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餃子居酒屋ブームの火付け役 上場果たしたダンダダン酒場の強さの秘密

ここ数年、IPO(新規上場)市場が活発だ。2015年以降、現在に至るまで、毎年90社前後の企業が上場を果たしていて、19年もその傾向に変わりはない。だが、ここ最近は、クラウド、AI(人工知能)、ビッグデータ、プラットフォームなどをはじめ、最近広く知られるようになったキーワードを含むIT系(ITを利活用したサービス含む)企業が圧倒的に多くなっている。そのなかで、決して新しい業態とはいえない外食業界からは2019年2社が新規上場を果たした。その1社が今回紹介する、餃子居酒屋「ダンダダン酒場」の直営およびFC運営事業を営むNATTY SWANKY(東京都/井石裕二社長)だ。

餃子居酒屋という新しいジャンルをつくり、快進撃を続けるNATTY SWANKY

ほぼ全員が注文する核メニューと“働きがい”が強み

 19328日、東証マザーズに上場したNATTY SWANKYは、2001年8月の設立。「餃子をつまみにお酒を飲む」というスタイルで、新しい飲食業帯を確立、餃子居酒屋ブームの火付け役となった。餃子の大好きな俺たちが研究に研究を重ねて創りあげたこの餃子をもっと多くの人に食べていただきたい!という思いを、“餃子とビールは文化です”というメッセージに乗せて訴求している。

 企業理念は「街に永く愛される粋で鯔背な店づくり~期待以上が当り前 それが我等の心意気~」。

 スタッフ全員が、「向上心(現状に満足せず、今よりも成長するという強い意思を持ち続ける)」、「好奇心(何人や何事にも関心を持ち、新しい事を発見する)」、「探究心(足元を振り返り、目の前のものを突き詰める)」、「自立心(決して人のせいにせず、何事もまずは自分に責任があると思う)」、「忠誠心(関わる全ての人々に感謝し、忠誠を尽くし、恩返しをする)」の5つの心を大切に、日々の店舗運営に取り組む。2018年には「働きがいのある会社ランキング」ベストカンパニー を受賞した。

 同社の強みは、まず第一が「独自製法による肉汁餃子」。何もつけずにそのまま美味しく食べられ、ほぼ全員が注文するという。次に「接客」。挨拶・笑顔・声出しを徹底し、接客の指針「ダンダダン酒場の20大行動」を浸透させている。3番目が「店舗」。地域に合わせた店舗づくりを行っており、また、オープン時には社員一人ひとりが、店内に装飾を加えたり、思いを文字にしたりする“入魂作業”を実施する。チェーン展開とはいえ、どの店をとっても、オリジナルなものにできあがっている。そして「豊富な出店余地」。乗降客数3万人以上の駅を出店基準に設けているが、全国411駅、13県で263駅あるとされ、20196月期時点で、店舗数は76店舗にとどまっており、まだまだ十分な出店余地があると考えている。

   

社内の“最強メンバー”のスキルを、お客になって全員で学ぶ!

 今後の戦略については、まず、何はさておき、人材の確保だ。同社では、「最強店舗」と称し、1000人超の店舗スタッフのなかから最強のメンバーを選抜し、そのメンバーで3日間、店舗を運営するというイベントを行っている。選抜メンバー以外が顧客となり、最強メンバーたちのスキルを顧客の立場に立って学ぶことができる。教育の強化にも注力をする。130項目からなる評価項目を日常的にチェックさせ、期待される人材像を早期に理解できるようにする。理念行動、事例共有も徹底する。

 出店戦略は、首都圏13県で直営、その他でFC(愛知、福岡、仙台に出店)展開というのが基本だ。

「大手の餃子専門チェーンは食事がメイン。当社のダンダダン酒場は居酒屋業態、顧客層はかぶらず、同じ立地でも共存できる」(井石社長)

 上場初値は3930円。公募価格を20.18%上回った。

 20196月期決算は、売上高は前期比35.5%増の39億円、営業利益は同88.1%増の3億円。新規出店17店舗で、期末の総店舗数は76店舗(直営58店舗、FC18店舗)になった。ただ、都心店舗は好調を維持したものの、既存店の対前年比は、売上げ98.8%、客数98.3%、客単価100.5%と、勢いを持続できていない。

 20206月期については、直営15店舗、FC5店舗の計20店舗の出店を計画。売上高は同25.5%増の50億円、営業利益は同36.1%増の4億円を見込んでいる。

 

企業概要
社名 NATTY SWANKY
本社 東京都新宿区西新宿1-19-8

代表者 井石裕二社長
設立 2001年8月1日

資本金 763,845,380円
売上高 39億3800万円(35.5%増)
経常利益 2億9700万円(88.5%増) 
※売上・経常利益は19年6月期