メニュー

変わるヤマダ電機 家電王者が”背水の陣”で奪いにくる「住」分野

今年12月、大塚家具(東京都/大塚久美子社長)を子会社化すると発表したヤマダ電機(群馬県/三嶋恒夫社長)。家電量販店売上高トップの同社は、本業の家電販売で苦戦が続いてきた。今後も本業の苦戦が続くと予想されるなか、同社は“背水の陣”を敷いて、家具やリフォームなど「住」分野を第2の収益の柱に育てようとしている。

ヤマダ電機は新業態「家電住まいる館」を急増させ、「住」分野を強化している

新業態「家電すまいる館」
3年で100店舗体制に!

 ヤマダ電機の2019年3月期業績は、売上高が対前期比1.7%増の1兆6005億円、営業利益が同28.1%減の278億円。3期連続営業減益で、元気がない状態が続いている。家電量販業界は市場規模の頭打ちが続いているうえ、寡占化が進んでおり、業界各社は「非家電」カテゴリーの強化を急いでいる。

ヤマダ電機が住宅分野を強化し始めたのは、11年に住宅メーカーのエス・バイ・エル(現ヤマダホームズ)を買収した頃からである。その後も、水回りメーカーのハウステックや、リフォーム事業のナカヤマなどを傘下に収めるなど、積極的にM&A(合併・買収)を進め、住まい分野のノウハウ、人材を蓄積してきた。

また、17年には住まい分野のMD(商品政策)を強化した新フォーマット「家電住まいる館」を確立。これは、家電を軸に、親和性の高い住宅、リフォーム、住宅設備機器、家具、雑貨、金融商品・不動産情報の提供、カフェコーナーを一体とした業態で、コンセプトは、「『家電から快適住空間』をトータルコーディネート提案する店」だ。

 17年以降、新規出店、改装により店舗数を急激に増やしており、現在、全国で約100店舗を展開する。

19年だけで4社と提携

 19年に入ってからも、ヤマダ電機は住まい分野強化の手を緩めない。

 4月には、ソフトバンク(東京都/宮内謙社長)の子会社であるエンコアードジャパン(東京都/中野明彦社長)と提携。ホームIoTサービス「YAMADAスマートホーム」を全直営店で取り扱い始めた。同商品により、電力量の見える化や、マルチセンサーによる宅内の異常検知、遠隔での家電コントロールなどができる。

 同日、住宅メンテナンスやリフォームを手掛ける家守りホールディングス(東京都/岡田浩一社長)と資本業務提携を発表。家電住まいる館に、住まいの相談窓口となる「家守りステーション」を展開し、サービスを拡充させる。

 さらに、7月にはグループの不動産販売のヤマダ不動産(群馬県/唐澤銀司社長)と全国に約950店舗を持つセンチュリー21・ジャパン(東京都/長田邦裕社長)が業務提携を締結。これにより、家電住まいる館にセンチュリー21加盟店の出店を進めていく。

 これらに加え今年12月、大塚家具の過半数の株式を取得し、子会社化することを発表した。

 ヤマダ電機は、今年だけで住まい分野で4社と提携したことなる。「家電住まいる館」を急拡大させるのと同時並行で、矢継ぎ早にサービス面を拡充させている。

家具と家電、シナジーを出せるか?

ヤマダ電機は今年12月、大塚家具の子会社化を発表した

 約1時間の記者会見では、「(大塚久美子社長と)お父さんとの関係」や「久美子社長の服の色」など、(どうでもいい)質問がなされメディアに取り上げられたが、この統合により、両社はどのようにシナジーを出すことができるのだろうか。

 ヤマダ電機と大塚家具との提携は19年2月より始まった。

 大塚家具で取り扱うソファをヤマダ電機で販売したり、人的交流を進めたりし始めた。7月には大塚家具商品を本格導入した「インテリアリフォームYAMADA前橋店」(群馬県前橋市)をリニュアルオープンさせた。記者会見で山田昇会長は「(コラボ店舗は)とてもいい。ぜひ一度見に来てほしい」と答えるなど、大塚家具とのコラボ店舗の出来に自信を見せた。

 「これまでヤマダ電機で家具を取り扱ってきたが、価格帯は高くても5万円くらい。しかもその価格帯は売れず、2~3万円くらいのものがよく売れていた。コラボ店舗では、大塚家具の10万円の家具も取り扱う。すると、これまで売れなかった5万円代の家具がよく売れるようになった」(山田昇会長)。

 これが記者会見で語ったヤマダ電機側の大塚家具を取り込むメリットである。

来期黒字化をめざす
大塚家具の勝算は?

 たしかに、家具やリフォームを強化しているヤマダ電機にとっては、新たな商品の供給先として大塚家具を利用するのは、理にかなっているように見える。しかし、これまで大塚家具が得意としてきた、「高級路線」のラグジュアリー系商品とヤマダ電機の客層がマッチするかどうかは疑問が残る。

 一方、大塚家具はどう変わるのか。具体的な改革案は、「8Kテレビなど、高級家電と関連販売することで、暮らし全体をサポートするように変えていく」(大塚久美子社長)という点だけだった。店舗数の増減や、売場面積の拡縮については、「構造改革でこの上期までに取り組んできた」と、これ以上は大きく変更するつもりはないという方針だ。

 つまり、ヤマダ電機傘下で大塚家具が新たに取り組むことは、ヤマダ電機への商品供給を拡大することと、自社店舗で家電を販売すること、の2点である。

 大塚家具は「来期に黒字化」することを目標と掲げている。この2~3年、さまざまな改革に取り組み、成果を上げることができなかった大塚家具の厳しい挑戦は続く。

※ヤマダ電機のリフォーム戦略については、『ダイヤモンド・ホームセンター12月15日号』にて詳しくレポートしています。

ダイヤモンド ・ホームセンター2019年12月15日号 「家電量販店が猛攻 リフォーム事業をリフォームする時!!」