独自のバーコード決済「セブンペイ(7pay)」が不正利用問題によりわずか3カ月で廃止となったセブン-イレブン・ジャパン(東京都/永松文彦社長:以下、セブン-イレブン)。この問題や天候不順の影響も重なり、2020年2月期上期は既存店売上高、客数ともに大きく減速することとなった。同社はいかに巻き返しを図ろうとしているのか。
7月の既存店売上高は
対前年同月比3.4%減!
セブン-イレブンが20年2月期下期(19年9月~20年2月)の商品政策を発表した。まず上期を振り返ると、同社にとって試練の時だったと言えるだろう。
大きな出来事として7月にスタートした「7pay」の不正利用問題が発生。その後セブン-イレブンの情報管理体制の甘さや、問題発生後の対応にも非難が集まり、消費者からの信頼を失いかねない問題に発展した。
さらにコンビニエンスストアの売上にとってマイナスとなる天候要因も重なった。今年は梅雨の期間が前年より長く、これにより日照時間も例年より少ない冷夏となった。
その結果、セブン-イレブンの業績は大きく失速する(上図)。とくに6月と7月は、減少傾向が続く客数がさらに低迷し、既存店売上高は対前年同月比で98.7%、96.6%と大幅に落ち込んだ。その他の月は何とか前年実績をクリアしているものの、上期トータルの既存店売上高は対前年同期比0.6%減となった。
同社執行役員商品本部長の高橋広隆氏は「大きな危機感を感じる数字。お客さまの足が離れてしまう要因をつくってしまったことを受けとめ、もう一度原点に立ち返り、上を向いて進んでいきたい」と述べている。
「低価格競争に巻き込まれるつもりはない」
ではセブン-イレブンはいかに巻き返しを図ろうとしているのか。下期の環境変化として10月からの消費税率10%への引き上げがある。セブン-イレブンをはじめ大手コンビニエンスストアはキャッシュレス決済での2%のポイント還元施策が始まる一方、ポイント還元のない大手食品スーパーやドラッグストアなどは対抗値下げに出ることが想定され、価格競争が激化すると考えられる。
そうしたなかセブン-イレブンは「価格競争にわれわれの主戦場はないと考える。巻き込まれるつもりは一切ない」(高橋氏)として、質の高い商品を提供し「価値訴求」をこれまで以上に図る方針を打ち出した。
代表的な施策として進めるのは、プライベートブランド(PB)商品「セブンプレミアム」の販売強化だ。なかでも上質な原料・製法にこだわった「セブンプレミアムゴールド」シリーズの商品を拡充する。現在約40品目ある同シリーズの商品を19年度中に50品目ほどまで増やすという。
金シリーズの新商品を続々投入!
直近では10月11日から「金のミルクアイス」(198円:以下、税抜)を発売する。同商品は北海道産の生クリームや牛乳を使用。すでに販売中の「金のワッフルコーンミルクバニラ」の味をベースに、よりミルク感とコクを追求した商品だ。
これ以外にも「金のしっとりバウムクーヘン」(198円)、「金のウインナー」(298円)、「金の豚角煮」(360円)「金のバターロール」(238円)などを続々と投入していく計画だ。
消費税増税で消費者の節約志向が高まることが想定される。そうしたなかで通常より価格の高い同シリーズを強化する理由について高橋氏は「業績が不調だった上期でも同シリーズの売上高は同35%増と伸長しており、ここにお客さまのニーズがある。『質のよいものが値ごろ感のある価格で手に入る』ということを当社ならではの価値として提供していく」と説明する。
新レイアウトの
導入スピードを加速
もう1つの大きな施策として、すでに進めている新レイアウトの導入スピードを加速させる。期初は今期約6000店としていた新規導入店舗を7000店まで増やし、期末までに累計1万400店を新レイアウト店舗とする。導入済みの店舗では、とくに売場を広げた冷凍食品と総菜の売上増が貢献し、平均日販が1万7400円(年間で635万1000円)増加する効果が出ているという(18年12月までに導入した411店の5月度実績平均)。
競合のファミリーマート(東京都/澤田貴司社長)やローソン(東京都/竹増貞信社長)は下期、「家飲み」向け商品の提案や、中・低価格帯商品の拡充など、消費者の節約・低価格志向に対応した施策を打ち出すなか、商品のなかでもプレミアムラインを強化する方針を発表したセブン-イレブン。この戦略は吉と出るのか。
なお、上期の商品政策では、成長戦略の柱の1つに据えていたデジタル戦略について、「7pay」終了後の今後の施策は発表されなかった。
それ以外にも同社は7月、「7pay」開始と同時にセブン&アイ・ホールディングス(東京都/井阪隆一社長)の共通ポイント「nanacoポイント」の還元率を1%から0.5%に引き下げている。これは「7pay」で支払いをすれば実質これまでと同等のポイント還元を受けられるようにして利用移行を促すためのものだったが、サービスが終了した今消費者にとってセブン-イレブンのポイント還元率は単に半減しただけの状況になっている。
商品以外での競争力に不安も残るなかセブン-イレブンは反転攻勢に出ることができるのか、下期の動向に注目だ。