小売店経営に欠かすことができない計数管理。個店の売上高や経費の増減ばかりに目がいきがちだが、それだけでは不十分だ。個々の商品が売場でいかに売れているか、逆に動いていないかを把握することが重要だ。そのなかでもとくに「死に筋商品」の見極めがカギを握る。日本リテイリングセンター「新・流通業のための数字に強くなる本」から死に筋商品の定義と見つけ方を解説する。
死に筋とは年間平均商品回転日数の1・5倍超の商品
在庫高を問題にするとき、まず取り組みたいのは死に筋の発見である。
では、どのようにして死に筋を見つけるのか。それは平均値などいくら分析しても仕方がない。方法はひとつだけだ。単品ごとに死に筋かどうかを判断していくしかないのである。
私どもの定義では、品種ごとに年間平均商品回転日数の1.5倍を超えた単品と数量を死に筋としている。たとえば、年間6回転の部門、もしくは品種があったとすると、2カ月、つまり60日に1回転していることになるので、わが社の資産勘定に計上(納品)されたときかから60日の1.5倍である90日を超えて在庫している商品を、死に筋とみなすのである。
その在庫がベンダーへの預け在庫、ディストリビューション・センター(DC)在庫、または店の後方在庫、その時点での店の売場に陳列されている商品……どこであろうと、とにかく定義に該当する商品は、すべて死に筋とみなすのである。
こうして点検してみると、売れ筋商品の中にも死に筋が含まれていることが分かる。単品単位で調べてみて、売れ筋在庫のあるべき数値(実際の販売量)が100個であるという商品であるにもかかわらず、在庫が120個ならば、そのうちの20個分の過剰在庫は死に筋とみなさなければならない。こうした作業を単品単位で綿密に繰り返すのだ。
すでに気づいたことと思うが、商品回転率は、単に年間の回転数を見る数値ではなく、死に筋を定義付けする尺度として活用する経営効率なのである。数値が多いのか、少ないのかという点のみを気にして、フォーマットの平均値に近付く努力をすればいいというものではない。商品回転率はひとつひとつの単品ごとに死に筋を追いかけるために存在している。
この作業を的確に推し進めると、店舗の売場販売効率は一変するはずだ。結論は、この二点である。
① 年間平均商品回転日数の1.5倍を超えて在庫となっている単品を見つける
② 売れ筋と思われている中に、死に筋在庫量がどこだけあるかを調べる
死に筋の判定は現場で行い、慎重にカットする
このような手続きで死に筋の候補を探すことができるが、判定は現場で行うことであって、本部にいるままいくら数字をにらんでいても進まない。なぜならば、実際に店舗に行ってみると、データでは死に筋と思われた商品が、①店舗後方に置きっぱなしになっていたり、②分類が適切でなかったり、③障害物があるために客に発見してもらえなかったり、という別の原因で売れなかったということがあるからだ。
店舗現場でこのように別の原因で売れていなかった問題をまず解決し、それでも売れない商品について、単品の問題なのか数量の問題なのかを調査と実験によって見極めなければならない。
この際注意しなければならないなのは、1店だけのデータで決定してはならないということだ。なるべくエリア内全店の商品回転率を見るべきである。
さて、このような手続きで死に筋を判明しても、それをそのまま機械的にカットしてはならない。品目とは客にとっての最小分類である。店にとっての最小分類は単品(SKU)であるが、SKUが異なっても客は同一として使用するものは多い。SKU単位の販売データをそのまま活用するのではなく、客はどのSKU同士を同一TPOS(注)で区別せずに使用しているのか分類してみなければならない。
また、関連購買も問題である。たとえば本体の道具とそれを使用するための消耗品とメンテナンス品などは相互に関連する。メンテナンス品は専ら購買頻度が低いが、これがあることで道具と消耗品が売れるのだ。
逆にある単品をカットしたことによって代替品との補完関係が判明し、集約されてかえって大量陳列となり、買いやすくなることもある。
死に筋の定義に従って、現状の品揃えを調査してみると、予想外に死に筋が多いことが分かる。企業によっては全単品数の9割に及んでいた例もある。数量の面でも、死に筋なのに売れ筋とほぼ同じ陳列量になっている例も多い。そのため、時間はかかるが地道に死に筋退治を進めると、売場に相当なスペースが生まれることになる。
(注)TPOS:用途(使いみち)の種類。どんなときに、どんな所で、どんな動機で(本当は何をしたくて)、どんなライフスタイルかの区別。