北陸地方を中心に関西から東北にかけてドラッグストアを展開するクスリのアオキホールディングス(石川県:以下、クスリのアオキHD)。今期(2020年5月期)中に売上高3000億円の達成をめざし積極的な出店戦略を進める同社だが、第2四半期決算では約10年ぶりの業績予想の下方修正を行うなど成長に陰りが見えてきた。その背景にあるものとは。
中計目標「売上高3000億円」の達成は難しい見通し
クスリのアオキHDの20年5月期の第2四半期決算(連結)は、売上高が1464億円(対前年同期比19.8%増)、営業利益が66億円(同2.8%減)、経常利益が68億円(同2.7%減)、最終利益は48億円(同5.1%減)で増収減益となった。
これに伴い同社は通期業績予想の修正を発表。売上高は3000億円で据え置いたものの、営業利益は125億円、経常利益は129億円で、それぞれ期初の予想値からおよそ24億円・増減率にして約16%の下方修正を行った。クスリのアオキHDが業績予想の下方修正を行うのはおよそ10年ぶりのことだ。
もっとも、トップラインも心許ない。3000億円という数字は、6カ年の中期経営計画で定めた「20年5月期に売上高3000億円達成」という目標をそのまま盛り込んだもの。しかし19年5月期の連結売上高は2508億円にとどまる。目標達成にはこの1年間で約500億円の積み増しが必要であることを考えると、極めて困難な情勢だ。
高速出店による人材の”希薄化”が顕著に
苦戦の要因について、青木社長は市場環境の変化を挙げた。決算説明時の発言を引用・要約すると次のとおりだ。「3000億円という目標に対して過度な価格政策と販促策をとったことが影響した。(ドラッグストア業界では)大手の寡占化が年々加速している。大手は毎月100店舗前後の出店を進めていて、地方の食品スーパーやコンビニ、そしてネット通販といった他業態との競争が激化している。(中計スタート時の)6年前は地方企業(ローカルチェーン)との闘いだったが、今は既存・新規エリアともに大手との戦いになっている。体力的に強い大手とぶち当たると、どうしても価格と販促に注力せざるを得ず、それが年々ボディブローのように効いてきている」
これに加えて青木社長は、「高速出店・大量採用による人材の希薄化」にも言及。売上を求めて積極的な出店を行った一方、人手不足の問題も手伝い、スキルを持った人材を各店舗に配置することが難しくなっているとした。店舗運営力の低下によって、セール商品の品出しや売場づくりが遅れるといったケースがすでに見られているという。
また、外部の顧客満足度調査ではかつては業界1位を誇った時期もあったが、18年には25位にまで低下。社内に「能力開発室」を設置し初期教育を強化した結果、最新調査では9位まで順位を回復したが、「H&BC(ヘルス&ビューティーケア)・OTC部門での接客やトラブル対応など、教育に時間がかかる部分での顧客評価はまだ低い」(青木社長)。H&BCやOTCはドラッグストアにとって収益部門であり、「(全体の)粗利率が改善しない要因の1つにもなっている」と青木社長は指摘した。
出店エリア拡大の方針にブレはなし
いずれにしても、「売上を取れば利益がついてくるといった流れが止まった」と青木社長が言うように、「売上重視」の経営スタイルが行き詰まりを見せていることは明らかだろう。「これまでは売上さえ目標に到達すれば、社内では『うまくいっている』と評価されていた。しかし今後は利益面での分析というのもエリアごと、店舗ごとに行っていかなければならないと思っている」(青木社長)。
とはいえ、積極出店の姿勢は崩さないようだ。今期の新規出店数は90店舗を計画、新たに岩手県と宮城県へ進出することも発表している。上位寡占化が進むドラッグストア業界において存在感を維持するためには、店数を増やして売上を伸ばし続けるほかないのは確かだ。しかしそれと同時に、収益性の改善、人材確保と教育といった重要課題もクリアすることが求められる。クスリのアオキHDはこの苦境を脱することができるか。