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会見速報!セブン&アイ、米セブン通じて、コンビニ3位Speedway買収

セブン&アイ・ホールディングス(東京都)は8月3日、米国子会社セブン-イレブン・インクを通じて、米国コンビニエンスストア第3位のSpeedway(スピードウェイ)を買収した。8月3日9時より行われた会見内容をベースに、記事をまとめた。

写真はミシガン州にあるセブン-イレブン(RiverNorthPhotography / istock)

 これまで国内コンビニ事業であるセブン-イレブン・ジャパンの業績依存度が高かったセブン&アイだが、ここにきて同社は出店数を大幅に絞り込む戦略に転換しており、これまでのような高い成長が継続されるかは不透明になってきた。そうしたなか米セブン-イレブンは、デジタル変革を積極的に押し進めるなどして業績を急速に改善、グループの業績を牽引する一翼にまで成長している。

 実際セブン&アイは、成長の原動力として、国内外のコンビニ事業を位置付けており、中でも米国セブン-イレブンを、「グループを牽引する最も重要な成長ドライバーとして捉えている」(井阪隆一社長)。

 米セブン-イレブンは、アメリカとカナダで約9800店舗を展開する米国最大のコンビニ企業で、日本を除く世界のセブン-イレブン商標を保有しており、世界で7万1000店舗を展開している。

 米セブン-イレブンのチェーン全店売上高は直近の19年12月期で3兆9362億円(対前期比1.4%減)、営業総収入は2兆7398億円(同2.9%減)ながら、営業利益は1216億円で同9.5%の増益となっている。セブン&アイの20年2月期連結営業利益が4242億円だったので、米セブン-イレブンの業績貢献度の高さがわかる。

 米国におけるコンビニ市場は、上位3社のシェアが9割を占める日本とは違い、15万3000店(19年12月末)のうち65%以上が個人経営を含む10店舗以下のオペレーターで、約8割がガソリンスタンド併設型である。「上位10社のシェア率は2割未満で、非常に細分化された業界で、再編が加速されている市場だ」(井阪社長)。

 そうした中、米国セブン-イレブンは成長戦略として、「M&Aを通じた規模拡大」を進めている。そのため2006以降42件のM&Aを行っており、合計3362店舗を取得している。06年〜18年の36件のM&A実績として、初期投資額(71億ドル)から店舗資産売却等の店舗最適化(17億ドル)を除いたネット投資額(54億ドル)ベースのEBITDA(税引き前・利払い前・減価償却前・その他償却前利益)は7億ドル(40%増)、ROIC(投下資本利益率)は9.6%となっている。この実績から同社では、今回のスピードウェイ買収においても、確かな利益改善が望めることをアピールしている。

 今回、セブン&アイは210億ドルを費やして、米国コンビニ3位で3900店舗を展開するスピードウェイを買収する。これにより米国セブン-イレブンのシェア率は9%に伸長、全米で1万4000店舗を展開することになる。

 スピードウェイは、米石油精製会社マラソン・ペトロリアムが展開するコンビニ事業で、大型給油施設を100%併設しており、1店あたりのガソリン販売量は米国セブン-イレブンの1.5倍である。スピードウェイ事業の19年度商品売上は63億ドルでEBITDAは15億ドル。売上に占めるガソリン販売の比率は76.5%で、粗利額構成では48.9%を占める。

 米国セブン-イレブンとスピードウェイは店舗網において重なりが少ないのが特徴で、「米国の人口密集地トップ50のうち47の市場でプレゼンスを獲得できる」(井阪社長)。

 セブン&アイは以前からスピードウェイの買収交渉を進めていた。だが、今年3月には価格面が折り合わず、買収を断念したとの報道も一部では出ていた。210億ドルはセブン&アイの財務基盤に対して、大きな影響を与えるものとなるが、米国セブン-イレブンのジョセフ・マイケル・デピント社長は「取得できなかった時のデメリットとして、取得に成功したライバルに事業拡大されてしまう懸念があった。(米セブン-イレブンが)プレゼンスを持っていなかった市場で(今後新たに)プレゼンスを持つことは難しくなっただろう」と語っており、是が非でも欲しかった案件であったと言えるだろう。

 では、今回の買収でどのようなシナジーが享受できるのだろうか?デピント社長は「店舗数が1万4000店舗になることで、商品と燃料事業双方でシナジーを享受でき、売上と粗利がさらに押し上げられるだろう。デジタル面でのイニシアチブも推進でき、両者合わせた会員数は4000万人という規模になり、デリバリーの仕組みであるセブンナウを1万4000店舗に展開できるであろうし、モバイルチェックアウトも導入できる」と語る。その結果、金額にして取得後3事業年度までの間に4.75億ドル〜5.75億ドルのシナジーを見込んでいる。

 なお取得価額は210億ドルと書いたが、買収後約50億ドルのセール・リースバック、約10億ドルの試算売却(純額)を行うことに加え、約30億ドルの節税効果が得られるため、実質的な取得価額は約120億ドルとなるとセブン&アイは発表。先述したシナジーを見込んだEBITDAマルチプル(=EV/EBITDA、買収コスト回収期間を示す)は7.1倍になると試算している。