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Pパレットの共同利用により物流効率化と環境負荷低減をめざす=一般社団法人Pパレ共同使用会

加盟社の9型プラスチックパレット(略称:Pパレ)の適切な管理と共同使用促進に取り組む一般社団法人Pパレ共同使用会(東京都/板垣武志代表理事)。ビール大手メーカーの協業をきっかけに設立された同団体は、加盟社相互がパレットの共同使用を促進することで、物流効率化と環境負荷軽減に貢献している。

パレットの共同利用で物流の効率化をめざす

──Pパレ共同使用会の発足の経緯をお聞かせください。

一般社団法人Pパレ共同使用会 代表理事 板垣 武志
1961年生まれ。85年3月慶応義塾大学商学部卒業、85年4月サッポロビール㈱入社、2012年3月首都圏本部マーケティング統括部統括部長、18年9月ビール酒造組合専務理事、一般社団法人Pパレ共同使用会代表理事に就任

板垣 Pパレ共同使用会は、加盟社のプラスチックパレット(略称:Pパレ)の適切な管理と、Pパレの共同利用促進に向けて発足した一般社団法人です。

 発足前はビール大手4社が独自のPパレを使用し、回収も自社分のみを行うのが原則でしたが、取引先である卸売業さまや小売業さまは、Pパレをメーカーごとに仕分けて保管する必要があり、メーカー側も回収時に選別作業を行う必要があったため、双方に負担がかかっていました。

 そこで1992年4月、4社が協力してPパレの共同使用と得意先からメーカーごとに選別することなく回収する「無選別回収」を始めました。95年には加盟企業を酒類メーカー全体に拡大し、2004年に任意団体としてPパレ共同使用会を設立しました。さらに13年4月には会員企業を組織化しルールを設定することで、回収率の向上をめざすための一般社団法人化を行いました。

 さらに18年11月〜19年にかけて、ビール4社によるパレット共同回収の仕組みが全国に広がりました。この取り組みにより、回収車両の積載率向上、回収距離短縮や回収運用にかかわるトラック台数の削減によるCO2削減といった課題にも取り組んでいます。

──現在の会員数をお聞かせください。

板垣 20年8月末現在の加盟企業は116社です。主要業種別の構成比を見ると、日本酒メーカーが45社と最も多く、次いで焼酎メーカーの37社、飲料メーカー12社となっています【図表】。近年は取引先の納品体制や社内コンプライアンスを考え導入を検討する企業も多く、日本酒メーカーや焼酎メーカーからの問い合わせを数多くいただいています。

流出を未然に防ぐ専用伝票とシステムの活用

──Pパレ共同使用会の扱うパレットとはどのようなものでしょうか。

板垣 パレットは、物品の荷役・輸送・保管を目的に、単位数量にまとめて積載するための上面と側面にフォークなどの差込口を有する、物流、流通になくてはならない荷役台です。以前は木製だったのですが、耐久性や環境保全の観点、最近では自動倉庫を使う企業が増えたこともあって、現在ではプラスチック製のパレットが主流です。

 Pパレは、業界や物流、保管方法の違いなどでさまざまな形、大きさが存在します。Pパレ共同使用会の加盟企業が使用している9型プラスチックパレットは、900㎜×1100㎜のサイズで、主に酒類、飲料、食品の輸送、保管を目的に設計されています。

──直近のPパレの出荷枚数と回収率はいかがでしょうか。

板垣 19年は年間で約4500万枚のPパレを出荷しており、出荷枚数は年々微増傾向にあります。回収率については毎年99%を超えていますが、昨年は36万枚の流出がありました。未回収分が1%を切っていても分母が大きいため、1枚5000円で換算しても損失は十数億円規模に及びます。流出の原因はさまざまですが、その多くはPパレの不正使用によるものと推測しております。

──不正使用にはどのようなケースがありますか?

Pパレの不正使用の一例。返却されずに商品の陳列台に使用されたり、市場で山積みにされ放置されたり、農地で柵代わりに使用されたりすることもある

板垣 店舗では在庫商品の整理や陳列台として使用するケースが多く、とくにホームセンター業態ではガーデニング用品や植木鉢などの商品を陳列するため、使われていることがあります。悪質なところではロゴマークやメーカー名のプリントの上に値札やPOPを貼り、見えないようにしたりするケースもあるようです。ほかにも倉庫の風よけに使用されたり、ひどい場合はパレットをカットし、囲いに使用するといったケースも見られます。

──近年は市場関連での不正使用も増えているそうですね。

板垣 はい。加盟社の流通ルート以外の回収については日本パレットレンタル(JPR社)に委託していますが、流通ルート以外の回収の約半数が市場関連となっています。人手不足や高齢化に伴い農家でもリフトやパレットを使う方が増えているようで、そういったこともPパレの不正使用に拍車をかけているとみています。

──この状況を改善するためにどのような施策をとっていますか?

板垣 当会では14年6月から「Pパレ共同使用会共通受け払いシステム」および「Pパレ共同使用会専用伝票」を導入しています。「Pパレ共同使用会共通受け払いシステム」は、加盟企業と卸業者、物流業者がパレットの出荷・回収データを共通のシステムを活用して受け払いする仕組みになっており、物流のそれぞれの過程でPパレの情報をインプットしてもらうことで、加盟企業から出荷した枚数、回収できた枚数を明確に把握することができます。

 一方、「Pパレ共同使用会指定伝票」は、ロゴマークとPパレ共同使用会指定伝票の表記があり、出荷用と回収用の2種類を用意しています。回収についてはこの指定伝票を持った物流業者にPパレを戻すことを徹底することで流出を防いでいます。

 また、Pパレ本体には各社のロゴマークと社名に加え、「譲渡・無断使用一切禁止、一般社団法人Pパレ共同使用会」と記載しています。今後もシステムを活用し、流出の原因を探りながらPパレの回収率向上をめざしていきます。

啓発活動を強化し不正使用を防止する

──不正使用者に対し、どのような対策をとられていますか?

板垣 Pパレが当初の目的外で使用されている場合には、その企業にPパレの返却を求め、さらに返還交渉を行ったにもかかわらず引き続きPパレを不正に保有、使用する事業者に対しては法的措置を実施しています。

 近年はPパレ共同使用会の認知度が向上したことで、不正使用に関する情報を寄せてくれる方も増えました。最も懸念しているのは放置されたPパレが産業廃棄物として処理されることです。今後も不正に使用、保有している事業者に対しては、法的措置も視野に入れつつ、返却を促していく方針です。

──Pパレの不正利用の原因はどんなところにあるのでしょう?

板垣 世の中にはさまざまな大きさのパレットがあり、それらが現場で混在しているため、多くの場合、Pパレを不正使用しているという認識はなく、またPパレを返却するという仕組みを根本的に理解していないケースがほとんどです。そのためPパレと他のパレットとの違いを明確に知っていただく必要があります。

──不正利用の課題解決に向け、どのような取り組みをされていますか?

板垣 Pパレ共同使用会では課題解決に向け、Pパレの不正使用者や未返却者に対し、啓発活動を推進しています。流通関係者向けの専門媒体に加えて、市場関係者向けの媒体や物流関係者向けの媒体にも啓発広告や記事を出稿しています。

 Pパレ共同使用会では多くのメーカーさまに加盟していただくことで、環境負荷の低減と効率化に貢献するとともに、啓発活動の推進によりPパレの不正使用の防止と回収率向上につなげていきたいと考えています。

Pパレ共同使用会では不正使用や未返却の課題解決に向け、啓発用のポスターを発行・配布している