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アスクル20年5月期はLOHACO構造改革で大幅増益  コロナ影響で気になる本業「BtoB」のこれから

710日、オフィス用品の通信販売事業を展開するアスクル(東京都/吉岡晃社長)は、オンラインで20205月期の決算説明会を実施した。BtoC事業の中核である「LOHACO(ロハコ)」で構造改革が進んだことが主因で、営業利益は対前期比約95%増と大幅に伸長している。LOHACOをめぐっては、19年に対立していた親会社のヤフー(現・Zホールディングス:東京都/川邊健太郎社長)と関係を改善し、「PayPayモール」に出店するなど協業が進んでいる。

営業利益は約95%増

  アスクルの205月期連結決算は、売上高4003億円(対前期比3.3%増)、営業利益88億円(同95.1%増)の増収・営業増益だった。売上面では、主力のBtoB事業で第4四半期に新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けたものの、通期では既存顧客の購入点数が増加したことに加え、SEO対策やインターネット広告の強化により新規顧客が増えたことなどで同4.2%増と堅調に推移した。また、ロジスティクス事業も同29.5%増と好調だった。

 利益面では、BtoC事業のLOHACOの収益性が大きく改善したことが大幅な営業増益に寄与した。BtoC事業単体ではまだ赤字ではあるものの、前期と比較すると29億円損益が改善している。191月の「配送バー」(送料無料になる注文金額)の引き上げや、同年7月から開始した「ひと箱eco」(対象飲料注文の際に1箱に収まるように注文すれば配送料が無料になるサービス)などの効果が着実に表れており、売上総利益の上昇と売上高配送費比率の改善が進んだ。

アスクルBtoC事業20年5月期業績(アスクル決算資料より)

 そのほか、LOHACOは来期以降の再成長に向けて新規顧客獲得をめざし、1910月にはヤフーが厳選した店舗だけが出店するオンライン通販サービス「PayPayモール」に出店。独自商品のラインアップ強化に取り組んでおり、同サービス経由の売上高は伸長しているという。

 

BtoC事業は235月期に黒字化めざす

 215月期の連結決算は、新型コロナウイルスの感染拡大を懸念し、売上高4030億円(同0.7%増)、営業利益72億円(同18.4%減)の増収・営業減益を見込んでいるが、LOHACOに関しては引き続き構造改革を進め、215月期では17億円の損益改善を見込み、235月期での黒字化をめざす。

LOHACO23年5月期黒字化ロードマップ(アスクル決算資料より)

 具体的には、新型コロナウイルスの感染拡大で高まった需要に対応するため、BtoB事業の物流基盤を活用するなどして出荷能力を向上させるほか、置き配などの導入で配送原価を低減させる。加えて、買い回りを促進し、まとめて梱包することで一箱あたりの売上単価向上にも取り組む。そのほか、ヤフーのシステム基盤を活用してサイトを運営することで、固定費の削減もめざす。

 BtoB事業では、売れ筋商品とロングテール商品の両方を強化することで集客・購買機会の増強をめざすほか、オリジナル商品のラインアップも充実させる。また、顧客基盤の拡大でビッグデータをさらに蓄積し、1to1マーケティングを加速させる考えだ。また、22年夏にはBtoB事業の新たな物流拠点として、関東エリアの中核となる「ASKUL新東京センター」(仮称、東京都江戸川区)を稼働させる計画だ。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、さらなる自動化をめざした設備の導入を検討しているという。

ヤフーとの関係は改善

 アスクルは昨年、LOHACO事業の譲渡をめぐって親会社のヤフーと対立。前社長の岩田彰一郎氏のほか、独立社外取締役3人が退任するという事態にまで発展した。騒動直後は後継の現吉岡社長もヤフーとの資本関係の解消を検討していたものの、前述した「PayPayモール」へのLOHACOの出店や、LOHACO運営におけるヤフーのシステム基盤の活用など、最近では共同でLOHACOの収益改善に取り組む動きが見られるようになった。205月期で大幅な収益改善が進んだLOHACOは、ヤフーとの関係改善により、今後の黒字化が現実味を帯びてきたのではないだろうか。