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やっぱりスゴイ!新店・所沢有楽町店で垣間見たヤオコーの最新総菜戦略

新型コロナウイルスの感染拡大により多くの人々が外出や外食を控えた結果、毎日家で食事をとる「内食回帰」の動きが加速し、スーパー各社は好業績に沸いている。しかし、家で料理する人が増えたことでやや割を食うことになったのが総菜部門だ。生鮮素材を買い求めるお客が増え、スーパーの商品に即食性を求める向きが小さくなったこと、さらにコロナ禍で売上が急減した飲食店がテイクアウトをスタートしたことなども「スーパーの総菜」の立ち位置を微妙にさせた感がある。とはいえ、中食市場は今後も拡大し続けることは確実で、総菜強化はスーパーにとって重要な課題であることに変わりはない。では、“アフターコロナ”の世の中で支持される総菜とはどのようなものなのか。総菜開発において一目置かれる存在として知られ、同業他社の視察も多いヤオコー(埼玉県)の最新総菜戦略から考察していきたい。

小容量パックを「ちょっとがイイネ!」の名称でシリーズ化

 ヤオコーは6月19日、埼玉県所沢市に同市内6店舗目となる「ヤオコー所沢有楽町店」をオープンした。もともと地元醤油メーカーの工場があった土地をヤオコーが貸借して開発した、自社NSC(近隣型ショッピングセンター)の核店舗の位置付けだ。店舗周辺はマンションの開発が進むエリアで、30~40代のヤングファミリー層が多く、ヤオコーも彼らをメーンターゲットに据える。

 店舗面積は約1800㎡。取り扱い商品数は全体で約1万2900アイテムで、このうち総菜部門では約300SKUを展開する。平台ごとに「魚総菜」「肉総菜」「エスニック」「デザート」「寿司」といったように明確なテーマ性を持たせている。買物しやすく、かつ商品を選ぶ楽しさが感じられる印象だ。

小容量パックを「ちょっとがイイネ」の名称でシリーズ化した

 部門全体でとくにこだわっているのが量目だ。単身世帯のほか、「少しずついろんなメニューを楽しみたい」というニーズに応え小容量パックが充実。「ちょっとがイイネ!」と銘打ちシリーズ化しており、売場の各所で展開している。取材時は中華総菜売場で同シリーズをコーナー展開しており、「お試し海老チリソース」「オイスター香る!ニラ玉炒め」「お肉柔らか国産豚レバニラ」(各149円)などを展開していた。

素材、調理法に徹底的にこだわる肉総菜&魚総菜

魚総菜「漁火」と鶏肉総菜「幸唐」は隣り合わせに配置

 また、肉総菜の「幸唐(さちから)」と魚総菜の「漁火(いさりび)」は隣り合わせに展開。このうち「幸唐」では主力の「幸唐 若鶏ももから揚げ」を期間限定価格の100gあたり99円で販売していたほか、6種類の焼き鳥もいずれも1本99円で提供。焼き鳥は「塩だれ」にパタゴニア湖塩を使用するなど調味料にもこだわっている。このほか、「鶏の豪快半身唐揚げ」(500円)、「幸唐 揚げ鶏にんにく醤油」(199~398円)などもラインアップされている。

魚総菜は定番の煮つけや塩焼きなどのほか、「鱧フライ」など旬の素材を使ったこだわりメニューも揃える

 魚総菜「漁火」も品揃えが豊富だ。「金目鯛の煮つけ」(398円)、「骨とりアジ竜田南蛮酢」(298円)などのほか、これから旬を迎える「和歌山県産あゆ塩焼き」(298円)もお客の目を引いていた。

 これに加え売場で大きくアピールしていたのが「鱧フライ~大葉梅肉添え~」(398円)。愛媛県下灘漁港で水揚げされた旬の鱧に白だしで下味をつけて揚げ、紀州梅の梅肉を添えた手の込んだ逸品だ。魚料理は家で調理すると手間がかかることからとくに若い世代からは敬遠されがちだが、本格的なメニューを200~300円台で楽しめるというのは大きなポイントだろう。

アボカド総菜、フルーツタルト、「2層仕立て」の冷やし焼き芋…つい手に取りたくなる商品が目白押し!

 このほか総菜売場では、つい手に取って食べてみたくなるようなユニークな商品も多く並んでいる。その筆頭が”アボカド総菜”の数々だ。ヤオコーがかねて取り扱ってきた、メキシコのアボカド専業農家・ミゲル氏が栽培したアボカドを使ったメニューを豊富に展開。POPやシールで「驚きのオイル感!」と謳うように、一般的なアボカドよりも「とろみ」が強いという特長を生かし、「海老とアボカドのタルタル焼き」(398円)、「アボカドとセミドライトマトのROLL」(398円)「アボカドと海鮮プレート」(498円)などを揃えている。

ヤオコー厳選のメキシコ産アボカドを使った総菜

 店内調理のデザートの種類も豊富だ。所沢有楽町店から新たに販売を開始したのが、総菜部門がつくるフルーツタルト。「こぼれるフルーツ!タルト」の商品名で、取材時はいちごと完熟マンゴー(各2個入り399円、4個入り799円)を販売していた。メーンの果物はもちろん、タルト生地の上に敷くクリームも、ホイップクリームとカスタードクリームの2種類を使用するこだわりようだ。

総菜部門が店内調理するフルーツタルト

 このほか、売場中央部の冷ケースで大きくフェースを取ってアピールしていたのがヤオコーオリジナルの「スイートポテトと食べる 冷し焼いも」(298円)。その独特なネーミングのとおり、「焼き芋」の上に甘さ控えめの「スイートポテト」を乗せた2層仕立ての焼き芋スイーツとなっている。冷やし焼き芋そのものは一般的になりつつあるが、そこにスイートポテトを加えることで新感覚の商品をつくり上げた。

売場で大々的にアピールしていた「スイートポテトと食べる 冷し焼いも」

「新しい生活様式」で変わる消費者ニーズを取り込むために

 こうしてあらためてヤオコーの総菜売場をじっくり見てみると、①お客のニーズに合わせた量目の展開(小容量サイズの充実)、②ユニークかつクオリティの高いメニューの提供(飲食店や専門店に比肩するレベルの追求)、③手に取りやすい価格設定(弁当含め多くの商品が500円以下)といったことが徹底されていることがわかる。

 いわゆる「新しい生活様式」が浸透していく中で、家でこだわりの素材を使って料理したり、飲食店のテイクアウトや全国の銘店からの”お取り寄せ”などを利用したりして「内食」のクオリティを追求する消費者は増えていく可能性が高い。そのなかでスーパーの総菜は、ただ「時短」「即食」をアピールして漫然と商品を売場に並べているだけでは、顧客からの支持を集めることは難しくなっていくだろう。”総菜革新”に向けて早めに手を打つなら、今改めてヤオコーの総菜開発力の高さに注目すべきかもしれない。