新型コロナウイルス(以下、コロナ)感染拡大による外出自粛生活で、オフィス街や行楽地立地の店舗の業績が大きく落ち込んだコンビニエンスストア業界。そうしたなか、大手セブン-イレブン・ジャパン(東京都:以下、セブン-イレブン)が、2020年度下期の商品政策を発表した。消費環境の変化に迅速に対応し、商品や売場を大きく変えていく方針だ。
上期の客単価は8.8%増
「家族」「家飲み」分も購入
20年度上期の(3~8月)のセブン-イレブンの既存店売上高伸長率は対前年同期比3%減。ファミリーマートの同8.9%減、ローソンの同9.0%減に比べると、落ち込み幅を少なくとどめた。8月には同0.0%、9月には同2.4%増と直近の業績も回復傾向にある。
セブン-イレブンの業績を支えたのが客単価の向上だ。上期では同8.8%増で、とくに緊急事態宣言下にあった5月は同13.7%増と2ケタ伸長となっている。
こうした状況を受けて同社商品本部長の高橋広隆氏はコロナ禍でのコンビニの利用動向の変化について「コロナ以前は、主に自分『1人分』の食事を買うお客さまが中心だったが、『家族分』『家飲み分』も購入されるようになっている」と説明する。
めざすは「おうち時間の充実」
この利用動向の変化を受けてセブン-イレブンが20年度下期のテーマに打ち出したのが「おうち時間の充実~豊かな食卓を実現するビュッフェ提案~」だ。
人の移動が盛んだったコロナ以前は、コンビニではおにぎりやサンドイッチなど移動間の限られた時間のなかで手軽に食べられる食事を中心に提供してきた。しかし現在は外出自粛により自宅でゆっくり食事をする機会が増えている。セブン-イレブンはそうしたシーンに応じた商品の提供を強化していく方針だ。
では、具体的にどのような商品を展開していくのか。まず、「外食のようにさまざまなメニューを少しずつ、お酒とともに楽しみたい」というニーズが増えているとして、小容量商品の提案を強化する。具体例の1つが10月21日から販売する小さなパスタシリーズだ。コロナ禍でテスト販売したところ来店客から高い評価を得ているという。
また、外食ニーズを取り込むべく、本格派メニューも投入する。10月13日にはスープパスタに、2層構造の専用容器を新たに採用。麺と液体スープを分離した状態でレンジアップできるようにして、それぞれの本来の味わいがより楽しめる商品へとリニューアルした。
将来的には生鮮素材の提供も
内食ニーズへの対応強める
次に、バターロールといった「食事パン」の充実だ。食事メニューやお酒とともに楽しめるようなパンを、家族で一緒に食べられるように複数個入りで販売する。その一環の商品として10月21日には、3のチーズを使用したモチモチした食感が特徴の「ポンデケージョ」(178円)を発売している。
また、生鮮素材の販売も強化する。現在、すでに冷凍のカット野菜などを提供しているが、内食ニーズに対応するべく「今後はミールキットや素材自体の提供も視野に入れている」(高橋本部長)と言及している。
さらに売場での訴求を強めていくのが、酒類の提案だ。これを実現させるべく、セブン-イレブンはレイアウトの変更に踏み切って売場から改革する。
酒類売場を、デイリー商品(サンドイッチ、麺類、サラダ、総菜など)の隣に変更して関連購買を促す(下図参照)。9月上旬に新レイアウトを先行導入した173店では日販(タバコを除く)が対前年同期比で1万5600円増加する効果が出ており、20年度中に8000店に導入する考えだ。
このようにセブン-イレブンは、商品を組み合わせて購入してもらえるような商品展開や、売場改革を推進することで、客数減を補う客単価向上を実現し成長につなげようとしている。そして、中食だけでなく内食需要への侵攻を本格化させる方針も打ち出した。
他方では、外食業界がテイクアウトやデリバリー強化を進める動きもあり、食品スーパーが本丸とする家庭の食卓ニーズを取り込む戦いはいっそう激化していきそうだ。