日本リテイリングセンターを創設した故渥美俊一さんは、読売新聞社に在籍した当時、子供たちが寝た後に帰宅し、起きる前に出社、土・日曜日も休まないという毎日を送っていたという。
いまどきの家庭人としては失格の烙印が押されてしまうことうけあいだが、そんな中にあって、子供たちが鮮明に覚えている言葉がある。
「学業で1番の成績を取れ」というものだ。
真意にあるのは、“いい大学”に入学して、“いい会社”に就職しろということではない。
「人間が一生を賭けて、社会に貢献しようとすれば、誰にも負けない良い知識が必要になる。だから1番になれ」
世に貢献するための自己研鑽
私なりに解釈するなら、たとえば、不治の病とも言われる癌を撲滅するためには、学界で1番の実力をもって、癌医療の最前線にポジションを取り、最先端の治療法を開発する必要がある。
癌撲滅には、医学界の最前線で癌と対峙することが重要なのであり、やっぱり2番手に甘んじていてはだめなのである。
その時に決め手になるのは知識であり、その分野で1番になることだろう。
「人の世に貢献するために、自分を研鑽せよ」。
渥美さんの言葉は、自分さえよければいいといういまの世の風潮を真っ向から批判するとともに、「革命」の精神を後生に提示していると言ってよい。
その渥美さんが亡くなってから、この7月21日で丸14年の歳月が過ぎていく。