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「1日100食」しか販売しない佰食屋がこれ以上働かないために決めた信念

「1日100食」しか売らない売上至上主義と決別し国産ステーキ丼専門店「佰食屋」。どんなに売れても100食という制約が労働時間短縮で残業ゼロ、フードロスでの経費削減、給料は百貨店並み―と既存の飲食店のビジネスモデルや常識を一変させた。その仕組みの根底にあるのは、これからいかに働き方をいかに変えていくかへの問いかけでもある。創業者、中村朱美氏の著書「売上を、減らそう。」からその一部をお届けする。

売上至上主義、長時間労働が当たり前ともいえる飲食業界。「1日100食限定」佰食屋が目指したのはその真逆のビジネスモデルだ

「これ以上は働かない」は最適解

 いま、さまざまなところで「人生100年時代」という言葉が飛び交います。現に、すでにそういう時代になっていると言えるかもしれません。

 60歳で定年しても、まだまだ働ける。年金受給がはじまる 65 歳までのブランクを埋めるべく、元の会社で再雇用されたり、シルバー人材センターで仕事を探したり……。それでも「この歳で新しい仕事が見つかるだろうか」「お金は足りるだろうか」と、不安は尽きません。

 そして、多くの人が求めているのは、「年商数百億を稼いで、会社を成長させていく」でも「年収数千万をかせいで、立派な家と車を買い、贅沢な暮らしをする」でもありません。もっと穏やかな成功……自分が「欲しい」と思ったものを、無理なくボーナスで買えたり、毎月ちょっとおいしいものを食べにいったり、いまの暮らしがほんの少しよくなれば、ラクになればいいな、という、等身大の願いのはずです。そんな人にとって、佰食屋の「これ以上は売らない」「これ以上は働かない」と決めるビジネスモデルは、きっと最適解なのではないでしょうか。

・働き方を極限まで絞ることで売上を上げているお店

・働き方の形は自分の人生に照らし合わせて決めることができる

 まさに、この 2 つを体現しています。

 けれどもそれは、なにも働くことを忌み嫌うことではありません。あらかじめ決めた業務量を、時間内でしっかりこなし、最大限の成果を挙げる。そして残りの時間を、自分の好きなように使う、ということです。

 もはや、かつて「当たり前」とされていた働き方は、過去のものとなりました。定年まで勤め上げれば、退職金をもらえ、潤沢な厚生年金を受け取ることができました。転勤を命じられても、勤め続けさえすれば、出世やポストを約束してもらえる。だから、どんなに長時間労働でも、単身赴任になっても、文句 1 つ言わずに働き続けてこられたのです。

 けれどもいまや、どうでしょう。我慢し続けて、やっとそれなりに給与をもらえて、役職に就くこともできた途端に、リストラに遭ったり、会社が倒産したりしてしまいます。つまり、これまでの働き方は、決して「持続可能」なものではなかったのです。

これ以上売らない、働かないと決めてみる

 20 30 代の方にとっては転職も当たり前になり、いまいる会社よりもよい条件で雇ってくれる会社があれば、すぐに転職します。大企業でも副業が解禁になり、自分の好きなこと、やりたいことを仕事に、と新しいことをはじめている人がいます。

 人々の働き方は、まさにいま転換期を迎えています。どんな働き方が、いちばん幸せになれるのでしょうか。それは、人によっても違うでしょう。「穏やかな成功」ができればいいと思う人もいれば、「いやいや、もっとバリバリ稼ぎたい」という人もいる。それぞれの選択があります。

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けれどもたしかに言えることが、 1 つあります。どんな人生を望む人も、「持続可能」な働き方をしたほうがいい、ということ。「今後のために貯金している」。けれどもそれは、日本円の価値が揺らがないことを前提とした考え方です。もし仮に、突然インフレが起こって、日本円の価値が 10 分の1 になったら?1000万円の貯金が、あっという間に100万円です。そんなことは起こらない? 本当にそうでしょうか。

 隣の韓国では約 50 年前に、北朝鮮では10 年前に通貨危機が起こり、大幅に通貨価値が下がったことがあります。貯金が将来への不安をかき消す材料にはならないとすれば、どうすればいいでしょうか。

 それは……無理せず働き続けることができる「持続可能な働き方」を自分の手でつかむことです。どんな時代になっても、どんな状況になっても稼げる仕組みをつくること、その力を持つこと。そして、自分の欲しい人生、それが年収500万円であろうと、1000万円であろうと、「これ以上は売らない」「これ以上は働かない」と決めること。

 世の中に数ある業界のなかで、もっとも「働き方改革」からかけ離れた、ブラックな労働環境が当たり前となっていた飲食業界で、佰食屋はこの新しい働き方を実現させました。それなら、きっとほかの業界、ほかの業種でも実現できるのではないでしょうか。