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新型コロナウイルス禍 ドラッグストアで食品の欠品が増える理由と対策

新型コロナウイルス騒動により、ドラッグストア(DgS)は店舗によっては食品コーナーの欠品が目立つようになった。スーパーマーケット(SM)ではインスタント麺や冷凍食品など品薄のカテゴリーもあるが、DgSほどではない。なぜか?

トイレロールやティッシュペーパーの品切れは徐々に解消されつつある

考えられる食品の欠品理由は3つ

 DgS店舗における食品の欠品状況は企業単位で大きく異なるように筆者には見える。要因として、①メーカーもしくはベンダーから仕入れる時点の欠品増加、②発注(予測)精度の低さで需要変化に対応できていない、③商品の品出しが間に合わない――の3つが考えられる。このうちどれが要因(複数の場合もある)でその対策はどうすべきかについて以下で、考えられる要因別に解説していきたい。

 ①メーカー・ベンダー欠品増加

 DgSの店頭で働く人にヒアリングをしたところ、納豆、インスタント麺など一部商品を除くとそれほど欠品は起きていないということだった。つまり、今回はSMよりも食品のバイイングパワーが弱いからということではない。

②発注の課題

 多くのDgSでは自動発注と手動発注を併用している。自動発注比率を高めることで日常の作業を減らすことができるが、急な需要の変動に対応することが難しくなる。

 自動発注で需要変動に対応する方法として、まず売上の異常値を検知する必要がある。システム化できていないのであれば、本部でPOSデータから単品及び中小分類レベルのカテゴリー単位で異常値を検出して店舗に情報を与えるなどの手法が考えられる。

図表 発注量のコントロールイメージ

 次に、発注量のコントロールを行う。発注点補充点方式(発注点を下回ったら補充点までの量を発注する方式)であれば、設定を変更することになる。セルワンバイワン方式(一つ売れると一つ発注がかかる)方式であれば、在庫を増やす補充発注を行う。

 一時的な需要増加は必ず再度変化する。より需要が増えることもあれば、需要が一時的に通常以下に減ったあと通常時に戻ることもある。この異常値に関しての検知とメンテナンスも忘れてはならない。

 手動発注の比率が高い店舗であれば、欠品の多い自動発注カテゴリーを一時的に手動発注にすることが最もシンプルな手法と考えられる。

 

補充するまでの間にすべて売れる

③荷出し・補充が間に合わない

 DgSSMよりも商品回転率が低い。そのため、DgSの棚は一般的にSMよりも奥行きが浅いものを使用することが多い。

 食品コーナーの什器だけ棚の奥行きを深くするなど工夫をしているところは別として、店舗内をほぼ同じ什器で構成している店では、カップ麺などがケース入数の20個入荷したときに20個全部並ばずに、棚上在庫スペースか倉庫に持ち帰ることとなる。棚に8個並ぶとして、通常時は1日数回補充作業をすれば問題がない。

 ところが、まとめ買いが発生する事態になると、補充するまでの間に8個全部売れてしまうことが多くなる。補充頻度を増やして対応することになるが、新型コロナウイルス感染拡大の影響でそうはできない状況になっている。電話も含めたマスク等問合せがここで影響しているのである。「#ドラッグストアの現状」タグでTwitterを検索してみていただきたい。開店前からのマスク対応で店舗従業員は疲弊しきっている。

 対策としては、食品コーナーの棚の奥行きを深くする方法と、SKU数を絞り込んで1SKU当たりの陳列個数を増やす手法が考えられる。

  繰り返しになるが、DgSの店舗従業員は疲弊している。店舗従業員の心身両面における負担を少しでも軽減するために、問合せを本部コールセンターに集約する、本部スタッフはリモートワークの仕組みを検討する前に店舗の品出し応援に行く等、本部・店舗が一体となってこの事態に取り組む必要がある。