メニュー

手間をかけず、技術職人要らず 人手不足のなか、進化する外食業界の最先端

肉ブームは続いているのか。外食・飲食業界向けに行われた専門展示会「ミートフードEXPO焼肉ビジネスフェア2020」(主催・焼肉ビジネスフェア実行委員、1月22日、23日)を覗いて、新機軸を打ち出す企業を求めて現場取材をレポートする。

 手間をかけず、技術職人が要らず

ニックフーズは真空調理と特定加熱の技法を取り入れた商品を打ち出し、店舗作業を極力減らす商品を提供

 人手不足に悩む外食・飲食業界に何を提案しているのか。「居酒屋、飲食店の景気は低迷気味、肉ブームの勢いは少し下り気味だが、まだ続いている」というのが展示企業の数社の共通した意見だった。新機軸を打ち出している企業の動きから、「店舗の生産性効率アップ、手間暇をかけられない業務をサポートする仕組みやツール」などが目立った。

 ジャムキチフーズ(広島県呉市)の展示コーナーの前で陣頭指揮を執る梶勇二郎社長は「仕込みの手間なし、人件費削減。技術職人不要で、急速凍結で歩留まりの計算のいらない『IQF商品』(一口カットバラバラ瞬間凍結)を提供しています。手応えありますね」という。

 ホテルやレストランのセカンドキッチンとしてメニューを提案するニックフーズ(東京都中野区)の岡野勇部長は「真空調理と特定加熱の技法を取り入れた商品(「合鴨ロース 真空調理」と「特定加熱豚とろ(豚ネック)味付無」)を打ち出しています。店舗レベルで極力手間をかけない商品を提供しています」という。

かき氷の業務シェアナンバーワン、中部コーポレーションは冷凍フルーツを削って作る新マシーンを開発

 業務用かき氷シェアナンバーワンの中部コーポレーション〈三重県桑名市〉は冷凍フルーツを削って作る新マシーン(Hatsuyukiのマルチスライサー)を発売。「冷凍の果物を削って“かき氷”を販売しませんか、と呼びかけています。独特の食感で風味を楽しめます。特に人気はイチゴ、飲食店やレストランはもちろん、イチゴ農園など、旬で多量の収穫時に冷凍フルーツでストックできます。廃棄ロスの削減にもつながります」(展示を担当していた同社フード第一事業部の寺村直哉氏)

 全国の飲食店をターゲットに初出展した農事組合法人黒沢牧場(和歌山県海南市)は自社の商品(アイスクリーム、スイーツ、牛乳)をアピールした。外販部の上芝尚子氏は「“山地周年放牧”という高原の草を食べて育った希少な生乳をベースにしています。乳脂肪は通年4%以上をキープしているのが特徴です」という。少量だが希少価値を前面に打ち出して営業展開を始めています。

 店舗運営の効率化の策次々に

 冷凍技術は例年進化して店舗の生産性効率アップにつながっている。独自の冷凍技術を提案しているのがテクニカン(横浜市)。同社が開発した凍結機「凍眠」は農水産などの第一産業から外食・中食、医療分野まで、冷凍の常識を変えている。一般に普及しているエアブラストという冷却方法だが、凍結に時間がかかり、冷凍ムラや冷凍焼けが生じやすいといわれる。解凍後、食材の味や品質が落ちたりするケースもある。

 一方、「凍眠」は、真空パックした食材を液体急速凍結(リキッド凍結)している。通常冷凍の約20分の1の時間で凍結できる。ドリップがほとんど発生せず、うまみ成分が食材から流出しないため、食感も変わらない。肉や魚、野菜を始め、調理済み食品、日本酒など、今まで冷凍が難しかった食材も凍結可能にしている。しかも、店舗レベルで凍結できる仕様(サイズは幅500ミリ、奥行き480ミリ、高さ805ミリ)になっている。

 同社の新機軸といえば、昨年8月、伊藤忠食品と業務提携を結び、共同で冷凍食品ブランド「凍眠市場(とうみんいちば)」を打ち上げている。余剰食材を冷凍するだけでなく、旬で安くなる食材を液体急速凍結で、原料費削減や廃棄ロスによる店舗の生産性アップを狙っている。

店舗のモバイルオーダーサービスのシステムを提供するShowcase Gig

 スマホ時代に対応した店舗のモバイルオーダーサービス「O:der〈オーダー〉」を提供するのがShowcase Gig(ショーケース・ギグ、東京都港区)である。ホール業務の人員不足と課題改善に効果を発揮するシステムである。お客が自身のスマートフォンで注文と会計を行うサービス「SelfU(セルフ)」である。同社の営業本部の田端諒氏は「お客が楽しみながら、じっくり注文ができます。調理場ではプリンタから出力された調理伝票を見て調理が始まります」という。

 展示会を回ってみての感想は、人手不足を補うために、店舗の業務アップのサポートの策を打ち出すのが目立っている。食材一つにしても、手間をかけない、職人技術不要の食材提供など。また、スマホ対応の新システムが登場するなど、店舗運営の効率化のサポート策が目立ち始めている。