コンビニ大手3社が、20年度第2四半期の業績を発表した。コロナ禍での外出自粛やリモートワークの浸透により人の流れが激変し、とくに都心部に位置する店舗が大きな打撃を受けているコンビニ業界。各社の第2四半期の業績は総じて前年同期を下回ったが、落ち込みを最小限にとどめたといえるのが、業界最大手のセブン-イレブン・ジャパン(東京都:以下、セブン-イレブン)だ。
大手3社の中で善戦するセブン-イレブン
セブン&アイ・ホールディングス(東京都)が10月8日に発表した20年度第2四半期決算によると、セブン-イレブンの上期チェーン全店売上高は2兆4454億円で対前年同期比3.4%減、営業利益は1182億円で同10.7%減、既存店売上高伸長率は同3.0%減となっている。
一方、業界2番手のファミリーマート(東京都)の上期チェーン全店売上高は1兆3622億円で同10.5%減、事業利益(営業利益に相当)は同46.0%減の225億円、さらに当期(四半期)利益では 127億円の赤字を計上した。既存店売上高伸長率(日商ベース)は同8.9%減となっている。
ローソン(東京都)の上期チェーン全店売上高は1兆918億円で同7.2%減、営業利益は125億円で同54.1%減。既存店売上高伸長率は同9.0%減だった。
これら3社の業績を俯瞰すると、全社で売上・利益を落としてはいるものの、セブン-イレブンが落ち込み幅を最小限に抑えていることがわかる。とくに既存店売上高伸長率については、セブン-イレブンは最新の9月度の実績が速報ベースで同2.4%増と前年を上回る勢いだったことを明らかにしており、第1四半期を底に回復基調にのっているようだ。
「2020年度版新レイアウト」で消費行動の変化に対応
セブン-イレブンが「独り勝ち」とまではいかないものの、ほかの2社に比べるとコロナ禍でも善戦している大きな理由は、かねて有していた販売力と商品力の高さにあると言えるだろう。
セブン&アイの井阪隆一社長は、「(セブン-イレブンの)客数は徐々に持ち直しているがまだ前年割れ。それをカバーしているのが客単価の伸長で、第2四半期も前年同期を大きく上回って推移している」と説明。その背景として、「コロナの影響による巣ごもり消費の拡大で、その日だけでなく明日、明後日のぶんもまとめて買う人が増えており客単価の伸長につながっている」とした。
「まとめ買い」というコンビニらしからぬ購買行動を誘発している1つの要因が、「2020年度版新レイアウト」(井阪社長)の導入だ。同レイアウトでは酒類売場を拡大し、プライベートブランド「セブンプレミアム」やチルド総菜に隣接したリーチインケースでも酒類を展開。それに伴いチルド飲料をリーチインケースに移動、スイーツは島ゴンドラで展開するという内容だ。これにより、総菜やカット野菜、冷凍食品、酒類・飲料などが一目でとらえられ、これまで以上に「食卓」にリーチしやすい売場となっている。食品スーパーの代替にもなり得る売場づくり、販売施策が、コロナ禍でも顧客の支持を集めている可能性が高い。
実際、すでに新レイアウトを先行導入している43店舗では、日販ベースでプラス2万7000円、9月以降に新たに導入した173店舗でも同1万5000円の効果がみられているという。今期末までに一挙に8000店への導入を進める計画だ。
加盟店利益の最大化も追求
一方で、加盟店利益の向上にも継続して取り組む。8月度の検証結果によると、加盟店利益は前年同月から7万1000円増加。その要因としては3月から導入している新インセンティブチャージや「エシカルプロジェクト」などによる商品廃棄削減、レジ袋有料化などに伴う消耗品費削減による効果が大きいとみられる。また、平均年間利益は直近5年間で約70万円増加しているとも明らかにした。
今後は店舗運営のさらなる効率化に取り組む。その一環としてセミセルフレジの導入を9月から開始しており、21年上期中に全店舗で導入予定だ。また、番重単位で検品が行える新検品システムも、九州地区を皮切りに本格導入を進める考えで、今年度中に全国での展開をめざす。
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コロナ禍でも「変化対応」の姿勢を崩さずに顧客の支持を集め、強さを見せつけたセブン-イレブン。追う背中がさらに遠くなった格好のファミリーマートやローソンが今後どのような立ち回りを見せるのか注目したい。