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百貨店、存在の証明その3 拡大路線も今は昔、出口見えぬそごう・西武改革

セブン&アイ・ホールディングス(東京都)は10月、傘下の百貨店、そごう.西武(東京都)の大胆なリストラ策を打ち出した。不採算の地方店5店の閉鎖、それに伴う人員の削減だ。そごう.西武はこれまでもリストラを繰り返してきた歴史を持つが、浮上の兆しは依然見えないまま。業界関係者からは「百貨店として再浮上する絵姿が見えない。構造改革がまだまだ必要ではないか」という声も聞かれる。

リストラ策に投資家は一定の評価

 10月10日の構造改革発表の翌日11日、セブン&アイの株価は一時、前日比223円高の4386円まで買われ、約半年ぶりの高値をつけた。不振が続くそごう・西武の不採算店の閉鎖や、イトーヨーカ堂の構造改革を、投資家から一定の評価を得た格好だ

 2019年3~8月期業績で赤字に沈んだそごう・西武。10日に打ち出したリストラ策では、来年8月をめどに「西武岡崎店」(愛知県岡崎市)、「西武大津店」(滋賀県大津市)、「そごう西神店」(兵庫県神戸市)、「そごう徳島店」(徳島県徳島市)、21年8月には「そごう川口店」(埼玉県川口市)を閉鎖する。また、21年2月には、「西武秋田店」(秋田県秋田市)、「西武福井店」(福井県福井市)の売場面積を減らすとしている。これらの店舗閉鎖によって、そごう・西武の総店舗数はセブン&アイ傘下に入った当時の3分の1となる10店舗まで減る見通しだ。

 さらに2022年度には社員数を対18年度比で約1300人減らし、人件費86億円を削減する計画を打ち出している。店舗運営の改善策としては、不採算領域への新コンテンツを導入、テナントの戦略的な入れ替えなどを実施するという。

 一連のリストラ策によるコスト削減効果によって、そごう・西武の業績は一時的に改善すると見られる。百貨店業界に詳しい、あるコンサルタントは、「これで成長軌道に乗せられるかというと、疑問符がつく」と話す。

 コンサルタントは続ける。「さらなる構造改革を進めなくてはいけないのではないか。そごう・西武は、『西武池袋店』(東京都豊島区)と『そごう横浜店』(神奈川横浜市)の2店舗、あるいは基幹店舗だけに絞ればいい。そうすればセブン&アイ・ホールディングスの株価はさらに上がるだろう」

「自社運営にこだわりすぎた」

 セブン&アイ・ホールディングスは決算説明会において、残る10店舗のうち、そごう横浜店、西武池袋本店、「そごう千葉店」(千葉県千葉市)の損益・客数状況は良好であることを明らかにした。これは裏を返せば、これ以外の7店舗は、構造改革の余地があるとみることもできる。

 さらに説明会の席上で、都市型店舗(基幹店)ではプロパティマネジメントを導入、郊外店では、プロパティマネジメントを強化していくことを明らかにしている。今後、百貨店は自営面積を減らして、“場所貸し”的な経営に転換せざるを得ないという結論になる。

 「基幹店だけを残して、株価の重石になっていた不採算店を減らせばさらに評価は高まる」と前出のコンサルタントは話すが、今回のようなリストラ策が抜本的な業績改善につながるかは不透明だ。

「拡百貨店」時代も今は昔

 振りかえればそごう・西武は、百貨店の多店舗展開に挑戦した企業だった。旧そごうの歴史は長いが、多店舗化に乗り出したのは日本興行銀行(現みずほ銀行)出身の水島廣雄氏が社長に就任した1962年以降のこと。わずか数店しかなったそごうの店舗展開が加速する。

 「土地を担保にして新店を出しさえすれば商品は後からついてくるんですよ。銀行の評価も高まるのです」

 当時、水島氏がよく語っていたビジネスモデルだ。この“水島流”の錬金術によってそごうは店舗を一気に増やしていく。西武百貨店も、「拡百貨店戦略」を掲げ、百貨店の出店競争に参戦し、店舗網を拡大していった。

 こうした各社の拡大戦略は、「百貨店のカジュアル化」を進めて一時代を築き、百貨店の大衆化に成功した。だが、当時はモータリゼーションの時代。駅に近い物件に出店することが多かった百貨店は駐車場が不十分であった。アパレルメーカーとの二人三脚による売場運営という“ぬるま湯”の状況下、商品や売場の改革も遅れた。大規模な駐車場を備えた郊外型のショッピングセンターに顧客を奪われていったのが、現在まで続く百貨店不振の始まりだ。

 ある小売業の幹部は「百貨店は不動産事業に思い切ってシフトするか、ネットと店舗を融合したモデルに転換するか。この2つの選択肢しか生き残りの方策はないのではないか」と話す。百貨店の存在理由を模索する動きに対する明確な解は、まだ見つかっていない。(次回に続く)