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連載 スーパーマーケットの2020 #4 マックスバリュ西日本

マックスバリュ西日本(広島県)は、イオン(千葉県)グループの地域食品スーパー企業の1つで、首都圏を地盤とするユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(東京都:以下、U.S.M.H)に次ぐ規模を持つ、西日本における食品スーパー戦略のカギを握るチェーンだ。2019年3月にマルナカ(香川県)と山陽マルナカ(岡山県)を完全子会社としたマックスバリュ西日本。今後は、有力地場スーパーがひしめく西日本地区で3社統合のスケールメリットをどう発揮していくかが焦点となっている。

マックスバリュ西日本が運営する「マックスバリュ海田店」(広島県安芸郡、2019年撮影)

マルナカ・山陽マルナカとの統合効果は?

 マックスバリュ西日本の歴史は、統合再編の歴史といっていい。旧ジャスコ(現イオン)が兵庫県の地場スーパーに出資したことを源流とするマックスバリュ西日本は、提携や合併を重ね、現在に至っている。

 だが、2021年3月をめどとしたマルナカと山陽マルナカとの経営統合は、マックスバリュ西日本の数あるM&A(合併・買収)の歴史の中でもエポックメイキングな出来事になりそうだ。すでにマックスバリュ西日本はマルナカ、山陽マルナカを完全子会社化しており、2020年2月期の連結営業収益は5429億円に達している。マックスバリュ西日本は21年をめどにマルナカと山陽マルナカを吸収合併するとしており、一層の相乗効果を発揮することが期待されている。

 経営統合を通じてとくに強化されると見られるのが、食品スーパーの中核部門でもある生鮮食品だ。マルナカおよび山陽マルナカは70年の歴史を持つ中四国の有力地場スーパーであり、地域に根ざした生鮮食品の仕入れルートを保有している。あるボランタリーチェーン本部の幹部は「マルナカさんは生鮮食品の品ぞろえ、質に定評がある」と話すなど、業界内での評価は高い。

「生鮮食品の強化」がカギ

 生鮮強化の姿勢は経営トップの発言にも表れている。19年9月にマックスバリュ西日本の新社長に就任した平尾健一氏は、食品スーパーを主流とするイオンのタイ法人イオンタイランドの社長やU.S.M.H代表取締役など、地域密着型食品スーパーの幹部を歴任した経歴を持つ。

 平尾社長は「ダイヤモンド・チェーンストア」誌のインタビューで、「19年の秋からエリアごとに青果、鮮魚などの部門担当の地区バイヤーを配置、地元の商品をそろえる買い付けを始めている」と、生鮮食品を重視する発言を残している。また、同インタビューでは、水産物産地市場での買参権を持つマルナカグループの水産会社、大洋水産(香川県)と共同で仕入れを実施することを検討中とも話しており、食品スーパーの生命線ともいうべき生鮮食品の強化に動くのは間違いなさそうだ。

 マックスバリュ西日本では、マルナカおよび山陽マルナカの担当者と、財務、商品、営業、物流など13のテーマで分科会を定期的に開催し、意見交換を実施しているという。統合への下準備は着々と進んでいると見ていいだろう。

今後は出店加速?小型フォーマット開発も

 統合後のマックスバリュ西日本は、現在の約3割増にあたる売上高7000億円、売上高営業利益率3%に引き上げる中長期目標を掲げている。

 これを達成すべく、マックスバリュ西日本は今後、出店スピードを上げる方針を打ち出している。中四国地区をいくつかのエリアに分け、マックスバリュ西日本のドミナントエリアである兵庫県西部の西播と東播、さらにマルナカと山陽マルナカの店舗網が充実している岡山、香川に重点出店し、ドミナントエリアの強化をめざすとしている。

 とくに西日本地区では、大型の食品スーパーを出店できる土地が少なくなっている。そのため今後は小型食品スーパーのフォーマット開発にも力を入れるという。プロセスセンターを活用した小型フォーマットの展開で、立地や商圏特性を踏まえた機動的な出店戦略を推し進める考えだ。

 マックスバリュ西日本の親会社であるイオンは、四国地方に強力な地盤を持つフジ(愛媛)とも資本提携している。フジはマックスバリュ西日本の株式400万株(議決権所有割合7.6%)を保有しており、今後は両社の連携による取り組みも見られるかもしれない。

 一連の経営統合により、売上高5000億円規模に急浮上したマックスバリュ西日本。イオンの食品スーパー戦略において、西日本エリア攻略のカギを握る存在となったと言っていい。有力地場チェーンがひしめく西日本エリアの勢力図が大きく変わろうとしている。