「ダイヤモンド・チェーンストア」誌の毎年恒例企画である「STORE OF THE YEAR」を決定する時期がやってきた。2019年にオープン・改装した店舗の中から業界で高い評価を得た店舗を表彰する企画で、1月15日~1月31日まで一般投票を受け付けている(投票は終了しました)。そこで本記事では、同企画のノミネート店舗から見る、最新の店づくりの4つのトレンドをまとめた。
店舗トレンド①
大手小売業が新たな
業態、フォーマットを開発
人口減により国内マーケットが縮小するなか、小売業は成長を続けるために、これまでの店づくり・サービスからの変革を求められている。そうしたなか2019年は大手を中心に、新業態や新フォーマット開発にチャレンジする動きが目立った。
なかでも注目を集めたのが、セブン&アイ・ホールディングス(東京都:以下、セブン&アイ)がオープンした新業態「コンフォートマーケット中延店」(東京都品川区)だ。「これからの消費者ニーズに対応できる店の創造」をめざす実験店で、新しい発想で店づくりを行うべく100%子会社のフォーキャスト(東京都)を新たに立ち上げ開発した点も話題となった。
同店は店づくりのテーマに「べんりでゆたか」を掲げ、新しい取引先メーカーと手を組み、有名シェフ監修による総菜や、高品質な冷凍食品の販売に挑戦。また、買物の時短ニーズへの対応を目的とした新サービスで、専用アプリで商品を購入し、店頭で受け取れる「FOODロッカーサービス」も導入している。セブン&アイはこれらの実験を通じて新たな業態開発を進めるとともに、ここで培ったノウハウをグループ各社にも波及させたい考えだ。
ライフコーポレーション(大阪府)は、大阪府の中心部に、新フォーマット1号店「Miniel(ミニエル)西本町店」(大阪府大阪市:以下、ミニエル)をオープンした。人口が流入する都市部攻略のために開発した都市型小型フォーマットで、売場面積は251㎡。ホームセンター企業のコーナン商事(大阪府)が開発した「ホームセンターコーナン西本町店」の1階部分にテナントとして入居している。
同店は「街にくらす人、はたらく人の『ちょうどいい』が揃う場所」をコンセプトに、少人数世帯とオフィスワーカーをメーンターゲットに「簡便」「即食」商品の販売を強化している点が特徴だ。
なかでも総菜部門は売場面積が限られているなか、店内加工のほか、近隣の既存店「阿波座駅前店」や市内にあるプロセスセンターから商品を供給することで約180SKUという幅広い品揃えを実現。総菜だけで売上高構成比の約4割を見込む。同社は同フォーマットを確立し近畿圏だけでなく首都圏でも出店していきたいとしている。
店舗トレンド②
ディスカウントストアの進化
19年は大きな出来事として10月に消費税の10%への増税があった。消費者の節約志向がさらに高まることが想定されるなか、これを商機にしようとディスカウントストア(DS)が攻勢を強めている。最近では低価格なだけでなく、質をともなった商品・サービスを提供する動きが見られ、その存在感が増している。
たとえばイオングループ傘下で小型DSを展開するビッグ・エー(東京都)は、19年7月に改装オープンした「ビッグ・エー足立扇店」(東京都足立区)で、欧米で勢力を拡大中のアルディ・リドルをベンチマークした店づくりにチャレンジしている。
同店は、青果売場ではスポット照明を活用して、これまでのDSのイメージを払しょくする売場づくりに注力。また、定期的に品揃えを変えて、お買得価格でありながら利便性の高い日用雑貨や小型家電を販売する専用コーナーを設置し、いつも「新しい発見」のある店をめざしている。
店舗トレンド③
デジタルを活用した
スマートストア開発
人手不足が深刻化するなか、生産性の向上は小売企業にとって喫緊の課題だ。そうしたなか各社は、できるだけ人手をかけずに、質の高い商品・サービスの提供を可能にする店づくりを推し進めている。
なかでも先進的な存在がトライアルホールディングス(福岡県)だ。同社は18年から機械やAIを活用した「スマートストア」の出店をスタート。19年4月には改装により、食品・衣料・家電・住居関連品をフルラインで揃えた大型スマートストアの1号店として「メガセンタートライアル新宮店」(福岡県糟屋郡)を開業した。
同店では約3600坪の広大な売場に計1500台のAIカメラと計200台のデジタルサイネージを設置。AIカメラのデータ解析機能を生かし、商品の欠品を効率的に防止するとともに、顧客に応じた商品広告をサイネージで映して、売場での提案力を高めている。
店舗トレンド④
他業態による
食品強化店の出店
「食」は消費者の日常的な来店動機を生み出せることから近年、ドラッグストアやホームセンターなどの他業態による食品を強化した店舗の出店が加速している。
そうしたなか19年に話題を集めたのが、「無印良品」を展開する良品計画(東京都)だ。同社は18年3月、増床オープンした「イオンモール堺北花田」(大阪府堺市)に初めて生鮮4部門を揃える店を出店。19年にも、レストランとホテルを併設し「世界旗艦店」と位置付ける「無印良品銀座」(東京都中央区)、地元の生産者と消費者の接点づくりに力を入れる「無印良品京都山科」(京都府山科区:以下、京都山科店)と2つの食品強化店舗を開店した。
なかでも最新店舗である京都山科店では、「地域のくらしの拠りどころ」をめざし、1号店の3倍以上の数の地元企業や生産者と協業。とくに素材の「加工」にこだわる地域の専門店をテナントとして誘致し、ともに食品売場とフ―ドコートをつくりあげた。このように他業態が食マーケットへの侵攻を強め、提案のノウハウを着実に蓄積させている。
本記事で触れた店舗以外にも2019年は各社が総力を結集させた、さまざまな店舗がオープンした。果たして最も高い評価を得て「STORE OF THE YEAR 2020」に輝くのはどの店舗なのか。
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