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どこまで成長する? 好調・アダストリアの今後を占うキーワードは「共創」と「ライフスタイル」

20232月期決算で売上高が対前期比20.3%増、営業利益は同75.4%増、売上高はグループ連結で過去最高を記録したアダストリア(本部・東京都)。

米ファッションブランド「フォーエバー21」でライセンスビジネスに乗り出し、自社ECサイト「ドットエスティ」では他企業も取り込んでライフスタイル型へのシフトを推進。さらにはエコノミー市場や飲食業界へも参入。20215月より同社を率いる木村治社長が見据える、アダストリアの未来とは。

ライセンスビジネスに進出。第2、第3の矢も

――20229月、「フォーエバー21」のサブライセンス権を獲得しました。

木村 Gate Win(ゲートウィン)という会社を設立し、マスターライセンスを保有する伊藤忠商事と提携して、同ブランドを再び日本で展開できることとなりました。ここに関しては私自ら旗振り役を担って、コロナ禍の中、交渉を進めてきました。

――ライセンスビジネス進出は、業界でも話題となりました。

木村 ブランドを1から作り、出店を増やし、認知度を高めて売上を上げる。これが当社ビジネスのパターンですが、コロナ禍を経験して、知名度を上げるには時間とコストが相当かかることを改めて実感しました。店舗をたくさん出さなくても、知名度を使って効率よく短時間で売上が取れる方法はないか。そこで「ライセンス」に思い至ったのです。

アダストリアが持つ、企画からデザインまで一貫して自社生産できる体制と人材を活用すれば、ブランドの知名度を活用してうまくローカライズできるのではないか。そのタイミングでフォーエバー21の話が出てきたのです。

まずはフォーエバー21を軌道に乗せるのが目下の課題ですが、ライセンスビジネスについては第2、第3の矢も検討しているところです。

アパレルからライフスタイル全般に事業領域を拡大

ドットエスティ画面

――自社ECサイト「ドットエスティ」では20221月よりプラットフォームをオープン化し、他社のブランドや非アパレルも参画しています。

木村 まだ始めたばかりですが、自社以外のブランドや商材が加わることで、新規顧客の相互送客の動きが出ています。

人口減少に加えて、消費者にとっても可処分所得が大きく増えない中で、お金の使い先が分散しています。昔のように洋服ばかり買っている時代でもなくなったからこそ、アパレルだけでなく雑貨や飲食も含めたライフスタイル型を志向するのは、企業として必然の流れだろうと思います。その際に、いかに自社以外の企業と手を組み、私たちの足りない領域を広げていくかが、今後ますます重要なテーマになります。「ドットエスティ」のオープン化にはそういったねらいもあります。

――そのライフスタイル型へのシフトという点では、飲食事業を展開するゼットンの子会社化も注目されています。

木村 アパレルとはまったく異なる飲食のカテゴリーで、しかも100億円クラスの企業がグループに加わったことは、当社にとって相当なインパクトがあります。可能性は無限で、これまでアパレルで培ってきた強みを生かしたいろんなチャレンジができると思っています。

成長著しいエコノミー市場にも参入

グローバルワーク・スマイルシード店舗

――20233月には、グローバルワークの新しいベーシックライン「グローバルワーク・スマイルシード」を立ち上げ、エコノミー市場に参入しました。

木村 「グローバルワーク・スマイルシード」はこの7月にも2店舗をオープンし、現在5店舗と一気に出店態勢をとっています。売上も、対予算比で約110%増と、好調に推移しています。

――エコノミー市場に対しては、将来的に大きな柱となるブランドを確立していくねらいがあるのでしょうか。

木村 考え方はもっとシンプルで、市場が目の前にあって、私たちがやっていないのであれば、そこにはチャンスがある、ということです。あれだけいろんなブランドがあって、そこに手をつけてないのはもったいないなと。とはいえまだ実験段階なので、状況を見ながら、タイミングが来たら一気に出店攻勢をかけていきたいと考えています。

――中国発のECアパレル「シーイン(Shein)」をはじめ、低価格アパレルメーカーが勢いを増しています。この動きはどうみていますか。

木村 私たちも実際に商品も買ってみて、中国での物づくりの仕方などを勉強していますが、正直まだ見えていないところがあります。もう少し様子を見て対応していきたいですね。

――最後に、将来的にアダストリアをどう成長させていきますか。

木村 福田は、何より「人」を大切にするオーナーです。社員一人ひとりをどう成長させて、その家族をどう幸せにするかを真剣に考え、社員の前で語ってきました。その姿を私も傍でずっと見てきましたので、その姿勢は継承していきたいと思っています。

もう一つ、当社は中期経営計画で「アパレルカンパニーからグッドコミュニティ共創カンパニーへ。」と掲げています。これからは自社だけが儲かるような時代ではなくなり、志をともにするパートナーと利益をシェアする時代に転換するとみています。先ほど言った「ドットエスティ」のオープン化戦略も、イズミ(広島県)と業務提携して始めた新ブランドもその考えのもと進めているものです。

木村治社長

いろんな企業とパートナーシップを組みながら、ともに成長できるようなコミュニティを築いていく。それが、経営者としていちばん幸せな経営のあり方ですね。