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連載 スーパーマーケットの2020 #3 バローホールディングス

食品スーパー業界で今後起こるとされる再編において、主役の1社となるかもしれないと言われているのが、バローホールディングス(岐阜県:以下、バローHD)だ。18年に北海道.東北を地盤とするアークス、中国.九州で事業を展開するリテールパートナーズとともに「新日本スーパーマーケット同盟」を立ち上げ、食品スーパー連合の中軸として名乗りを上げた同社。コロナ禍収束の見通しは依然として不透明であるなか、中部の雄はどう動くのか。

ドラッグストアにホームセンターも

 バローHDは、1950年代後半から全国に広がった「主婦の店運動」を源流とする。1958年に創業者の伊藤喜美氏が「主婦の店」を立ち上げ、食品スーパーを展開し始めた。そして、伊藤氏の娘婿である田代正美氏(現・会長兼社長)が、食品スーパー業界3位となる規模にまで育て上げた。

 イオン(千葉県)の岡田卓也名誉会長が一時期、力を入れていたように、バローHDもドラッグストア、ホームセンターなど食品スーパー以外の業態を展開し、独自の近隣型ショッピングセンター(NSC)を構築することで、消費者ニーズを多角的にカバーする体制を築いてきた。

 現在、営業収益に占める業態別内訳は、食品スーパーが約55%、ドラッグストアが約20%、ホームセンターが約17%。売上高構成比の半分以上を占める主力業態の食品スーパー事業では、競争力の高いフォーマットづくりに力を注ぐ。グループ企業のタチヤ(愛知県)が強みとする、生鮮食品のカテゴリーキラー的な要素を持ったフォーマットを展開するなど、田代会長兼社長が言うところの「ハイブリッド型チェーン」を志向しているところだ。

足元業績は絶好調!

 コロナ禍に伴う巣ごもり消費の活発化により、特需に沸く食品スーパー業界。ご多分に漏れず、バローHDの直近業績も絶好調だ。2021年3月期第1四半期(20年4~6月)業績は、営業収益が対前年同期比11%増の1830億円、営業利益が同2.76倍の90億円と増収・大幅増益を果たしている。

 新型コロナウイルス感染拡大による巣篭もり消費の拡大を受け、主力事業の食品スーパー事業をはじめ、ドラッグストア、ホームセンターも大きく伸長した。

 第1四半期における実績を主要セグメントにみていくと、「スーパーマーケット事業」は、営業収益が同8.0%増の992億円、セグメント利益は同3.34倍の63億円と驚異的な伸びを示している。「ドラッグストア事業」は、営業収益が同13.2%増の384億円、セグメント利益が同36.6%増の11億円と、ともに2ケタの伸びを記録。「ホームセンター事業」も、営業収益が同29.4%増の342億円、セグメント利益が同2.43倍の26億円となっている。

どうなる? 新日本スーパーマーケット同盟

 バローHDは元来、M&A(合併・買収)志向の強い企業だったが、2018年末に大きな勝負に打って出た。北海道を地盤とし本州へと南下を進めているアークス、九州を中心に統合を進めていたリテールパートナーズとタッグを組み、「新日本スーパーマーケット同盟」を立ち上げたのだ。

 3社合計の売上高は1兆円を超える。設立にあたり、3社はそれぞれ互いの株式数%を持ち合っているが、同盟設立のねらいは、「資本の結び付き」ではなく、「食品スーパーの一大勢力の構築」にあるというのが大方の見方だ。

 新日本スーパーマーケット同盟設立時の会見で、田代会長兼社長は「全国の独立系スーパーに呼びかける」とし、同志を募り3兆円規模の勢力をつくり上げる考えを示した。3兆円という規模をもって、全国で食品スーパー再編を進めるイオンに対抗する格好だ。

「勝負」の5年間

 新日本スーパーマーケット同盟では、店舗開発における情報の共有化や、仕入れの共通化などを推し進め、スケールメリットを最大限引き出すとしている。田代会長兼社長は18年末に行われた会見で「今後5年間が勝負だ」とコメント、同盟による効果発現への意欲を見せる。

 「勝負」とする同盟設立5年後(2023年末)に同盟はどのような姿になっているのか。食品スーパーにとって予想外の追い風が吹くこの状況下、田代会長兼社長が話す5年間という時間軸をどう考えるかが今後の焦点だが、ドラッグストアという食品スーパー最大のライバルもコロナ禍で勢力を拡大しており、競合先として存在感を強めている。バローHDとしては、追い風が吹く主力業態をさらに伸ばし、いかに競争を勝ち抜いていくかが成長のカギとなりそうだ。