6月1日、セブン&アイ・ホールディングス(東京都/井阪隆一社長:以下、セブン&アイ)の完全子会社であるヨークマートが商号変更し、新会社ヨーク(東京都/大竹正人社長)が発足した。セブン&アイが首都圏で展開する食品スーパーを傘下に統合し「首都圏食品戦略」を推進させる。
そうしたなか17日、ヨークが旗艦店と位置付ける「ヨークフーズ新宿富久店」(東京都新宿区:以下、新宿富久店)がオープンした。どのような店づくりを行っているのかーーー。
「食品館」を全面刷新
今後の都市型店の標準に
今回の統合で、イトーヨーカ堂(東京都/三枝富博社長)の都市型食品スーパー「食品館」とディスカウントストア(DS)「ザ・プライス」の計20店を承継したヨーク。6月5日には19店の屋号を「ヨークフーズ」「ヨークプライス」に転換した。
そして17日に開店した新宿富久店は、「イトーヨーカドー食品館新宿富久店」から屋号を転換するだけでなく、商品政策(MD)から売場レイアウト、オペレーションまで大きく変えた初の店舗だ。ヨークにとって「旗艦店であり、都市型店の標準となる店」(ヨーク執行役員企画財務室長の岡田太郎氏)だという。
新規MDで昼食需要を奪取
転換前より年商1割増をめざす
新宿富久店は、転換前と比較して年間売上高の約1割増を目標に掲げている。「食品館」時代とは具体的に何を変えてこれを達成するのか。
まず商品面では、「ヨークマート」でノウハウを積み重ねてきた新規MDを投入する。具体的には、総菜売場で店頭の素材を使い店内調理する魚総菜やサラダを販売。またインストアベーカリーの「Bonheur(ボヌール)」を新設した。
総菜売場は転換前と比較して1.2倍に拡大したほか、併設するイートインコーナーにはセルフレジを導入して即食商品だけを短時間で購入できる利便性も提供する。そうすることで、店舗周辺に多いオフィスに勤務する、ビジネスパーソンの昼食ニーズをこれまで以上に獲得したい考えだ。
生鮮食品や総菜売場では、店内加工の商品の販売に力を注ぐ。競争の激しい首都圏では、そうした来店動機を創出できる商品の提供がカギになるとして転換前よりその比率を高めている。
加工食品売場のゴンドラ本数を1.4倍に
売場レイアウトは、2019年7月に改装した「ヨークマート中町店」(東京都世田谷区)をモデルにしているという。メーン出入口には、青果と総菜を集中配置して、鮮度感や出来たて感を訴求。通路幅も広く確保し、快適な買物環境を提供できるようにしている。
新宿富久店の売場面積は1648㎡で、取り扱いSKU数は約9800。転換前よりSKU数はデイリー商品と日用雑貨を中心に1割ほど絞り込んだ。
一方で拡充したのが加工食品だ。ゴンドラの数を1.4倍に増やし、昼食ニーズを取り込むべくフリーズドライのスープをはじめとした簡便商品のほか、都市部での需要を見込み、アジア・エスニック料理の材料を豊富に揃えて提案している。
売場の各所に“ヨークベニマル流”を導入
ヨークの前身であるヨークマートは、2010年頃から同じセブン&アイグループのヨークベニマル(福島県/真船幸夫社長)との「食品スーパー事業統合」を推進。店舗運営や売場づくりのノウハウを取り入れることで競争力を向上させてきた。新宿富久店では、そうした“ヨークベニマル流”の取り組みや商品も多く見られる。
「ニューオペレーション」で作業効率化も同時に推進!
店内加工や提案型の売場づくりに注力するとともに進めるのが、生産性の向上だ。
「ヨークマート」では、トヨタ生産方式の「カイゼン」の考えを取り入れた作業改善施策「ニューオペレーション」を推進しており、ヨークはこれに今回統合したDS「ザ・プライス」のローコスト運営の施策も導入しながら、店舗オペレーションのいっそうの効率化を図る考えだ。
ヨークは今後、同店での成功例をほかの都市部立地の「ヨークフーズ」に導入していく計画だ。セブン&アイのグループ力を発揮することで、首都圏の都市部立地でも存在感を発揮できるか。まずは新宿富久店がその試金石になると言えるだろう。
【ヨークフーズ新宿富久店 概要】
住所 東京都新宿区富久町17 -2
営業時間 10:00~23:00
売場面積 1648㎡
取り扱いSKU数 約9800SKU
従業員数 86人(うち正社員21人)
駐車台数 47台