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ローソン 新春インタビュー 竹増社長が見据える「次世代のコンビニ」とは

コンビニエンスストア業界にとって2019年度は、“24時間営業問題”の発生や、大手3社が揃って出店スピードを減速しこれまでの成長戦略からの転換を図るなど、まさに激動の1年だったと言える。そうしたなか19年度に進めた施策の現状と今後の方針、そしてローソンがめざす「次世代コンビニ」の姿をローソン(東京都)の竹増貞信社長が語った。
※本稿は12月19日にメディア向けに行われた合同記者会見の内容をインタビュー形式にまとめたものです 

人手不足が深刻化するなか
「複数店経営」を推進

──2019年度はローソンにとってどのような1年でしたか。

竹増  19年度は、現場の労働力不足を発端に、加盟店が24時間営業の見直しを訴える“24時間営業問題”が発生して社会問題化し、コンビニエンスストアビジネスのあり方が問われた1年でした。

 ここまで大きな問題に発展した要因は、コンビニエンスストア企業が構築してきたビジネスモデルと社会の常識との間にいつの間にか“ズレ”が 生じていたことだと考えています。そこでローソンでは現在、有識者会議への出席や、報道各社とのコミュニケーションを積極的に行うようにしています 。そうして社会の声に耳を傾け、真摯に向き合うことが、現代の社会に合ったかたちでの事業の推進につながると思います。

──19年4月には、コンビニエンスストア大手3社が加盟店への支援策をまとめた「行動計画」を発表しました。なかでもローソンは、1人の加盟店オーナーが複数店舗の経営に当たる「複数店経営」を後押しする、新しいフランチャイズ契約パッケージの導入の検討を盛り込みました。

竹増  これまでもローソンは、加盟 店オーナーさまの 経営の安定化 を目的に、複数店経営を推奨しており、今では店舗全体に占め る約7割が複数店経営によるものです。人手不足が深刻化するなか店数を増やしていくためにも、これをさらに推進していく考えです。

 新パッケージについて現段階では導入時期をはじめ詳細は話せませんが、加盟店オーナーさまが不安なく複数店経営に踏み出せるような支援ができる内容にしていきます。

──19年度、大手3社が揃って出店スピードを減速しました。コンビニエンスストアの店舗数は“飽和”していると思いますか。

竹増 今の商品とサービスのままでは飽和状態にあると考えています。そこで、いかに新たな付加価値をつけて、現在の“踊り場” を突破し成長していけるかが重要です。

 コンビニエンスストアのビジネス領域には無限のチャンスが広がっています。 リアル店舗、そこで働く従業員、多くの 店が24時間営業というインフ ラとしての 機能は、デジタルを合わせることで 、さらなる価値を生み出せるはずです。また、店舗に集 まる膨大な消費者データを、収 益を生み出せるサービスに変えることも可能でしょう。これをいかに地に足がついたかたちで実行していけるかが正念場です。

ローソンの竹増社長

──次世代のコンビニエンスストアのあり方をどのように 考えていますか。 

竹増 昭和と平成の時代では、コンビニエンスストアは全国一律で、平準化さ れたサービスを展開できる基盤の構築に力を注いできました 。しかし今の令和の時代では、それではお客さまに満足いただけま せん。

 デジタル活用についても、都心部にある大手IT企業内では、静脈認証などを活用した無 人店舗でもよいかもしれません が、地方の高齢化が進む地域では、そのような店は逆に不便と感じられてしまうでしょう。

 そうしたなか 、店舗 を支える物流やシステム基盤をデジタルの力で進化させて、店舗形態や 提供できるサービスの選択肢を増やし、その街や個店に合った かたちで使い分けて提供していけるのが次世代コンビニエンスストアモデルではないでしょうか 。

深夜時間帯の無人営業
の実験店で見えたこと

ローソンは人手不足対策として、他社に先駆けデジタル活用に投資を進めてきた

── デジタル活用による、人手不足対策のための省人化の実験も積極的に行っています。19 年8月からは、神奈川県横浜市の店舗で、深夜時間帯(深夜0時から午前5時)における無人営業の実験を行っています。 

竹増  同店の仕組みは、専用アプリ上のQRコードなどにより店舗のドアを解錠し、セルフレジまたは、商品バーコードをセルフスキャンし決済まで行う専用アプリ上の機能「ローソンスマホレジ」で精算したうえで退店できるようにすることで 、売場における無人化を実現するというものです(※ バックヤードでは従業員が1人 勤務)。

 実験で明らかになったのは、 お客さまが必要な商品を提供できなければ利用につながらないということです 。同店では、現在の仕組みでは年齢認証ができないため、深夜時間帯に酒やたばこなどを販売していません。結果、同時間帯の来店客数は実 験前の約30人から5人ほどに減ってしまいました。

 今後は、顔認証をはじめとしたデジタル活用により、無人でありながらも、法律を順守しながら 酒やたばこなどの商品も販売できるような 仕組みを構築したいと考えています。

ヒット商品「バスチー」が誕生
次は即食商品に注力

19年3月に発売したバスク風チーズケーキ「バスチー」は累計販売数 3200万個( 19年12月時点)を超えるヒット商品となった

──消費税増税にともなう「キャッシュレス・ポイント還元事業」 により、コンビニエンスストアでは10月から購入額の2%分のポイント還元をス タートしています 。その効果はいかがですか。

竹増 ポイント還元策により、お客さまの買い上げ点数や客単価 が大きく伸びるほど、消費を喚起する効果があったかというとそうではありません。 しかし、キャッシュレス化の推進にはつながったと思います。バ ーコード 決済事業者によるキャンペーン施策の効果もあり、「 ロ ーソン」におけるキャッシュレス 決済比率は増税前の約20%か ら28%(19年11月時点)へ高まりました 。

 ただし、還元策はあくまで 9カ 月限定であり、これが終了してしまう前に、 お客さまに利用し続けてもらえるような 利便性あるキャッシュレス決済サービスを提供できるかが重要でしょう。当社でも18年9月に開設したローソン銀行 (東京都)において、そのような新しいサービスを構築したいと考えています。

──商品政策 について教えてください。19年度は、バスク風チーズケーキ 「バスチー」が 大ヒットし注目を集めました。

竹増 ローソン は09年にデザ ートシリーズ 「Uchi Café SWEETS」 の展開を開始し、 看板商品ともいえる「プレミアムロールケーキ」 を開発するなど、 スイーツを強みにしてきました 。 し かし近年は競合他社もスイーツに力を入れて きたため、今一度差別化を図るべく同カテゴリーの開発に重点を置きました 。

 同時に商品開発の方針も変えました 。商品開発の担当者には「これまでの枠組みにとらわれ ず自由な発想で商品をつくって いい」 と伝えるようにしたのです 。 そうしたところ「 バスチー」 を筆頭にそれ以降もスイーツカテゴリーでは継続してヒット商品が出るようになりました。

──今後、重点を置くカテゴリーは何でしょうか。  

竹増 やはりニーズの高まる即食商品です。これまでは、1 つの商品で食事が完結する、弁当を中心に揃えていました 。しかし今後はサラダや和洋総菜、スープ などを拡充し、商品を組みあわ せて購入するような、 お客さまに 選ぶ楽しさを提供できる品揃えを実現したいと考えています。

 また、 お客さまから好評を得ていることから、店内調理で出来たての弁当やサンドイッチを販売 する「まちかど厨房」コーナーの設置もいっそう進めていきます 。 売れ行きのよさから導入を希望する加盟店オーナーさまが多く、 設置店舗数は現在約6000店まで広がっています。