全体で『ネットスーパーをやろう』という機運の高まりを感じるが、(安易な参入は)やめたほうがよいと思う」とくぎを刺す。この発言は競合に対するけん制というよりも、SM事業とは収益モデルがまったく異なるネットスーパーに安直に手を出すことの危険性を指摘したものだろう。

戦い方と来期の展望は三者三様

SM各社は特需に甘んじている場合ではなく、社会環境や消費者の変化をとらえ、今後の経営戦略について早急に見直すタイミングにあるともいえるだろう。。2020年5月28日に千葉県で撮影。(2020年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

 店づくりや売場づくり、商品政策の方向性については三者三様となった。

 ライフは価格一辺倒の競争戦略を否定し、「これからは付加価値がより求められる時代になる」(岩崎社長)との考え。その一環として、有機・健康志向の商品を集めた業態「BIO-RAL(ビオラル)」の2号店を東京・吉祥寺にオープンしたほか、同名のプライベートブランドも展開し、既存店での販売を始めている。

 一方、ヤオコーはコロナ禍での価格志向の高まりを受け、今期から着手しているEDLP(エブリデー・ロープライス)の取り組みを強化していく方針。EDLPを軸とした価格政策により、とくにヤングファミリー層の取り込みを急ぎたい考えだ。

 サミットはコロナ禍での人々の「価値観の変化」に対応する姿勢を示した。新たな中期経営計画では「社会」を新たにステークホルダーに加え、事業を通じ高齢化や環境保護といった地域社会の課題解決に貢献する存在をめざすとしている。

 来期予算については、ライフが最も慎重な姿勢を見せた。岩崎社長は「(コロナ禍での売上・利益増を)自分たちの実力と勘違いしたような経営計画は立てるべきではない」として、売上予算については今期を下回る水準になると明言。サミットも、「ある程度コロナが収束すると想定し、来期の予算を組み立てる」(服部社長)との方針で、保守的な予算編成となる見込みだ。

 一方、ヤオコーの川野社長は「とくに21年上半期は(前年超えの)ハードルは高くなるだろう」としながらも、「新規出店計画が例年よりも多く、大型店改装も売上増に寄与する」との見通しを示した。

 周辺環境の変化をいち早くとらえ、それに対応した手立てをどこよりも先に示した企業が勝ち残るという図式は、コロナ禍でも変わらない。業界全体に与える影響が大きいだけに、有力SM3社の動きから目が離せない状況が続きそうだ。

 

1月5日~7日の3日連続で各社トップのインタビューをお届けする。

1月5日:ライフ岩崎高治社長がコロナ禍の経営戦略と成長図を語る
1月6日:ヤオコー川野澄人社長 連続増収増益を33に伸ばすための、2021年の戦略
1月7日:サミット服部哲也社長が語る「新しいSMの創造」、その姿とは?