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若い女性の宅配物をのぞき見をするアルバイト店員に、なす術がないコンビニ店長

このシリーズは、部下を育成していると信じ込みながら、結局、潰してしまう上司を具体的な事例をもとに紹介する。いずれも私が信用金庫に勤務していた頃や退職後に籍を置く税理士事務所で見聞きした事例だ。特定できないように一部を加工したことは、あらかじめ断っておきたい。事例の後に「こうすれば解決できた」という教訓も取り上げた。今回は、コンビニエンスストアで起きた、アルバイトの疑惑の行為を紹介したい。

 

Photo by mattjeacock

第21回の舞台:コンビニエンスストア

名古屋市内のコンビニエンスストア(店長以下、アルバイトは35人)

 

他の従業員が目撃するも、本人は覗き見を否定

 「一昨日も、彼はカバンの中を見ているようでした」

 「またか…」

 アルバイトのまとめ役の本田(32歳)が、店長の三笠(46歳)に伝える。数か月前、本田はほかのアルバイトから、よからぬことを聞いた。アルバイトの横田(36歳)が、お客から預かる宅急便の中身を誰もいないときに見ているといったものだった。

 狙われるのは、20∼30代の女性のお客だ。たとえば今回の場合だと、スキーに行くときに、宿泊先のホテルに送るバックを店に持ち込む。横田はレジで受け付けた後、バックオフィスへ運び、レジ付近に戻る。深夜、シフトを組むアルバイトがレジ付近にいて、お客がいないときを見はからい、バックオフィスでカバンの中を見ているようだった。

 もうひとりのアルバイトがバックオフィスに行くと、横田がしゃがみ込んでカバンの中を覗き込み、右手を入れている後ろ姿を見つけた。怖くなり、そのまま店内に戻った。そして、次回の勤務日に本田に、横田のことを伝えた。本田はすかさず、三笠に報告した。

 店長三笠はバックオフィス内の防犯カメラを確認したが、その時間帯には誰も写っていない。カバンすらなかった。本来、宅急便を集めておくべき場所にそのカバンだけがない。通常は、ほとんどないことだった。

 三笠は横田に直接確認したが、「そんなことはしていない」と一点張りだった。

 「バックオフィスでかばんに触ったことすらない」とも話す。三笠は、そこからさらに踏み込むことは避けた。

 だが、疑惑は残ったままだった。そして、数か月後、本田から同じようなことを聞かされた。三笠はどうするべきか、と考えあぐねていた。

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こうすればよかった!解決策

繋がる可能性も 厳しい態度と周知徹底が店の危機管理になる

 目撃者がいるとはいえ、確かな証拠がない中では、及び腰になってしまう店長の気持ちもわからなくはない。今回の事例から私は、次のような教訓を導いた。

こうすればよかった①
真摯に向かい合い、理解を募る

  店長の三笠はどうしたら良いかわからなくなっており、有耶無耶の状態になっている。横田が非を認めないのだから、仕方がない一面はある。確かに疑惑のレベルではあるのだが、複数のアルバイトの証言をもとにすると、信ぴょう性は高いのかもしれない。やはり、あらためて本人に向かい合い、事情を詳細に説明するべきだろう。「同じような疑惑が続く場合、状況いかんでは辞めてもらう場合がある」ことも伝えるべきだ。後々のトラブルを防ぐためにも、現在に至った状況や話し合いの内容を記録しておこう。

 そして、アルバイト全員に、「横田と勤務シフトが同じアルバイトには、当日、疑惑の行為があれば、早急に報告をしてもらうように」周知徹底しよう。また、バックオフィスに宅急便の荷物を置く場所は、防犯カメラから見える場所として、徹底する。こうした店側の姿勢は、本人にも周囲にも必ず伝わる。店長としての「厳しい姿勢」を見せることは大切な教育であり、育成であり、店の危機管理になるのだ。

こうすればよかった②
過去に起きた事件を周知徹底

 今回に近いことは、実は過去に重大な問題になっている。2016年に、コンビニエンスストアで宅配便の荷物を出した女性が、伝票に記載した情報を悪用され、男性店員から恐喝行為を受けたという報道があった。女性は店の運営会社など損害賠償を求め東京地裁に提訴した。

 報道によると、男性店員がスマートフォンで個人情報が記載された伝票を撮影し、女性に電話をかけて現金を脅し取ろうとしたり、肉体関係を求めたりしたという。女性は転居を余儀なくされるなど損害を被ったようだ。男性店員は、恐喝未遂などの罪で懲役6年の判決が既に確定している。

 このようなことは、新聞記事のコピーなどをアルバイトに回覧し、くどいほどに説明すべきだ。バックオフィスの掲示板には常時掲載しておきたい。店長として優柔不断な態度は絶対に避けるべきではないか。

 

神南文弥 (じんなん ぶんや) 
1970年、神奈川県川崎市生まれ。都内の信用金庫で20年近く勤務。支店の副支店長や本部の課長などを歴任。会社員としての将来に見切りをつけ、退職後、都内の税理士事務所に職員として勤務。現在、税理士になるべく猛勉強中。信用金庫在籍中に知り得た様々な会社の人事・労務の問題点を整理し、書籍などにすることを希望している。

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